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建都300周年を祝ったサンクトペテルブルク (時事通信「世界週報」2004年5月11-18日合併号より転載) 平成16年4月
在サンクトペテルブルク総領事 村松 昭南 江戸時代にさかのぼる日本との交流 サンクトペテルブルクは、ピョートル大帝がロシアの発展のためには海への出口と「ヨーロッパへの窓」が不可欠と考えて、1703年ネヴァ河口に建設を始めた都市です。造営にはイタリアなどの建築家を招いたので、バロック様式や古典主義様式の宮殿、ローマ・カトリック風のロシア正教会、見事な石材で護岸された運河など、ロシアには珍しいヨーロッパ風の景観を漂わせています。高さの統一された整然とした街並みから空を見上げると、視界を妨げるものは少なく、「サンクトペテルブルクは空が広い」と実感します。 我が国との交流の歴史は、江戸時代、日本人漂流民がこの地を訪れ、日本語を教えた記録が始まりです。中でもエカテリーナ2世に謁見した大黒屋光太夫が有名で、その漂流記「北槎聞略」は、この時代日本人が訪れた唯一のヨーロッパの都市の見聞録といえます。 2005年は日露修好条約150周年に当たりますが、開国を求めて来航したプチャーチン提督の艦隊は、首都サンクトペテルブルクを防衛したフィンランド湾のクロンシュタット軍港から出航しています。明治になると、岩倉具視の遣欧使節団も当地を訪れ、その印象を、「府中の市街は、規正にて恢宏となり、建築の壮大なること、欧陸にて第一なるべし」と記しています(久米邦武編「米欧回覧実記」岩波文庫)。130年前、遣欧使節団が目にした建物、運河、銅像は現在もそのままにあります。1874年、日本公使館が設置され、1918年まで日本大使館がありました。 プーチン大統領の愛する街 人口450万のロシア第二の都市サンクトペテルブルク市は、昨年建都300周年を大々的に祝いました。5月27日の建都記念日を中心に祝賀行事が行われ、ネヴァ河畔での花火大会、「ヒロ・ヤマガタのレーザー・ショー」やネフスキー大通りのカーニバル等は、お祭り好きのペテルブルクっ子を、大いに楽しませたようです。 5月末のプーチン大統領が主催する祝賀式典には、小泉純一郎首相をはじめ40カ国余の首脳が出席しました。サンクトペテルブルク出身でこの街をこよなく愛しているプーチン大統領により、300周年記念行事は国家的な催しになりました。ブッシュ米大統領との会談など、当地を首脳外交の場としてきたプーチン大統領は、ロシア帝国の最盛期に創設された都サンクトペテルブルクを、前進するロシア精紳の象徴として世界に宣伝することによって、強いロシアの再生をアピールし、同時にこの都市に発展の刺激を与えようとしたとみられます。 国家予算からこの3年間で400億ルーブル(約13億ドル)の援助を得て、歴史的建造物等の補修工事が行われ、市中心部の景観が回復されました。郊外にある第二次大戦で破壊されたエカテリーナ宮殿の「琥珀の間」も、1978年に始まった修復がようやく終わり、公開されました。もっとも、エカテリーナ宮殿全体の修復はいまだ道半ばで、依然工事が続いています。歴史的建造物の復興に懸けるこの国の計画は、私たちの想像を超え、息が長いものです。 1000本の桜の苗木と文化行事をお祝いに 各国は建都300周年を祝って、年間を通し文化行事を開催しました。我が国は、1000本の桜の苗木をお祝いとして市に寄贈し、植樹式が昨年4月に行われ、「ロシアにおける日本文化フェスティバル」のオープニング行事となりました。今年3月までの間、サンクトペテルブルク市では歌舞伎、能楽等の50を超える日本の文化、芸術を紹介する催し物があり、多くの市民に歓迎されました。 現在、当地を含めロシアには、すしバーの繁盛や村上春樹、北野武の作品への人気など一種の日本ブームが見られますが、この1年間の行事を通じ、日本文化に対する関心が一層高まったようです。日本語弁論大会の開催など、当地で伝統的に盛んな日本語教育への支援にも、当館は力を入れています。 サンクトペテルブルクへの日本人の関心は、圧倒的に文化、芸術にあるようです。在留邦人数はここ数年150人前後で、ロシア語やバレエ、音楽を学ぶ学生が大半を占め、ビジネス関係者は数人です。300周年行事が広く報道されたためか、昨年の夏以降、市内で見掛ける邦人旅行者の姿が随分多くなったように思われます。 これまで幸いテロ事件や大事故もなく、治安も比較的安定していますが、地下鉄の駅や車内、バスあるいはネフスキー大通り等で、外国人旅行者を狙ったスリやひったくりの被害は多発しています。当館の領事担当は、観光シーズンには、被害を被った旅行者のお世話に駆け回っています。 「モスクワに比べ、サンクトペテルブルクは街のたたずまいが落ち着いて、心も和む」、とは旅行者や市民から異口同音に聞かれる感想です。急速に経済成長を続け、変化の激しいモスクワに比べ、ゆっくりと変わっているのが当地の特徴のようです。プーチン大統領も、そんなサンクトペテルブルクが好きなのかもしれません。 ワンポイント・アドバイス 日本人旅行者の多くの方は、モスクワ経由で当地を訪問されていますが、モスクワで機内預けしたトランクなどから貴重品が盗み取られる被害が頻発しています。お金などの貴重品は機内預けの荷物には入れないようご注意ください。 |
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