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総領事館ほっとライン 第17回 イスタンブール
イスタンブールの「9・11」
(時事通信「世界週報」2004年11月23日号より転載)


平成16年11月
在イスタンブール総領事
吉川 毅男


 2001年9月11日のニューヨーク・世界貿易センターのテロ事件以降、世界情勢はそれ以前とは全く変わってしまったといわれています。大規模なテロ事件に遭遇することがどのように人々の意識、行動を変えるものであるか、残念な経験をしてしまった者として若干の感想を述べたいと思います。

着任直後に大規模テロ事件

 私のイスタンブール着任3日後の03年11月15日に、最初の大規模な同時自爆テロ事件が発生しました。イスタンブールの中心街に近い二つの古いシナゴーグ(ユダヤ教の教会堂)が攻撃対象でした。このテロ事件により20人以上の死亡者、300人余の負傷者が出ました。この事件はトルコ共和国成立以来起こったことのない大規模なテロ事件でしたが、直後にそれを上回るような大きなテロが再び起きるとは、その時点では全く考えも及びませんでした。
 2度目の同時多発テロが起こったのは、最初の事件5日後の11月20日でした。私はその日、シナゴーグ爆破事件に関連して邦人安全確保の申し入れのためにイスタンブール県警本部長を訪問し、同部長から「テロはロンドンでもパリでも、どこでも起こり得るのであり、イスタンブールがこれらの都市と比べて特に危険なことはない。市内の警備体制も強化しているのでそれほど心配することはない」と勇気づけられる発言を聞いて帰る途中、車中で鈍い爆発音を聞きました。
 事務所に戻って知ったのは、新市街で商業の中心地になりつつあるレベント地区にある英国系のHSBC銀行本部と、イスタンブールの銀座通りに相当するイスティクラル通りの端に位置する英国領事館が、15日と同様の小型トラックを使用した同時自爆テロに巻き込まれ、多数の死傷者が出ているとの大変な事態でした。この2度目のテロ事件は1度目を上回る強力な爆薬が使用され、被害もはるかに甚大であるとのことでした。この事件では、英国人、トルコ人を合わせ30人近くが亡くなり、450人以上が負傷しました。

邦人も多い繁華街の事件にヒヤリ

 テロ事件はいずれも市の活動の中心部分である市街地で起こりました。特に、2度目のテロの発生したレベント地区は近代的な新商業地で日本企業の事務所や在留邦人の住まいも多く、また、イスティクラル通りは多くの日本人観光客が買い物等で訪問する最大の繁華街で、在留邦人、日本人旅行者が巻き込まれても不思議ではない地域でした。いずれの事件とも直後に、負傷者が搬入された60以上の病院すべてに館員、職員を派遣し、館の総力を挙げて安否確認を行いましたが、本当に日本人の被害者が一人もなかったのは全くの幸運だったと今でも思っております。
 この連続した自爆テロにより、総計約60人の死者、750人以上の負傷者が出るという大惨事になりました。当然、我々の安全度についての感覚は全く変化してしまいました。イスタンブールは「無差別テロにさらされるもう一つの別の世界に移動してしまった」というのが当時の私の偽らざる気持ちでした。
 こうした混乱した状況の中で、総領事館の最大の関心は、いかにしたら邦人の方々の安全を確保できるかということでした。総領事館としては、緊急連絡網を通じての安否確認、Eメールでの情報提供、県、警察等への警備強化要請の活動などのほか、外務本省、大使館とも協議した結果、より強い注意喚起を行う必要があると判断し、イスタンブールの危険情報を「十分注意してください」から当面「渡航の是非を検討してください」に引き上げることとしました。

各人で安全への意識を高めよう

 事件後1年たった今も爆破されたHSBC銀行ビルは、当時のひどい破壊の爪跡を残したまま無人の高層ビルと化して、自爆テロの威力のすさまじさをまざまざと示しております。
 テロ以降、イスタンブールのすべての一流ホテルや国際会議場は、周辺をブロックで固めるとともに、入口を1カ所に限定し、すべての来訪者の手荷物の検査と金属探知器による検査を行うようになり、市内の警備体制はテロ以前とは様相が一変してしまいました。
 今回の経験を通じて強く感じた点は、少数のテロリストが極秘で敢行するテロを事前に察知し、予防することは治安当局でも実際は困難であるということです。従って、結局、一人ひとりの安全を守るためには各人が自分自身の安全に対する主体的意識を高め、その自覚的な安全意識に基づき危険回避のための慎重な行動をとることが基本だということを改めて確認させられました。総領事館としても、そのための邦人の方々へのきめ細かい情報提供等に努力してゆきたいと考えております。
 なお、テロ後に引き上げられた危険情報については、トルコ治安当局による警備体制強化等を評価し、元の「十分注意してください」に戻っていることを付け加えておきたいと思います。

イスタンブール旅行者へのワンポイント・アドバイス

  • かばんには鍵を掛ける、リュックは体の前に持ってくる等の引ったくり、スリ対策を講じてください。
  • 睡眠薬強盗が頻発しています。被害に遭わないためには、見知らぬ人から飲食物を勧められても毅然とした態度で断る勇気が必要です。
  • ニセ警官による詐欺、悪質なキャッチバー、じゅうたん詐欺などの被害が増えています。見知らぬ人に声を掛けられたら決して警戒を怠らず、安易に荷物を見せたり触らせたりしないこと、毅然とした態度で断ることが肝要です。


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