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演説

国連の場における演説

国連PKO問題に関する安全保障理事会公開討論における北岡国連大使演説(仮訳)

平成16年5月17日

(英語版はこちら)


個別のPKOとは別に、PKO問題一般を議論するための会合を本日開催することにつき、議長の指導力を多とする。PKOの活動の拡大によって、国連が困難な問題に直面していることから、この会合は重要である。日本は92年以来、PKOに参加し、世界の多くの場所で平和と安定の維持のために貢献してきた。参加の過程で、日本はPKOに関わる多くの問題に遭遇したが、国連と国際社会に対しそのいくつかに対応するための新たなアイデアを提案した。日本はPKOのあらゆる側面を議論する用意があるが、本日は時間の制約もあり、最も重要と思われる問題に絞ってコメントしたい。

PKO予算は2005年には45億ドルまで増加するとの報告がある。これまでと同様のやり方で負担するのであれば、日本が負担分は9億ドルとなるが、これはアフリカに対する日本の二国間ODAの一年分を超える額である。いずれ国であれ、一方でかかる大規模なPKO経費を受け入れ、他方で同じ水準で開発協力を維持することは、不可能ではないにしても、困難なことである。後者の開発協力については、日本としては、貧困を撲滅し、紛争の発生を防ぐために非常に重要なものと考えている。

紛争解決のプロセスの全体像が示されることが重要であると考える。特に、資金手当て行うためには、紛争解決のあらゆる段階での資金需要が事前に示されることが有用である。実際に、東京で行われた東ティモールの復興支援会議においては、PKOだけではなく、人道支援から行政活動、復興まで全ての活動についての必要な経費が示された。同様の試みはかつてカンボジアでも行われ、非常に役立った。

最近のPKOの急速な拡大は、財政面以外にも人的リソースの逼迫などの問題を引き起こしている。日本としては、特に事務局が不足を指摘する文民専門家の提供など、PKOに対する支援を継続していく所存であることを確約する。

PKOについては、任務が明確化される必要がある。第二に、達成すべき目標が掲げられるべきである。この目標は、紛争当事者、国連事務局、安保理及び加盟国がその達成に向けて実効的な協力を行うことができるように、明確かつ現実的なベンチマークで示されるべきである。これが出口戦略(completion strategy)の本質であり、出口戦略とは恣意的な活動期限の設定ではない。確固とした出口戦略を持つことにより、幅広く国際的な参加を募ることができ、また、活動の効果を高めることができる。但し、人道的危機の場合には、例外かつ緊急の形で行動が行われることもあることは言うまでもない。

PKOが展開された後も恒常的な見直しが必要であると考える。特に状況が大きく変化した場合に、それに応じた活動の見直しが遅滞なく行われることが重要である。東ティモールのPKOは、状況の変化に応じ活動が見直され、調整されてきた理想的なケースとして、大いに参考にすべきである。最近、UNOCI以降の多くの決議において、見直しに関する条項が挿入されたことを評価する。一方、すでに設立されて長期間がたっている活動もあり、これらについては、何が活動の長期化をもたらしているのか、打開の道はあるのかを判断するために再評価がなされるべきである。

近年のPKOが展開する環境においては、DDRや地雷問題などの平和構築的活動が紛争解決のための重要な役割を果たしており、実際にPKOの任務のなかにそれらが組み込まれるケースがある。日本は「平和の定着」を重要な施策として掲げており、平和構築活動とPKOとのつながりが重要であることを理解している。しかし、PKOが平和構築の名の下に無制限に拡大されるべきではない。平和構築は復興開発につながることが期待されているが、そこで求められるのはPKOとは別の専門知識・能力である。SRSGに与えられる権限は調整的なものであることが望ましい。

国連PKO拡大の動きのなかでは、さまざまな関係者の協力が決定的に重要となる。最も重要な役割を担うのが、紛争地帯の人々である。彼らが和平プロセスをリードしていくことが奨励される。次に、紛争が地域全体に与える影響を考えれば、地域・サブ地域機構との協力が不可欠である。地域・サブ地域機構とPK Oとの適切な役割分担も考えるべきであり、地域・サブ地域機構の能力を一層強化する必要がある。現在行われているバイの支援は重要ではあるが、これは国際的レベルで一層の調整が可能と考える。国連事務局がこの分野でも積極的な役割を果たすことを期待したい。最後に、最も重要な点として、PKOから復興開発まで、安保理が他の国際機関、及び二国間援助と連携しつつ、PKOから復興・開発までを包括した形で平和を定着させるためには、安保理において人員、物資、資金等様々な面でリソースを有する国がその意志決定過程に常に参画できるように改革がなされる必要がある。

PKOを巡る問題は複雑多岐であり、安保理は、国連事務局、人的・財政的な面での貢献国、地域諸国などの関係国を巻き込んだ形でさらに議論を行うべきである。PKO予算の五分の一を負担する日本として、納税者への説明責任を果たしつつ、国際的な約束を維持していくためにも、熱意をもってこれに参加していきたい。先に開催されたブルンジに関する安保理作業部会は、主要関係国が意見を述べ合う特に意義ある場であった。日本としては、今後もかかる会合が個別のPKOについてだけでなく、より一般的なPKO問題に関しても開催されることを希望する。

日本は紛争解決の手段としてのPKOの基本的な重要性は深く認識しており、今後とも積極的な協力を続けていく。その活動が正当と判断され、かつ任務が適切であれば、新たな活動を認める用意がある。


・ 国際連合日本政府代表部


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