外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 報道・広報 新聞・雑誌等への寄稿・投稿


意見投稿


総領事館ほっとライン 第4回 香港
SARS危機から得た教訓
(時事通信「世界週報」2003年9月16日号より転載)


平成15年9月
在香港総領事
横田 淳


日本人患者を出さないために

 私の手帳には、3月15日の欄に「ミステリアスな肺炎の流行」という書き込みがあります。香港のすぐ隣の広東省で肺炎が流行しているというニュースはそのしばらく前からありましたが、いよいよ香港でも新型肺炎(SARS)の流行が始まったと認識されるようになったのはその頃でした。その後、6月23日に世界保健機関(WHO)の感染地域リストから削除されるまでの約3カ月間、これまで暴動や経済危機などの荒波にもまれてきた香港といえども、未曾有の危機を経験しました。振り返ってみるに、香港の人たちはおおむねパニックも起こさず冷静に対処したと思いますし、特に医療関係者は、何人もの尊い犠牲を出しながらも治療拒否や集団辞職などの騒動も無く、立派に務めを果たしたと思います。
 総領事館としては、日本人の感染者を出さないことを第一に、可能なあらゆる努力をしました。日本においては、外務省よりいわゆる「渡航情報」を出して、不要不急の香港訪問はできるだけ延期していただくようお願いしました。また、総領事館としては香港に残っておられる方々を主たる対象として、本省から派遣された医務官による説明会や電話相談などの実施、ホームページによる患者数の推移や予防方法、万が一罹患(りかん)した場合の連絡先などについての情報提供を行いました。SARSの期間中はホームページの閲覧件数が大幅に増え(直前の月間約21万件が約77万件に)、総領事館と在留邦人コミュニティーの間の情報伝達手段としてのインターネットの重要性を痛感した次第です。
 SARSの流行で香港人がマスクをつけて街を歩いている写真をご覧になったことがあると思います。実は、香港人は日本人がよくマスクをするのを面白がって見ていたのですが、SARS流行期には納得して、大部分の人がマスクをするようになりました。マスクの買い占めも起きましたし、贈答品に使われたり、ファッション性のあるものが流行したり、果てはマスクのせいで化粧品の売り上げが落ちたりなど、話題には事欠かない状態でした。また、マスクの気密性が高いほど安全性が高いとは必ずしも言えない(息苦しくなるので頻繁に着脱を繰り返すことになり、かえって危険)など、いろいろと勉強になりました。
 幸い日本人のSARS患者は発生しなかったわけですが、多くの香港の友人は、何といっても日本人は清潔好きだからだと賞賛していました。もっとも、納豆を食べるからだという説もまことしやかに流布されました。
 香港政府はテレビで注意事項を頻繁に宣伝しましたが、中には、SARSウイルスが至近距離での飛沫(ひまつ)伝染や接触による伝染で感染することから、握手をするのをやめようというのまでありました。このため当地では手を出したり引っ込めたりひとしきり混乱がありました。今では香港の街中の至る所に手を消毒するジェルのディスペンサーが取り付けられており、手の清潔度を維持するのは非常に簡単になりました。香港政府は、香港人の衛生観念を恒久的に高めようと、SARS終息後、政府一丸となった施策を実施しています。

予約拒否が相次ぎ香港政府から苦情も

 香港では5月上旬には1日当たりの新規SARS患者の数も1ケタまで下がり、事態はだいぶ落ち着きましたが、その頃日本との関係で総領事館としてはまた頭の痛い問題が起きてきました。というのも、日本ではその頃、台湾人医師が日本国内でSARSを発症したことを契機に、SARSに対する関心が急激に高まり、多くのホテルが香港からの旅行者というだけで宿泊を断ったり、日本で開催される見本市で香港からの出展を断ったりといった事例が出てきたためです。香港政府からの苦情を受け、問題解決に努力はしましたが、はかばかしい成果はなく、若干後味の悪い結末となりました。全体としては、香港におけるSARS終息宣言が意外と早かったこともあり、問題の規模が大きく膨れ上がる前に問題が消滅しました。しかしSARSは、風評被害の予防、個人のプライバシーの保護と感染予防の必要性とのバランス、政府が情報提供をして人々が行き過ぎた行動をしないようにする必要性、患者数などに関する透明度の高い情報提供の必要性などについて、考えさせる点を多々提供しました。
 SARSを通じて心温まる話もたくさんありました。当地日本人商工会議所の調査によると、日系企業などによる寄付が現金や機材供与を合わせて約1億円になりました。また、日本人の婦人方約100人が1万3000羽の千羽鶴を折り、医療関係者や大量の患者が発生したアモイガーデンの住民に寄贈したことは、当地の新聞・テレビで多数取り上げられました。このような交流が今後の関係の一層の緊密化に貢献してくれることとなればと期待しています。

ワンポイント・アドバイス

 外国を旅行する際に頭を悩ませるのが現地通貨の扱い。香港では、小銭ばかり貯まることが少なくなるので便利な「オクトパス・カード(八達通)」が発達しています。地下鉄の「客務中心」と書かれた窓口で150香港ドル。これを読み取り機にかざすだけで地下鉄など鉄道、ミニバスなどバス、果てはコンビニ、自動販売機、マクドナルドまでOK(タクシーは運転手の反対でまだ)。50ドルはデポジットで、未使用分と共に払い戻されます。お忘れなく。


BACK / 目次




外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省