国連の場における演説
北岡伸一国連日本政府代表部大使による演説(仮訳)
第43回社会開発委員会
議題3(a) 社会開発サミットと第24回社会開発特別総会のレビュー
議長、
はじめに、議長と他のビューローメンバーに対し、社会開発サミット10年目のレビューをリードする重要な役割を担うことに祝意を表し、我々代表団の会合を通じての協力をお約束します。
議長、
コペンハーゲンサミットから10年目の今、多くの分野で重要な進展があり、人間中心のアプローチが政策立案の様々なレベルで定着したことには勇気づけられるものがあります。同時に、事務総長報告に書かれているとおり、同サミットでのすべてのコミットメントを達成するにはまだ道のりは遠いことも認めなければなりません。
議長、
我が国の開発協力政策は、開発の取り組みには包括的なアプローチが必要であるという考えに基づいています。日本政府は、2005年2月に新ODA中期政策を発表し、その中でも、我が国が途上国のMDG達成に積極的に協力する旨を述べています。中期政策には、貧困削減、持続的成長、地球規模問題への取り組み及び平和構築という4つの優先事項があり、また我が国のODAの最も重要な目標として、人間の安全保障を強調しています。我が国が、人々特に社会における最も脆弱な人々をエンパワーし、地域的不均衡や経済社会的不平等に配慮しているのは、この人間の安全保障の観点からです。このように、人間中心のアプローチは、我々の開発政策に取り入れられており、我々はその実施にコミットしています。
議長
ここで、コペンハーゲンサミットにおける3つの主要事項についての我が国自身のレビュー及び評価を紹介したいと思います。
貧困削減に関しては、我々は、この10年の成果は、様々な要素が混ざった、一様でないものであったことに十分留意しています。事務総長報告が指摘したとおり、アジア、特に東アジアは、めざましい経済成長を達成と貧困の削減に成功しました。我が国は、我が国自身による東アジアへの協力の経験に基づき、貧困削減は、インフラ及びキャパシティ・ビルディングを含めた人的資源の開発と人々のエンパワーへの支援を通じた持続的な経済成長を実現することによって達成されると確信しています。我が国は、東アジアの発展は、アフリカにも実用的な参考に資すると考えており、TICADプロセスを通じたアジア・アフリカ協力を積極的に促進し続けています。
雇用については、我が国は不況により困難な状況を経験しました。日本の失業率は、2003年1月に5.5%と最悪を記録しました。その後状況は幾分改善し、2004年12月現在で4.4%になりましたが、さらなる努力が必要です。コペンハーゲンサミット後の10年での、このような困難を克服するための闘いを通じ、我々は、個人が自身の生活と尊厳を保つために、また社会が品位を持ちかつ繁栄するために、雇用が大変重要であることをより明確に認識しました。この結果、我々は、今、若者と高齢者の雇用の促進を重視しています。国内の状況の克服に腐心しつつ、我が国は、この分野での国際協力、特に女性や社会の脆弱なメンバーへの支援に特に留意しつつ職業訓練協力等を行っています。
社会統合に関しては、我が国は、高齢者、障害者のための適切な措置を講じることや、子育ての支援、各レベルにおける人権教育の促進において着実な努力を行ってきました。
急速に進む高齢化社会の問題については、我が国は、年金や介護保険制度を含め、社会経済システムの見直しを加速化しています。この問題に関しては、若者と高齢者の間に考え方のギャップがあり、すべての人が満足する方法で進めることは難しいと実感していますが、日本政府は、国民の安心と将来の福祉の確保のため努力を強化しています。
障害者の問題に関しては、我が国の障害者基本法が昨年改正され、差別禁止についての条項や、政策立案における参加の拡大の条項が含まれました。また、公営・私営双方を含む、交通やビルへのアクセス等、物理的な環境におけるアクセシビリティの問題に関しても、完全なバリアフリー社会にはまだ道のりは遠いものの、一定の進展があります。我が国はこの分野でも、人間の安全保障と公正の確保の観点から国際協力を強化しており、また、障害者権利条約アドホック委員会においても積極的に貢献しています。
議長、
最後に、我が代表団は、この会合で行うレビューが、すべての人ひとりひとりが、健康で活動的な人生を送ることができる世界を創ることに貢献することを切に希望しており、そしてそれが社会開発の目標であると考えております。
ありがとうございました。
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