外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 報道・広報 演説
演説

国連の場における演説

大島国連代表部大使ステートメント(仮訳)
ミレニアム・プロジェクト報告書:総会非公式意見交換

平成17年2月10日

(英語版はこちら)


議長、

 我々にとって大きな関心事項である「ミレニアム・プロジェクト報告書」に関する非公式会合を貴議長が開催されたことに感謝申し上げます。日本は「ミレニアム・プロジェクト報告書」を歓迎します。アナン事務総長、マロック・ブラウンUNDP総裁、サックス教授及び関係者の方々に敬意を表します。

 ハイレベル・パネル報告書と同様に、本報告書は開発が国際社会の安全にとって重要な問題であると正しく指摘しており、MDGsの実現が不可欠と強調しています。

 まず、日本は過去10年間世界のODAの5分の1を担ってきた国としてMDGsの実現に強くコミットしていることを表明したいと考えます。その一つの証左が、報告書と同時期に発表されたわが国の新ODA中期政策です。これは、「貧困削減」、「持続的成長」の重要性や「人間の安全保障」の視点を強調し、効率的・効果的な援助の実施に向けた方策を講じながら、MDGsの達成と地球規模問題の解決を目指した取組を進めることに重点をおいています。このように、わが国の開発援助政策は、多くの観点を報告書と共有しており、MDGsの主要な目標と対象を含むものです。

 日本の開発アプローチは、開発を担う人への投資、すなわち教育に力を入れてきたという伝統、そして、途上国から先進工業国に至るここ一世紀半の歴史の中で得たユニークな経験に基づいています。より最近では、被援助国から、援助国と同時に被援助国である時期を経て、被援助国を卒業して主要援助国へと至る過程を経験しています。例えば、日本は1950年代から10数年間、世銀の援助を受け入れ、自らのオーナーシップに基づきつつ、灌漑、電力、港湾、公共交通等経済社会分野の基幹インフラ整備を行ってきました。「新幹線」の建設費用の一部も世銀が融資したものです。

 こうした経験が、多くのアジアの開発途上国へ経済協力を通じた数十年に及ぶ交流の実績とともに、MDGsのレビュー及び2015年以降の取組みにも有益な視座を提供するものと我々は信じています。

議長、

 我々は、MDGsを達成するためには、経済成長を通じた貧困削減及び人間中心の開発の2つが重要な柱であると考えています。

 第一に、経済成長なくして持続可能な貧困削減は達成できません。報告書は同様の認識を示した上で、基礎インフラへの公的投資とキャパシティ・ビルディングの規模を拡大することの必要性を議論し、途上国の国内資金、貿易・投資による民間資金、ODA等の開発資金に着目しています。日本はモンテレイ合意に基づくバランスのとれたアプローチとしてこれを支持します。

 経済成長を通じた貧困削減の成功例は、東アジアの経験に見ることができます。DACの統計によれば、この25年間、東アジア向けのODA投入量はアフリカ向けよりも少ないにもかかわらず、東アジアでは1990年から2001年までの間に絶対的貧困人口が約2億人減少したことに示されているように、東アジアはアフリカに比べて遙かに貧困削減が進んでいます。

 「東アジアの成功」には様々な要因が個別にもしくは組み合わさって寄与しています。つまり、ODAが経済インフラ整備と官及び民間セクターの人材育成等と連携し、旺盛な海外直接投資の流入と結びついてダイナミックな生産活動を生み、ODA、貿易、投資の間の有機的連携が進んだことが経済成長につながりました。貿易・投資を通じて動員される資金規模は援助資金をはるかに上回っており、開発戦略に貿易・投資の視点を適切に位置づけることが不可欠です。因みに、日本は、LDCからの全輸入額の約93%への無税・無枠化や農産品への輸出補助金を行わないなど、途上国の貿易を通じた成長の機会拡大に貢献してきています。日本はドーハ開発ラウンドの早期妥結に向けても貢献しています。

 貿易・投資は、開発援助という手段によっても促進されます。開発援助は、それが国際開発諸機関もしくは二国間によるものであれ、被援助国における重要なインフラを整備し、人的資源の基盤を改善することを通じて、民間貿易・投資の改善を可能とする環境を作り上げるのに主要な役割を果たし得ます。

 TICADプロセスを通じて日本が長らく推進している課題の一つは、こうしたアジアの開発及び経済成長を通じた貧困削減の経験を、アフリカをはじめ他の開発途上国地域に広めることです。これは南南協力を支援する我々の政策にも合致しています。これに関する最近のイニシアティブとして、両地域間の貿易投資の拡大のために政策対話や官民連携を推進することを目的として昨年11月にはTICADアジア・アフリカ貿易投資会議を開催しました。2005年4月には、歴史的なバンドン会議の50周年記念行事としてアジア・アフリカ首脳会議が開催される予定であり、日本としても両地域間の関係強化へコミットメントを新たにするとともに、こうした取組みが経済成長を通じた貧困削減に資することを期待しています。

