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国連の場における演説 ハイレベル委員会報告書に関する国連総会非公式審議における大島国連常駐代表ステートメント(仮訳) 議長、 まず、本日の非公式協議を開催いただいたことに対し、感謝します。 ハイレベル委員会(以下「パネル」)が報告書を発出して以来、ほぼ2ヶ月が経過しました。本日の協議は、加盟国に対し、パネル報告書に関する見解を表明する機会を与えるとともに、3月に予定されている事務総長報告及び9月の首脳会合に向けての重要な一歩となることでしょう。 議長、 昨年9月の一般討論演説において、小泉総理大臣は、パネルが「国連新時代」の構築のために、すなわち今日の世界において我々が直面する課題に対処する強くかつ実効的な国連の構築のために、大胆かつ野心的な計画を提示するよう求めました。そして、パネルは、21世紀の国際社会に立ちはだかる伝統的な脅威、新たな脅威という双方の幅広い脅威に如何に対処すべきかにつき検討し、我々の共通の目標である平和と繁栄のために国連の機構はどのように改革されるべきかにつき分析を行うことによって素晴らしい成果を上げました。パネルは、相互に関連する現代の脅威に効果的に対処するために国際社会が一致してその予防に当たらなければならない、またその際、国連の果たす役割は重要であるとの正しい指摘を行いました。我が国政府は、パネルの作業を賞賛し、アナン事務総長がパネルにつきイニシアティブを発揮してきたことを評価します。今や、力を結集し、共通の課題に取り組むことによって、パネルに負けるとも劣らない成果を得る責任は我々国連加盟国にあります。 議長、 我が国は、パネルが国際社会が直面する脅威を6つに分類して分析したことに概ね同意します。相互に関連する諸々の脅威に対し、我々が戦略的にかつ共同して対処するに当たり、国際の平和と安全を築く上での重要な要素として、個人及びコミュニティレベルでの保護と能力強化を強調すべきと考えます。これが、「人間の安全保障」の中核となる概念です。この観点から、我が国は、パネルが貧困、感染症及び環境悪化の問題を最も喫緊の脅威として取り上げ、全ての加盟国が持続的な開発を達成するために責任をもって参加すべきであると提言したことを評価します。 この関連で、自然災害、そしてその中でも特に気象の変化によってもたらされる災害が「人間の安全保障」及び開発プロセスに対してますます大きな脅威になりつつあることに注意を喚起すべきです。このような自然災害が起きた場合、社会においても国家間においても、最も打撃を受けるのは弱者です。我々は、特に我々全てがコミットしたミレニアム開発目標達成のために努力するに当たっては、防災の視点が各国の及び国際的な開発戦略に組み入れられるべきであるとの国連のアピールを支持します。他方で、最近のスマトラ沖津波災害による被害は、自然災害の深刻さを物語っています。この度閉幕したばかりの神戸における国連防災世界会議は、早期警戒の強化及び各国の自然災害対策における予防の文化の促進を含む今後十年に亘る多くの主要事項を対象とした「兵庫行動枠組み」を採択しました。この兵庫行動枠組みで合意された方針に従って個別に又は集団で取り組むことは、今や国連加盟国と国際社会全体に掛かっているのです。 今般の津波災害に関し、私は、既に1月18日の国連総会における審議において我が国による対応につき述べましたが、今一度、我が国が罹災した国々との間で完全な連帯を有していること、また、緊急支援及び長期的復興・再建のニーズに応えていく十分な用意があることを強調したいと思います。 議長、 頻発する紛争において、多くの命、特に罪のない多くの文民の命が失われたことを踏まえて、パネルは「保護する責任」の概念につき具体的な議論を行いました。我々は、この議論は有益であり、また「人間の安全保障」の強化にも資するものであったと確信しています。この関連で、我々の考え方を明確に述べたいと思います。「人間の安全保障」の考え方に立つアプローチとは、何よりも先ず非軍事的手段を通じた紛争の根源における問題の解決のための措置を重視し、それによって、その問題が軍事介入を要する本格的な紛争に発展することを防ぎ又はその可能性を少なくするものです。