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日系人「デカセギ」急増で尽きぬ心配の種 (時事通信「世界週報」2003年7月4日号より転載) 平成15年7月
在サンパウロ総領事 赤阪清隆 5年後には移民100周年 ブラジルというと、日本では、サッカー、サンバ、コーヒー、アマゾンなどと並んで、日系人が多いということはよく知られています。それでも140万人もの日系人がいて、そのうち100万人がサンパウロに住んでいると言うと、たいがいの人はその規模に驚きます。「それじゃ、総領事は大変でしょう」と言われますが、この世界最大の日系社会には、古き良き日本の伝統と価値観が生きていて、まるで一昔前の懐かしい日本に戻ったような雰囲気があります。 最初の日本人移民781人が、「笠戸丸」でサントス港に着いたのが1908年6月18日。コーヒー畑から始まる苦労話は、石川達三の「蒼氓」や、ブラジル映画「ガイジン」で知られています。野菜や果物の栽培でブラジルの食卓を豊かにしたのは日系人だと言われていますが、今やブラジルの政界、法曹界、学界、ビジネス、芸術などの多様な分野で日系人が活躍しています。今、華麗なヌード写真がブラジル中で評判になっているサブリナ嬢も、日系3世です。1世の方の高齢化が進んでおり、日本政府は病院や障害者のための施設整備などに財政的援助を行っています。世代を経るにつれてブラジル社会への同化が急速に進んでいますが、あと5年で移民100周年を迎えますので、どのような行事でこれを祝うかが、目下日系社会最大の課題です。 1990年の我が国の出入国管理法改正で、日系3世までが特別のビザで日本に入国できるようになってからは、高給を求めての出稼ぎ者がぐんと増え、現在では約30万人ものブラジル日系人が浜松市や豊田市など日本各地で働いています。「デカセギ」は既にブラジル語になりました。我が総領事館でのビザ発行数は、月に2000から3000件に及びますが、出稼ぎ者が悪質なブローカーにだまされたりしないか、子供の教育は大丈夫かなど、総領事館としても心配の種は尽きません。また、職員が苦労するのは、ビザ申請の際に偽造の出生証明書や婚姻証明書を出して、日系人に成り済まそうとする人が結構いることです。この間あったケースは、日系人と結婚している事実を証明するために出された電気・水道代の領収書が、真っ赤な偽物だったこと。水を落とすと領収書の文字がかすんだために、偽造だと見破ったのは、当館のベテランの職員でした。 「総領事館の者ですが、日本に出稼ぎ中のお宅の息子さんが交通事故に遭い、病院に入院中です。すぐ手術の必要があり、3000レアル(約12万円)必要です。総領事館で送金のお手伝いをしますので、すぐ現金を持って来てください」と、出稼ぎ者の家族に電話をかけ、総領事館の受付待合室でまんまと詐欺を働くという事件も最近発生しました。巧妙な手口の犯罪に、日系新聞などを通じて注意を呼び掛けていたところ、そのかいあってか、つい最近の同様の詐欺未遂事件では犯人が捕まって、ほっとしました。 治安対策に日本式「交番ボックス」 ブラジルは気候穏やかで、食事はおいしく、人種偏見も無くて心温かい人たちにあふれていますが、玉にキズなのが治安の悪さです。サンパウロ州の人口10万人当たりの殺人数は、日本の33倍、強盗はなんと150倍にも及びます。身代金目当ての誘拐事件は、昨年356件もありました。どうすれば在留邦人の方々が危険な目に遭わないで済むかというのが、当館の一番の心配事です。少しでも役に立てるようにと、「安全対策便り」を発行したり、ブラジルの警察の責任者を招いての講演会を頻繁に開催しています。我が総領事館から警察への働き掛けで、日本の交番制度の良さを分かってもらった結果、サンパウロの目抜き通りに「交番ボックス」が作られて、好評を博しています。 サンパウロには多数の日本企業が進出しており、日本商工会議所には160社の進出企業が加盟しています。最近では、トヨタのカローラ生産4倍増、ホンダの「フィット」の生産開始、川崎重工による飛行機主翼生産工場の新設などが、当地の話題を呼びました。ブラジルは、世界一のサトウキビの生産国で、それから作られるエタノール・アルコールが環境に優しい持続可能なエネルギーとして、日本企業からも熱い視線が注がれています。また、日本とブラジルとの間で自由貿易協定を結ぶ可能性にも関心が寄せられています。総領事館では、サンパウロ大学教授による経済セミナーを定期的に開催するなど、日本企業の活動を後押ししています。 日系社会が大きいだけに、当地には、日本語の日刊新聞が2紙、ポルトガル語の日系週刊新聞が1紙、それに日系ラジオ局などが活躍しており、当館が行う領事サービスや、経済協力、文化活動などを連日詳しく伝えてくれます。最近の当館のヒット作は、この日系新聞2紙に連載した、戸籍関係などの届け出の必要性を分かりやすく紹介するための4コマ漫画です。今後ともマスメディアの協力も得て、「開かれた、役に立つ総領事館」をモットーとする当館の領事サービスの向上を図っていきたいと思っています。 ワンポイント・アドバイス (1)ブラジル料理といえば、日本にも進出している「シュラスコ」。十数種類もの肉が次々と出てくるバーベキュー料理です。テーブルに出される順に食べていくと途中でダウン。食べたい肉が来るのを待って食べるのがコツです。和食が食べたくなったら東洋人街リベルダージヘ。(2)治安が悪いといっても、犯罪の大半は金銭目当て。腕時計は安物に、財布の中身は100レアル程度にしておけば被害は最小限にできます。サングラスをかけて、きょろきょろ周りを見ながら歩くこと。犯罪者は、注意深い人は避ける由。 |
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