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国連の場における演説 国連安全保障理事会「武力紛争下の文民保護」に関する公開討論における原口国連常駐代表演説(仮訳) 議長、 安保理で取り組んでいる重要なテーマ別課題の一つである「武力紛争下の文民保護」に関して公開討論を開催した貴議長に感謝するとともに、この分野で進展を遂げることに強くコミットしているエグランド人道担当事務次長によるプレゼンテーションを歓迎します。 2日に発出されたハイレベル・パネル報告書は、国家間紛争がほとんどなくなる一方で、国内紛争が頻発し、文民の被害が増大する傾向を指摘しています。民族や宗教に基づく国内紛争は、紛争当事者の憎悪を煽りやすく、文民も得てして執拗な攻撃にさらされ、文民の被害が増大することとなります。同報告書は、国民の福利を保護することは国家の義務であるとの考え方に立脚しつつ、特に文民保護に1章を当て、紛争中に文民の犠牲者を保護し、苦悩を最小限にとどめることによって、紛争終了後に迅速に生活を再構築する基盤と意志を人々の間に残すことを目的とする人道支援は、各国政府が国民保護の責任を全うする手助けを行う重要な道具であると位置づけています。武力紛争下の文民保護も、国連が新たな現実と脅威に効果的に対応できるよう改革を進めるにあたって留意されるべき重要な事項の一つです。今後、武力紛争下の文民保護に関する努力を含めて、安保理が取る措置の正統性と実効性が強化されることを期待します。 安保理が適切な措置を取る上で、文民の保護に関する懸念を引き起こしている状況について、正確な情報を迅速に把握することは極めて重要です。そのような観点から、我が国は緊急支援調整官たるエグランド次長が、必要に応じ安保理に対してブリーフィングを行うことを歓迎します。もちろん、安保理が注意を払うべき状況が生じている当該国政府の分析や取った措置に十分耳を傾けることも重要です。その上で、幅広い視点を持つ観点から、適当な場合にはカルドーゾ・パネルの報告も踏まえつつ、アリア・フォーミュラの活用も検討していくべきかもしれません。 一方で、安保理が効果的に活動できなかったとルワンダの大虐殺においても、文民の殺戮が大規模に行われているという情報は既に存在していたことも事実です。国際社会の平和と安定に対する脅威となっている事態について、個々の具体的ケースに応じて、国際社会の規範を適用し対応を定めることは安保理の責任です。安保理が文民が犠牲となっている全ての人道危機を解決できるわけではありませんが、安保理は極めて深刻な人道的事態には関心を払うべきです。そして、安保理理事国はその責任を自覚して、国際社会の対応に適当な貢献を行うべきです。 議長、 エグランド次長の10ポイント行動計画は、武力紛争下の文民保護を考える上で示唆に富んだ議論のベースですが、時間の関係上、特に我が国として重視している3点について触れます。 第一に、地域機関との協力関係の強化です。治安の改善を支援したり、人道要員の安全確保を支援したりすることによって、地域機関は文民の支援と保護ニーズに取り組む上で重要な役割を果たすことができます。たとえば、ダルフールでは、AUが人道問題の解決に向けて関与を行っていることに勇気づけられます。国連が各々のマンデートを遂行できるように地域機関との協力を進めることは有意義であり、国連がより組織的に地域機関と関係するためのフレームワークを設立すべきとの事務総長の考え方を強く支持します。そのようなフレームワークの中に適当な場合には法的要素も含み得るものと考えます。日本としても、このような地域機関による紛争下の文民に対する支援及び保護活動を強く支持します。例えばダルフール問題への対応にあたっては、これまでに国際人道機関に対して拠出した総額約2200万ドルの人道支援に加えて、AUの主体的関与を後押ししていくため、AUミッションへの更なる協力を検討しています。 第二に、人道要員の安全です。人道関係者が文民の保護や支援ニーズに応えるためには、その安全が確保されることが重要であることは論を待ちません。日本としては、事務総長の提案に現れている国連の安全管理体制改革努力を評価し、安全管理体制の強化が実施されることを支持します。そのような改革にあたっては、文民の保護や支援ニーズと人道関係者のリスクとの間で困難な判断を行う必要があり、現場で活動する人道支援機関の意見が十分に反映されるシステムを構築することが重要と考えます。このような考えに立って、日本は責任分担原則に基づくコスト分担が重要であると確信します。 第三に、女性や子どもといった特に脆弱な人々の保護です。国連がこのような脆弱な人々を保護する模範を示し、紛争当事者にも遵守させることが重要ですが、その意味で、国連コンゴ・ミッションの要員による性的暴力は極めて残念な事件です。現在、PKO局が調査中と承知していますが、調査結果は安保理に提出され議論される必要があると考えます。また、PKO要員も含めた国連関係者によるいかなる性的暴力も特定され、、適切に処罰されるとともに、徹底した再発防止策が取られることが重要と考えます。国連事務局要員は性的搾取や性的虐待の防止に関する事務総長ブリティンを尊重・遵守しなければなりませんが、事務総長が要員派遣国と協議の上、PKO要員にも同様のガイドラインが策定され、これに基づいて要員派遣国が訓練を行うことを期待します。 議長、 安保理によるエイド・メモワールに基づいた取り組みや、エグランド次長による10ポイント行動計画に基づく努力にもかかわらず、武力紛争下の文民保護は引き続き大きな挑戦に直面しています。文民保護に関する関心は安保理で取り上げて以来NYでは大きな高まりを見せていますが、現場では引き続き深刻な問題です。現地政府との密接な協調の下、現場で活動する国連、地域機関、NGOの連携を一層深める必要があります。 人道支援と保護の目的は、武力紛争下で苦しんでいる文民の苦しみを緩和することにあります。多大なる努力にもかかわらず、武力紛争が起こってしまえば、できることには限界があることも事実です。文民の脅威の原因そのものを取り除くことはできません。そう考えれば、文民保護の最も効果的な対応策は、そもそも紛争を予防し、紛争が再発しないように紛争後の平和構築を盤石なものとすることではないでしょうか。このような考えに立って、日本は人間の安全保障を促進する重要性を主張しています。人間の安全保障は、共同体の構成員の保護とエンパワーメントを通じて、紛争後の不安定な状況からの脱却を目指し、脆弱な人々が復旧な開発の担い手として自活できる環境を醸成する基盤となります。このような考え方が国連の中でさらに主流化し、紛争予防や平和構築に国連が一層効果的に取り組むことを期待します。 ありがとうございました。 |
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国際連合日本政府代表部 |
国連の場における演説 / 平成16年 / 目次 |
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