「人間の安全保障」に関するこのような考え方は、例外的な状況における軍事介入の必要性及びその正当化に関するあらゆる議論と同様に又はそれ以上に重要であると考えています。 紛争後の平和構築については、関連事例の中でもアフガニスタンの例は、国際社会が、国連と協働しながら紛争から和平へ移行する国が獲得した平和を定着させることを支援し、紛争に逆戻りさせないよう支援するために、入手可能な全てのリソースを動員しかつ最も有効な形でそれらを活用することが如何に重要であるかを示す良い一例です。このようなプロセスにおける1つの非常に重要な点は、元戦闘員の武装解除、動員解除及び社会復帰(DDR)の分野での成功を確保することです。DDRに関する十分な議論が行われ、具体的措置がとられることにより、平和構築分野における活動が促進されることを希望します。 パネルが、平和構築活動において我々が実効的かつ首尾一貫性をもって多くの問題に対処することを妨げるような機構上のギャップが国連システム内に存在することを指摘し、そのようなギャップを埋めるための措置として平和構築委員会を設置することを提案したことは正しい認識と考えます。我が国政府は、この提案を前進させるための一歩として留意しますが、そのような平和構築委員会を安保理の補助機関として設置するとの具体的提言については、若干の問題があると思われ、引き続き十分に検討したいと考えます。我々の懸念は、平和構築あるいはいわゆる移行プロセスに関連した問題は、通常、安保理、経社理そして忘れてはならないのは総会の任務にまでまたがる多様なものである、という点です。平和構築に関しては、これら諸機関の任務は、しばしば収斂し、相互に関連し又は重複するものです。安保理の主たる管轄下におく機関を作るよりは、合同の機関、あるいは安保理と経社理から構成される合同フォーラムを設置するという、より適切かつ革新的な方法で、平和構築活動における機構上のギャップを埋めることができるのではないか、と我々は考えます。 国連平和維持活動及びその他平和ミッションは、世界の多くの場所で平和の維持及び治安の確保のために重要な貢献を行っています。この関連で、我々は、アフリカ及びその他地域において地域機関が果たしている役割が益々活発になっていることに留意するとともに、これを肯定的な展開として歓迎します。国連と地域機関との間のより緊密な協力が促進されるべきであり、地域機関の果たす役割は、必要な場合には、キャパシティ・ビルディングやその他の支援を通じて強化されるべきです。今後2年間、我が国は、安保理PKO作業部会議長として、関心を有する国及び関係者と共に、国連平和維持活動が今日直面している主要問題に取り組んでいきたいと考えています。 我が国は、パネルが武力の行使の問題を取り上げたことを評価します。特に、パネルが、現在の自衛権に関する国連憲章第51条の規定の修正や再解釈には賛成しない、としたことを評価します。武力の行使の問題については、更なる議論が必要であり、我が国政府もその議論に積極的に参加していく考えです。 議長、 パネルが、軍縮及び不拡散の問題の重要性を認識し、具体的かつ肯定的な提言を行ったことは、当を得たものであり、パネル報告書に述べられた見解の多くを共有します。大量破壊兵器の拡散は、国際社会にとって最も重大な安全保障上の脅威を構成するものであり、我々はこの問題への対処において国連が建設的な役割を果たすことを強く希望します。核軍縮及び核不拡散は、全世界的な課題です。我が国政府は、世界で唯一の被爆国として、毎年、国連総会に核軍縮決議案を提出してきている他、CTBTの早期発効のためにCTBTフレンズ外相会合を開催する等のイニシアティブを採ってきています。本年5月のNPT運用検討会議は、NPTを基礎とする核軍縮・不拡散体制の信頼性を維持・強化する上で極めて重要です。 原子力の平和的利用は、環境面における懸念に対処するとともにエネルギー需要を満たすという双方の必要性を満足させるものでなくてはならず、同時に、軍縮及び不拡散に関する国際的な義務と両立する形で遂行されなければなりません。