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演説

国連の場における演説

「尊厳を持って生きる自由」(クラスター3)に関する総会審議における
大島国連大使ステートメント(仮訳)

平成17年4月19日
英語版はこちら

議長、
 事務総長報告において、クラスター3の論点-法の支配、人権、民主主義-が、開発、平和と安全に並んで国連の主要活動の一つとして、それに値する重要性を持って取り扱われており、我々はこの点が強調されていることに賛同します。過去数年に亘り、多くの成果が達成され、その功績は然るべく評価されるべきである一方、現在の国連システムは、例えば世界の人権侵害に対応するにあたって大きな課題に直面しています。我が国は、国連の活性化と改革に向けた協調的な努力の一環として、クラスター3で取り扱われている問題について確実且つ積極的な成果を9月の首脳会合において得ることを支持します。その目的のために、我が国は議長、ファシリテーター及び加盟国とともに作業する努力を惜しみません。

 まず、尊厳を持って生きる自由を検討するにあたっての「人間の安全保障」の概念の重要性を強調した上で、法の支配、人権そして民主主義について簡単に議論したいと思います。

 まず、「人間の安全保障」について述べます。開発、平和と安全は密接に関連しており、人間の尊厳の尊重抜きにはいずれも達成されないという事務総長の指摘に我々は全く同意します。国家が自国民を保護する権利と手段を独占していた過去の時代とは異なり、グローバル化したより複雑な現在の世界では、個々の男女の人間の安全保障という側面と、尊厳を持って生きる自由についてより高い関心を払うという新たなアプローチが必要とされています。つまり、個人レベルでの安全が確保された状況において福祉、尊厳と自己尊重を達成することは、人間開発の最終目標であるといえるのです。この考えは、2003年に人間の安全保障委員会が事務総長に提出した報告書の中でも明確に述べられています:

「人間の安全保障」は、国家の安全保障の考え方を補い、人権の幅を広げるとともに人間開発を促進するものである。そして、多様な脅威から個人や社会を守るだけでなく、人々が自らのために立ち上がれるよう、その能力を強化することをめざす。(中略)そうすることによって、安全保障や人権、開発などそれぞれの分野の中で、人間にとってより本質的な側面を結びつけていくことができる。

 このような理解の下、「人間の安全保障」の考え方は、ハイレベル・パネル報告の中でも、重要な考え方として言及されています。事務総長報告ではこの重要な考え方について具体的な言及はありませんでしたが、9月サミットの成果文書において「人間の安全保障」が然るべき位置付けを与えられることを我々は提案します。

 事実、国連憲章はその前文において、我ら人民は「基本的人権と人間の尊厳及び価値とに関する信念をあらためて確認する」と述べています。これは、「人間の安全保障」の考え方そのものです。

 他方、加盟国の関心は「保護する責任」の考え方に向けられています。我々は、この考え方を受入れる一方で、まず何よりも、通常の、非軍事的且つ予防的手段を通じて、問題に根源から取り組み、それによってそれらの問題が武力を用いた介入を誘引するような完全な戦争行為にエスカレートする可能性を減らすことの重要性をあらためて強調したいと思います。

 この関連において、人道支援について一点付け加えたいと思います。国連の主要な活動の一つ、そして、国際社会が高く評価していることの一つが人道救済と支援です。我々は、複雑な非常事態及び自然災害から生じている悲惨な人道状況が、日に日に驚くべき速さで増加している事実を目撃しています。このことは、国際社会がより寛容で早い対応をすることの必要性を明らかに示しています。この点はクラスター4で議論されることではありますが、国連が主要な活動を効果的に達成できるようにするために、国連の人道対応システムを強化する必要があるとの事務総長の呼びかけを支持します。

議長、
 法の支配に関する議論の一つとして不処罰に終止符を打つことがあり、これは重要な目標として広く議論されています。尊厳を持って生きる自由は不処罰の文化との闘いによって強化されるという考えを完全に共有します。過去数ヶ月の間に、スーダンのダルフール地域を含む多くの紛争状況における人類の悲劇と説明責任について、多くの報告・議論がなされてきました。カンボジアのクメール・ルージュは、人道に対する犯罪について責任のある者を裁判に付すために我々が努力をしているもう一つの重要な事例です。このプロセスへのカンボジア国民のオーナーシップを尊重し、これを確保するようなやり方で、我が国はクメール・ルージュ裁判の実現に向けて国連事務局及び関心国と緊密に連携してきました。クメール・ルージュ裁判は現在準備の最終段階にあり、最近開催されたプレッジング会合で表明された加盟各国の強いコミットメントを踏まえれば、直ちに特別法廷設立のプロセスを開始することが重要です。

