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2001年1月27日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙
への大臣投稿記事仮訳
「日本は多角的貿易のために努力している」外務大臣 河野洋平
発足以来50年以上になるが、当初ガット(関税及び貿易に関する一般協定)、次いでWTO(世界貿易機関)によって体現された多角的貿易システムは、大国小国を問わず各国国民に、空前の経済成長と富をもたらした。しかし、このシステムは現在、多くの課題に直面している。シアトル会議の記憶はまだ鮮明に残っているが、WTO加盟国は現在も新ラウンド貿易交渉を開始する道筋を模索している。地域貿易協定は急増し、経済界の関心を世界規模での自由化や貿易ルール作成からそらしている。WTOの正統性について、環境保護といった視点から疑問が提起されつつあり、開発途上国の関心への対応も重要な課題となっている。
多角的貿易体制は、世界貿易において中心的役割を果たし続けるために、こうした課題に取り組む必要がある。まさにこうした理由故に、日本は、他の諸国と共に、2001年中に新ラウンドを開始すべく、WTO加盟国間の非公式協議開催のイニシアティブをとるなど、懸命に努力している。
その一方で、多国間貿易交渉における日本の立場について、次のような批判的な見解が根強く見られる。(1)日本が「包括的な」ラウンドを要求しているのは、いつもの引き延ばし策である。即ち、実現不可能なことを求めているだけであり、市場開放へ向かって前進する気がない。(2)日本は、速やかに二国間自由貿易協定へ政策を転換したように、すでに多角的貿易体制に見切りをつけている。(3)特に日本が農産物市場の開放に同意しないことを見れば、貿易交渉における日本の主張を真面目に受け止めることはできない。
こうした不正確な見方に反論することは、幅広い新ラウンド交渉の早期立ち上げに向けて努力することが、なぜ重要かを説明する一助となろう。
第一に、日本は多角的貿易システムに完全にコミットしており、新ラウンドが、WTO加盟国及び社会の幅広いセクターの広範な関心に応え、市場アクセスと貿易ルールの作成の両方をカバーしなければならないと確信している。そのようなアプローチを通じてのみ、我々は、交渉において全て加盟国の積極的な貢献を確保することができるのである。
また、そのような新ラウンドによって、WTOは、皆が信頼できる貿易ルールを形成することができ、変化しつつある世界貿易の環境に対応することができるだろう。投資、電子商取引及びダンピング防止措置に関するより良いルールの探求は、この点に関連するものである。十分に広範なラウンド交渉開始を求めることが、不可能なものを求めるに過ぎないという主張は誤りである。
第二に、日本が最近シンガポールと経済連携協定の交渉を開始したことは、いかなる意味においても、日本が多角的貿易体制を見限ったということを意味するものではない。その逆に、上述したように、日本はWTO強化のために懸命に努力している。
地域貿易協定は、WTO協定に整合的である限り、多国間の努力を補完するものとして、市場自由化や経済構造改革にとって有用な手段となるものである。シンガポールとの経済連携協定は、そのようなものになることが期待されている。第三に、農業についてであるが、事実関係を正すためにいうと、日本はウルグアイ・ラウンド交渉での合意を誠実に実行しており、世界最大の食糧輸入国である。
同時に、日本はすべての先進工業国の中で、食糧自給率の最も低い国である。そのような事実を背景として、日本は、WTO農業交渉が、非貿易的関心事項を十分に考慮し、WTO加盟各国の農業が共存できるようにしなければならないと確信している。WTOシステムが中心的役割を果たし続け、将来の世代が、21世紀の始まりを世界貿易の歴史における転換点として評価するように、ともに努力しようではないか。
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