 我々はさらに報告書がアジアや中東、ラテンアメリカといった地域の中進国による支援の拡大に言及している点に関心を有しています。こうした動きは国際開発援助の世界に新たな展望を開き、MDGsの実現にユニークな貢献をなすものであります。

議長、

 我々は報告書が人間中心の開発戦略に立脚していることを歓迎します。我々は人間の生命に関わる問題やコミュニティ・べースの支援に焦点をあてていることに満足をもって留意します。MDGsは、安寧に対する様々な脅威から人々を「保護」するのみならず、人々が自らの力で脅威に対処できるよう「能力強化」を行うことによって初めて達成されます。これはまさにわが国が推進する「人間の安全保障」とも軌を一にするアプローチです。

 わが国は「国づくりは人づくりから始まる」と考え、教育、訓練等の分野での支援を重視してきました。また、「人づくり」を進めることは、健全なオーナーシップを育てる上で極めて重要です。MDGsの達成及び持続可能な開発には、このオーナーシップが不可欠です。開発協力はオーナーシップを促し尊重するものでなければなりません。MDGs達成の一義的な責任は途上国にあると報告書は正しく指摘しています。この関連で、日本はNEPADの最大の意義は、それがアフリカ自身によるオーナーシップの発露であるという点にあると考えており、我々はそれを尊重し、TICADプロセスを通じて支援しています。

 日本は現在、TICADプロセスの実績を踏まえつつ、包括的な対アフリカ支援策を検討中です。また、わが国はこの機会に「アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ」を提唱したいと思います。これは、「人間の安全保障」の考え方に基づき、様々な機関とも連携しつつ、コミュニティのニーズに応じて、例えば学校建設と同時に井戸の掘削や学校給食の提供、地域社会全体を対象とした保健サービスの提供などの支援をマルチセクトラルに組み合わせて行うことにより学校を核としたコミュニティの能力強化を図るものです。こうした支援アプローチはこれまで既にアフリカ各国で実施してきています。例えばセネガルのタイバンジャイという村では、わが国が協力して建設した給水塔の維持管理のため住民が組合を作り、その組合活動を通じて、収益事業を実施したり、コミュニティの基盤整備への投資を行ったり、コミュニティ全体の発展のための自発的な取組が起こっています。我が国としては、今後更にこうした取組に対する支援を強化・拡大していく方針です。

 また、Quick Wins Actionsは興味深いアプローチを提供しており、中でも保健分野の一つの取組として挙げられている「蚊帳の供与」については、わが国としても従来より同様の取組を行ってきましたが、特に、アフリカの深刻な状況に鑑み、この度、長期残効蚊帳を2007年までに計1,000万帳供与することを決定しました。これにより、4,000万人程度の人々にとってマラリアの脅威が軽減されることが期待されます。

議長、

 報告書が強調しているように、持続可能な開発もしくは効果的な援助にとって、「良い統治」は中心的な問題であり、我々はそれに同意します。他方、破綻国家やポスト・コンフリクト国をはじめガバナンスが充分とはいえない国にこそ支援を最も必要としている人々がいることも忘れてはならないと考えます。

 また、インド洋津波災害は開発に破壊的な影響を与える自然災害の脅威から人類が決して自由ではなく、MDGs達成努力を著しく損なうおそれがあることを悲劇的な形で教えました。2004年の国連事務総長報告によれば、災害による経済的損失は2003年だけで650億ドルにも達したとされています。MDGsの達成のためにも防災対策が開発戦略の中に適切に位置づけられていることが重要であります。日本は、1月に神戸で開催された国連防災世界会議において、地域社会に根ざした防災の重要性を強調し、開発において災害予防をより重視したODAを実施する「防災協力イニシアティブ」を提唱しています。こうした防災の例や、ガバナンス強化の必要性は、MDGs達成のためには、MDGsの中に掲げられていない分野への取り組みの重要性を示していると考えます。

議長、

 最後に、日本がモンテレイ合意、ヨハネスブルグ実施計画そしてMDGsにコミットしていることを改めて強調したいと思います。日本は、世界第2位のドナーであると同時に、MDGsの主要項目である教育、水、保健、環境といった分野においても世界最大のドナーの一つです。
 わが国としては、イラク復興支援やスマトラ沖地震及びインド洋津波への対応に見られるように、国際社会の重大な課題には臨機応変にかつ大胆に対応してきました。我々は、MDGs達成に向けても同様に積極的に取り組んでいきます。今後そのためのODAについても増加させていくよう努力していきます。報告書が指摘するように、平和と開発は表裏一体であり、わが国は、引き続き開発協力に努力を傾注することにより、国際社会の平和と安全、繁栄に貢献していきます。

 その一方で我々が真剣に取り組んでいるMDGsが、世界的なスケールで達成しなければならない大きなチャレンジであればこそ、その資金ニーズに応えるアプローチはもっと包括的に検討されるべきです。こうした目的に向け日本は関心を共有するアクターと共に関与していきたいと考えます。



・ 国際連合日本政府代表部


国連の場における演説 / 平成17年 / 目次


外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省