![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() | ||||||||||
|
トップページ > 報道・広報 > 新聞・雑誌等への寄稿・投稿 |
![]() |
欧州最大級、ライン河畔のリトル・トーキョー (時事通信「世界週報」2004年4月13日号より転載) 平成16年4月
在デュッセルドルフ総領事 神余 隆博 デュッセルドルフはライン河畔にあるノルトラインウェストファーレン(NRW)州の州都である。NRW州は人口、経済規模共にドイツ最大で、GDP(域内総生産)はオランダと同規模である。ルール工業地帯の書机と呼ばれるこの地に日本のビジネスマンが移ってきたのは、今から50年ほど前の1952年頃。それ以降、半世紀の間にデュッセルドルフは7000人の日本人(州全体では1万1000人)が住む欧州大陸最大のビジネスコミュニティーとなった。駅前のイマーマン通りには日本企業の建物や日本レストラン、スーパーマーケット、本屋、旅行代理店などがひしめき合い、ライン川を挟んだ対岸には大規模な日本人学校やお寺まである。これほど街の風景に日本が溶け込んでいる都市はヨーロッパでも珍しい。 ビジネスだけでなく草の根交流も盛ん 当州にある470の日本企業は、約2万人を雇用し、州や市の税収に大きく貢献している。日本人は礼儀正しいと地元から歓迎されていて、州・市政府は日本人のために新年会や各種の行事を催し、心配りが行き届いている。ビジネスや生活面での諸問題を話し合うため、日本人3団体(日本商工会議所、日本クラブ、日本人学校)と当館の4者と州・市政府との定期会合が開催されているほか、ここ数年恒例行事となった「日本デー」の準備もこの日本側4者と州・市政府との間で行われる。 毎年5月頃に催される日本デーは、近隣の町はもとよりオランダやベルギーなどからも大勢の人が繰り出してくる圧巻の行事である。地元の有力紙も特集を組んで大々的に報道してくれる。最大のハイライトは日本の花火師によるライン河畔の花火で、100万人の人出でにぎわい夜中まで花火を堪能、拍手大喝采でこの日ほど日本人に生まれた幸せを実感することはない。しかし、日本デーの本当の意義は1年かけて行われる日本社会と州、市側との綿密な共同準備作業であり、当日の日独の両市民が一体となった「草の根の交流」である。ビジネスを超えた交流が街中に展開され、地元との融和を醸し出している。日本側の事務局を務める総領事館は州・市政府や警察との打ち合わせ、行事の調整など裏方に徹しており、主役はここに住む日本人全員である。 日本企業のための環境改善モデル整う 日本はデフレ、ドイツは経済の停滞で苦労を共にしている。それでも当州の日本企業の数は470と欧州随一である。今年5月の欧州連合(EU)拡大が実現すれば4億5000万人の巨大な欧州市場が出現することへの期待から、当地への新たな日系企業の進出も見られる。欧州の他地域から当地への移転を真剣に考えている企業もあると聞く。しかし、最終的には税金やコスト、雇用、マーケット等の産業立地条件が企業進出の決め手になる。 当館の重要な任務は日本企業のためのビジネス環境や生活面での待遇の改善を実現することである。そのため、2001年に当館と当地の日本商工会議所が協力して在留邦人にアンケートを行い、州政府とデュッセルドルフ市に要望書を提出した。その後協議を重ねた結果、滞在許可、労働許可、運転免許等8項目に関し、他の地域に比較して格段に有利な環境が整うことになった。これが「デュッセルドルフ・モデル」と呼ばれるものであり、現在これを州内の他地域に拡大すべく努力している。 当面最重要の問題は治安である。当地は元来治安は良いが、軽微な犯罪が増加しており、加えて反捕鯨や動物愛護団体による嫌がらせなども増えている。また、テロへの備えも含め、警察長官と総領事および在留邦人の代表による治安問題に関する定期会合の場を新たに設定するなどして「いつでも、どこでも安全対策」の実行に努めている。 日独関係推進の基地として 05年から06年にかけて日独関係が一層強化されるチャンスが訪れる。「日本におけるドイツ年」と愛知万博、そしてサッカー・ワールドカップのドイツ開催である。NRW州は他州に先駆けて250万ユーロ(約3億3000万円)の予算を用意しドイツ年に独自に参加する予定である。また3年に1回、デュッセルドルフの市長が東京と大阪を訪問し、「デュッセルドルフの夕べ」を開催する慣わしがあり、今年その番が巡ってくる。アルトビールを片手に1000人の当地在勤経験ビジネスマンが関東と関西で集う姿は壮観である。 中国熱が高まっているのは当地でも例外ではない。我々は日本と当地の50年にわたる交流の歴史にあぐらをかいてはならないだろう。チャンスは生かし、ドイツ人の対日関心を経済と科学技術そして伝統および若者文化の面にまで引き付けていく上で当館の責任と日本人社会が果たす役割は極めて大きいと言わざるを得ない。 ワンポイント・アドバイス 当地は治安が良いと思われがちですが、犯罪発生率は東京の約5倍となっています。空港、駅、路上などでの盗難被害が多く、貴重品、手荷物には日本にいる時の5倍の注意を払い、「すき」を見せないことが大切です。 |
BACK / 目次 |
| ||||||||||
![]() |