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演説

国連の場における演説

スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に関する総会本会議における大島国連大使ステートメント(仮訳)

平成17年1月18日

(英語版はこちら)


議長、

 はじめに、12月26日のインド洋津波で亡くなられた方々とその家族に心から哀悼の意を表します。未曾有の悲劇に見舞われた国々に対して我が国の連帯を改めてお伝えするとともに、極めて困難な状況に対処するために被災国とその国民が多くの救済努力を行っていることに心から敬意を表します。また、大変な状況にあって国連機関の人道支援関係者が被災国で支援を必要としている人々に対して、連日支援活動を行っていることを評価します。特にエグランド人道支援調整担当次長と彼のチームは、人道支援活動を調整し、国際社会から資金を調達する上で、すばらしい仕事を行っています。政府及び民間を問わず、国際社会が協調して対応していることは、真に賞賛すべきことです。

 自然災害の被害を度々受けている我が国としては、その人員、資産、知識と専門技術を活用し、また財政的支援を行うことによって、可能なあらゆる方法で支援を行っています。

 人的貢献については、インドネシア、タイ、スリランカ、モルジブの各被災地に国際緊急援助隊を派遣し、医療支援等の緊急支援を行ってきました。また、自衛隊による海上捜索・救難、航空輸送、伝染病予防や医療などの活動も行っています。

 これまでに、我が国は5億ドルの緊急無償支援を供与することを表明しました。その半分にあたる2億5千万ドルは、今後6ヶ月間の支援を対象とする国連フラッシュ・アピールに応えて、救済・復旧活動に携わっている国連機関や他の国際機関に対する支援にあてられ、今週中に送金される予定です。この2億5千万ドルは、ジャカルタで12日前にアナン事務総長が発出した国連アピールの約25%に当たります。

 さらに、アジアのパートナーとして、5億ドルのうち、残りの半分は最も被害を受けたインドネシア、スリランカ、モルジブに対する2国間支援にあて、これらの支援も迅速に実施される予定です。事務総長は支援を表明した国が支援をできるだけ早く実施に移すよう要請しましたが、私も他の国々に対して同様の要請をしたいと思います。

 津波は「港の波」を意味する古い日本語に由来します。津波は公海では発見されないまま、港を突然襲います。大規模地震による津波の被害と苦しみを防いだり、軽減するためには、早期警戒システムが極めて重要です。1960年のチリ大地震では、25メートルの津波がチリを襲い、数時間後に日本を含む環太平洋の国々にも津波が押し寄せました。この苦い経験に基づき、太平洋津波早期警戒システム国際調整委員会がユネスコの政府間海洋委員会の下に設けられ、24時間体制の監視・早期警戒システムが設立されました。

 本日、1月18日には、10年前に6000人を超える犠牲者を出した大地震に見舞われた兵庫県神戸市において、国連防災世界会議が開幕しました。今回の津波による悲劇の教訓は、この地域に早期警戒システムを構築する必要性です。インド洋と東南アジア地域における津波早期警戒システムの設立を議論するため、同会議で特別セッションを設けることを我が国は提案しました。このセッションで具体的な行動計画が合意され、地域の関係する国々が国際社会の支援を得つつ、信頼できる早期警戒のために取り組み始めることを期待します。そのような取組みにおいて、太平洋早期警戒システムで得られた経験や専門的知見を活かして、ISDR、UNESCOや他の関係機関がドナーと協力しつつ主要な役割を担うべきです。我が国は、数世紀にわたる地震と津波の経験によって得た知識と専門的知見を提供することにより、大きく貢献することができますし、貢献していきたいと考えます。UNESCOとの緊密な連携に基づきISDRがこの分野での国際協力を推進していくために我が国は400万ドルの貢献を行いますが、これに加えて、我が国は国連や他の関心を有するドナー諸国、直接関係する沿岸国家と協力します。

議長、

 世界の約75%の人口が、過去20年間の間に地震、台風、サイクロン、ハリケーン、洪水、干魃といった深刻な自然現象を少なくとも一度は体験した地域に居住していることは厳しい現実です。100カ国以上の何十億という人々が自然災害の影響に周期的に苦しんでいます。自然災害は毎日平均約200人の命を奪っています。2003年だけで、700の自然災害により、75000人が死亡し、650億ドルを越える経済的損害が発生しました。このように自然災害による被害の軽減努力がなされなければ、多くの人々が犠牲になることに加え、経済的・社会的インフラを破壊し、特に開発途上国において開発を逆戻りさせ、人間の安全保障に対する脅威となります。自然災害は脆弱性を暴露し増大させることによって、特に貧困な国ないしは国の中の貧困層を厳しく襲います。自然災害は貧困、飢え、疾病に対する我々の闘いに悪影響を与えます。

 このような厳しい現実にもかかわらず、自然災害は不幸にも国家や国連を含む国際社会によって過小評価されてきました。防災、特に自然災害が開発に与える影響に取り組むことの重要性には十分な関心が払われてきませんでした。インド洋の津波災害から学ぶべき教訓の一つが早期警戒システムの必要性だとすれば、もう一つの教訓は、災害防止や被害軽減を国家開発戦略に取り込むこと等によって、自然災害に対処する政治的意志を高めることではないでしょうか。自然現象は防げませんが、自然現象による被害は、適切な準備、対応、軽減努力によって、防いだり、軽減したりすることができます。この点は、国連防災世界会議の際に、小泉総理が表明したODAを通じた防災協力イニシアティブで強調されています。我が国の防災分野でのODAはドナーの中でも最高水準であり、2003年度には約3億ドルに達しました。このイニシアティブに基づいて、制度作りや人員養成、インフラ整備等の包括的な協力を通じて、開発途上国が災害に強い社会を構築することを積極的に支援し続けていきたいと思います。

議長、

 アナン事務総長が強調したように、被災国に対する国際社会の支援は、緊急救済活動が重要だからといって、その段階で留まるべきではありません。災害の規模を考えれば、長期にわたる復旧、復興に対する支援を供与することも重要です。国際社会はこのために強い政治的意志を保ち続ける必要があります。緊急救済に加えて、復旧及び復興についても我が国は最大限の支援を行います。今回世界各地から示された共感の意識と目標の共有が、災害予防や防災、気候変動、防災を含めた開発戦略といった国際社会が直面する多くの課題に取り組む上での国際社会の協力と決意を強化し、将来への希望へとつながることを強く願っています。


・ 国際連合日本政府代表部


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