我が国は、IAEAとの緊密な協力を継続するとともに、約30年にわたってIAEA保障措置に基づく義務を誠実に履行してきた我が国の経験及び知見をその他関心を有する国との間で引き続き共有していく用意があります。 小型武器及び対人地雷の問題は、個人レベル及び社会レベルの双方における2つの具体的な脅威です。このような広範囲な問題に成功裡に対処することは、様々な人道的状況及び紛争後の状況において、平和を定着させ、個人レベルでの「人間の安全保障」の促進に大いに貢献するものです。我が国政府は、この問題に積極的に取り組んできており、パネルが同問題を重視したことを評価します。 議長、 今日の国際社会が直面する脅威に効果的に対処するためには、安保理が国際の平和と安全の維持のために主要な責任を有する機関として中枢的な役割を果たすべきです。そして、安保理は、21世紀の国際社会の現実を反映し、実効性と信頼性を強化する形で改革されるべきです。安保理改革の中心課題は、そのメンバー国の拡大です。この拡大は、安保理の活動に対して重要な貢献を行う意思とリソースと能力を有する国に対し、安保理において確保された地位が与えられるような形で行われるべきです。安保理が実効的かつ信頼性のあるものとなるためには、安保理の拡大は、そのような諸国を継続的かつ恒常的に安保理の協議及び意思決定に参加させるような形で行われるべきです。 パネルは、安保理メンバーの拡大のための選択肢としてモデルA及びモデルBを提示しました。我が国は、モデルAを基礎とした安保理の改革を支持します。特にモデルAは、常任・非常任理事国双方を、先進国・途上国双方を含めた形で拡大するとの考え方を反映している点に留意します。モデルAは、アフリカの加盟国から2ヶ国を新常任理事国として追加することを提案しており、このことを我が国は支持します。他方で、安保理の新メンバー選出目的のために現在の地域グループを再編すべきであるとのパネルの提案は、多くの加盟国の支持を得るのは難しいと思われます。また、拒否権及び安保理メンバー国選出の基準に関するパネルの提案については、更なる詳細な検討を要すると考えます。 アナン事務総長が、パネル報告書発出に際する書簡において言及したように、安保理改革を含む重要な国連改革の問題について2005年中に結論に到達すべきです。この観点から、2005年は安保理改革の実現において重要な年であることを指摘したいと思います。我が国は、パネルが2020年に安保理の構成につき綿密に見直すべきことを提案したことを支持します。更に、我が国は、安保理の作業における透明性及び説明責任が改善されるべきであり、また安保理の作業方法が改善されるべきであるとしたパネルの見解を強く支持します。安保理非常任理事国として、我が国は、これらへの取り組みに積極的にかかわっていく考えです。 議長、 安保理に加え、その他の主要機関もまた速やかな改革を必要としており、我々は、パネルの提言を引き続き十分に検討していくつもりです。また、我々は、総会、経社理及び事務局の改革に向けての努力が肯定的な結果をもたらすであろうプロセスに積極的に参加していく考えです。我々は、そのような改革は、より効果的でスリムな事務局を作ることを含むべきと考えます。 我が国は、パネルが提案した憲章第53条及び第107条の改正を含む「旧敵国条項」の改正並びに信託統治理事会及び軍事参謀委員会に係る規定の削除を支持します。 最後に、我が国は、3月に予定されている事務総長報告が、主要な課題と必要とされる機構改革にわたり、加盟国の一般的合意に基づいた実質的な決定が9月の首脳会議の前に行われるようその方向付けを提供するものとなることを期待します。そのために、我が国は、今日直面する諸課題に効果的に対処することのできる、改革されかつ実効的な国連を創り出すという目的のために、貴議長、アナン事務総長及び全ての加盟国と共に引き続き協力していく考えです。 ありがとうございました。 |
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国連の場における演説 / 平成17年 / 目次 |
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