 文民保護に関連する31本の条約に焦点をあてた重要な条約イベントの開催に関する事務総長のイニシアチブを高く評価します。現在我が国の国会では、これらの条約のうち国際組織犯罪条約の人身取引防止議定書及び密入国防止議定書について議論が行われています。

 弱者の保護と支援との観点からは、その増加する数と実際的且つ法的側面から生じる困難を背景に、国内避難民の窮状についてより高い関心が集まっています。事務総長は、フランシス・デン国内避難民に関する事務総長代表によって作成された「国内避難民に関する規準原則」を基本的な国際規範として認め、国内法を通じてこの原則を受容するよう要請しています。この点はクラスター4に関するものではありますが、国内避難民問題は本日の議論と密接に関連しています。国内避難民問題は、事務総長が指摘したように「異なる人道機関の間の裂け目に抜け落ちる」ものなので、事務総長による勧告に沿って、何千万人もの国内避難民の運命を向上するための適切な行動が来る首脳会合において承認されることを支持します。

 我が国は、国際司法裁判所の活動を強化する必要性について事務総長に同意します。国際紛争の解決において国際司法裁判所が果たす役割は大変重要であり、絶えず変化し続ける今日の世界が直面する新たな状況に対応しうる国際司法システムの柱として機能するように、同裁判所の機能が強化されなければなりません。

議長、
 我々は、事務総長が人権の重要性を強調したことを歓迎し、国連人権機関の改革に向けた事務総長の努力を支持します。確かに規則と規範は重要であり、二つの人権規約とその他関連する国連条約は人権を促進する上での指針として機能し続けています。しかしながら、これらの規範は実施されなければならず、したがって我々は合意規範を現実に移すことに重点を置かなければなりません。

 人権高等弁務官事務所が各国の能力向上に対する技術支援等を通じて、人権状況の向上に果たす役割には大きいものがあります。わが国は人権高等弁務官事務所の強化を支持し、現在同事務所が策定中の行動計画に大きな期待を持っています。また、安保理やわが国が設立を支持している平和構築委員会において、人権にも十分な考慮が払われるよう、人権高等弁務官がこれらの機関でより積極的な役割を果たすことを支持します。

 なお、しばしば条約体への報告は加盟国に対して多大な作業を課す場合があり、本来ならば規範の実施に向けられるはずの時間と資源が奪われています。我々は、各条約体に対する報告のガイドラインを調和することに加え、より効果的・効率的にレビュー機能を果たすことを目的に条約体改革を進めることを支持します。

 人権状況改善に向けた我々の能力を強化する努力の一環として、人権理事会の設立を原則として支持します。現在、我が国は事務総長のノン・ペーパーにより提示された詳細について慎重に検討しているところであり、人権理事会が総会の下部機関として位置付けられるのか或いは国連の主要機関とされるのかとの点を含め、更なる議論を行うことを期待しています。

議長、
 民主主義を推進することは、国連のもう一つの重要な役割であり、特に民主主義へ移行過程にある国々をよりよく支援するための国連の能力は強化されなければなりません。その目的のために、民主主義基金の創設は支持に値すると思われます。同時に、国連開発計画(UNDP)や国連政務局を含む民主主義の促進に関連する活動を行っている多くの国連機関の間で緊密な調整がなされなければなりません。また、拠出金が効率的且つ効果的に使用されるように、これから設立される基金の具体的な内容についてもさらなる議論が必要です。

議長、
 クラスター3の勧告に関する審議においては、詳細にとらわれるあまり原則を忘れてはならないと考えます。人権理事会のように、まずは重要な原則に合意してから、合理的な時間的枠組みの中で詳細について議論することができるケースもあります。他のクラスターとともにクラスター3において確実な成果を挙げるために、国連改革という歴史的な機会を最大限活用しなければならないと考えます。わが国もそのために積極的に貢献していきます。

 ありがとうございました。



・ 国際連合日本政府代表部


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