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(朝日新聞「私の視点」2004年4月6日付より転載)
国益にかなう協力は当然
外務報道官 高島肇久


     日本の自衛隊と米軍の間で物やサービスのやりとりをするときの決済手続きを定めた協定がある。「ACSA」と呼ばれていて、その改正協定が今の国会に提出され、国民の関心を集めている。3月10日付の朝日新聞社説「米新戦略とどこまで」でも取り上げられた。その社説を含め、一部では、この改正協定によって自衛隊と米軍は世界のどこでも物やサービスを提供し合えるようになり、日本が米国の戦略にどこまでも協力していく結果になるのではないか、といった懸念があるように思われる。そこで、今回の改正協定の意義について知っていただきたくペンを執った。

     実はACSAは前述したとおり、決済のための手続きを定めた協定で、米軍に対して物やサービスを提供する権限を自衛隊に与えるものではない。自衛隊が米軍に提供できる物やサービスの内容は、国会で決められた個別の法律の規定の範囲内にとどまることになっていて、米国の意向でACSAの適用の態様が決まるわけではない。つまり、この協定が改正されたからといって、米国が世界のどこでも、いつでも自衛隊から物やサービスの提供を受けられるようになるわけではないのだ。

     それでは何が変わるのか。今回の改正協定には、我が国有事にACSAの決済手続きを適用するという条文のほか、「国際の平和と安全への寄与、大規模災害への対処などの活動に際してACSAによる決済手続きを適用できる」という趣旨の条文があり、これによって自衛隊が今までより広い範囲で、ACSAの決済手続きを活用して米軍から支援を受けることができるようになる。

     たとえば、日本で大地震が発生し、救援活動を自衛隊が行っているとき、在日米軍から、ACSAの決済手続きを活用して緊急物資の提供を受けることができる。日米以外の第三国でテロが発生して自衛隊が在留邦人の緊急避難のために出動し、燃料や物資が足りなくなったようなときには、現地にいる米軍から、ACSAの決済手続きを活用して融通してもらうことが可能になる。

     また、いまイラクで人道復興支援にあたっている自衛隊が困ったときには、イラクにいる米軍から食料、燃料、医療サービスなど必要な支援を受け、のちほどACSAの取り決めに従って、その費用を米側に支払うことができるようになる。

     米軍は去年の北海道地震に伴う苫小牧の製油所の火災の際、泡消火剤を地方公共団体に提供してくれるなど、これまでにも様々な局面で物やサービスを日本側に提供してくれているが、このACSA改正協定はそうした日米間の助け合いを、特に自衛隊について、より広く行えるようにしようというものなのだ。

     米国は日本の唯一の同盟国であり、必要な場合、自衛隊と米軍が物やサービスを提供し合い、のちほどその対価を決済するということは至極当然のことではなかろうか。

     いずれにしても日本が、どこで、どのような場合にこの協定が適用される対米協力を行い得るかは、今回のACSA改正が決めるのではなく、日本(具体的には国会)が我が国の国益を考えて、別途主体的に決めることである。その意味でもACSAは我が国の国益にかなう協力にしか適用されない仕組みになっていると言えるだろう。




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