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有馬政府代表演説
有馬政府代表による第4回日露フォーラム基調スピーチ 平成16年10月20日
1.はじめに 尊敬するメーゼンツェフ連邦院副議長、ご列席の皆様、 本フォーラムにおいて基調スピーチを行う機会を与えられたことを大変光栄に存じます。 さて、これまで3回にわたりロシアにおいて開催されて参りました日露フォーラムが、この度初めてわが国において開催されることとなり、それもこれがロシアとの交流に積極的に取り組んでこられたここ石川県で行われるにいたりましたことを喜ばしく存じます。 まず、去る9月に発生した、北オセチア共和国における学校占拠事件に関し、犠牲者及びご遺族の方々に対して深い哀悼の意を表するものでございます。事件発生から早くも1ヶ月以上が経過しましたが、ご遺族の方々の心の痛みは決して癒えるものではございません。テロリズムは如何なる理由があっても正当化しえないものであり、国際社会は一致団結してテロとの闘いに取り組まなければなりません。第2回日露フォーラムの基調スピーチにおいて私から言及させて頂きましたが、国際テロ対策分野における日露協力の必要性は以前にも増して深まっております。 日露関係は、来年2005年に日露修好150周年という歴史的な節目の年を迎えます。来年初めにはプーチン大統領の訪日が予定されており、先程述べた国際テロ対策分野のみならず、政治・経済・人的交流を含むあらゆる分野における日露協力の重要性がこれまで以上に認識される年となると思います。このような歴史的な節目の年まであと2ヶ月程となった今、日露の国交樹立の歴史を振り返りつつ、日露の協力が双方にもたらし得る利益と平和条約締結の必要性について以下を申し述べさせて頂きます。 2.日露国交樹立の歴史 まず最初に、150年前の日露の関係を振り返ってみたいと思います。鎖国政策の下、外国との関わりを制限していた日本は、諸外国の要求を受けて開国に踏み切りました。最初に国交を開いたのは米国、次にロシアでした。米国がいわゆる砲艦外交で開国を迫ったのに対し、ロシアは軍事力を誇示せずに平和的な交渉に徹したことはよく知られています。当時、ロシアはクリミア戦争という苦難のまっただ中にあり、プチャーチン提督が日本との条約締結の命令を受けてから条約締結に至るまで3年以上もの年月がかかりましたが、幕府勘定奉行川路聖謨(かわじとしあきら)とプチャーチン提督との間で互いに敬意を抱きつつ真摯な交渉が行われ、最終的に択捉島とウルップ島との間に国境を画定し日露間の国交が樹立されました。第1回日露フォーラムではロシア海軍士官リコルドと高田屋嘉兵衛との友情が話題となりましたが、リコルドは1844年、嘉兵衛への手紙の中で、「日本とロシアは二つの大国だ。両国には人間の生活に必要なすべてのものがあり、何も不足しているものはない。しかし、隣人である我々と友好的な関係をもたないのは、あなた方にとって善くないことであり、罪であるということに同意してほしい。」と記述しています。このエピソードは、日本とロシアが隣人であり、手を取り合って関係を発展させることが双方にとって利益になるという認識が、日露の国交が樹立される前から、日露の関係者の間で持たれていたことを示しています。このような日露交流史を想起しつつ、次に、日露関係にどのような潜在力があり、日露関係を飛躍的に発展させることが両国にとってどのような利益をもたらし得るのか、考察してみたいと思います。 3.日露関係の潜在性 (1)国際舞台における協力
防衛・治安分野では、首脳の相互訪問、部隊レベルの相互訪問、共同訓練等、多層的な協力が進んでいます。9月には、ロシア太平洋艦隊艦艇3隻が広島県呉市を訪問し、捜索・救難共同訓練が実施されました。また、今月始めには海上保安庁巡視船がウラジオストクを訪問する等海上治安機関同士の交流により両国をつなぐ海の安全は増進されつつあります。 日露の治安当局間では、既に、薬物・銃器・盗難自動車の不法取引、国際組織犯罪、水産物の密漁・密輸等の問題に関して、緊密な協力が進められていますが、今後は、国際社会が直面する課題として一層比重を増しつつあるテロ対策の分野で、協力を一層緊密化していくことが望まれます。 4.日露双方にとっての平和条約締結の必要性 以上述べたように、日露関係は、様々な分野で大きな潜在性を有しており、日露関係が飛躍的に発展することは日露双方に大きな利益をもたらします。しかし、日露関係の現状は、その潜在力から考えるとまだまだ満足のいく水準にあるとは言えません。日中間の貿易高は日中国交正常化前の1970年当時、日露間の貿易高を下回っていましたが、現在は日露間の約30倍にも達しています。このような状況の背景には、日露間の四島の問題が解決されておらず、平和条約が締結されていないことを指摘せざるを得ません。 昨年10月から11月にかけて、わが国で行われた世論調査で、諸外国に対して親しみを感じるかどうかを調査したところ、米国に対して75%、中国に対しても48%の日本人が親しみを感じると答えているのに対し、ロシアに対して親しみを感じている日本人はわずか20%でした。多くの日本人がトルストイ、ドストエフスキー、チェーホフ、チャイコフスキーを愛し、近年日露間の経済交流や人的交流が急速に活発化しているにもかかわらず、日本人の中でロシアに親しみを感じると答える人がこれほど少ないのは、四島の問題が未解決のまま残されていることが、日本人の心に大きな影を落としているからに他なりません。 日露関係を飛躍的に発展させるためには、この問題を解決して平和条約を締結することが不可欠です。本年4月の日露賢人会議の際に、森前総理と個別に会談したプーチン大統領は平和条約問題が関係発展の障害となっており、この障害は早期に取り除かれる必要がある旨述べられています。今や、日露双方が、150年前の先人たちの粘り強い努力に思いを致しつつ、「東京宣言」に明記されているとおり「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」、そしてそのことにより「関係を完全に正常化する」という一貫した日露共通の方針に従い、最大限の努力を傾注していくことが求められていると思います。そして、そのようにして日露の戦略的提携関係を更に高次元のものへと飛躍的に高めていくことは日露双方にとって利益となるものであることを共通の認識としてロシアの方々と分かち合いたいものと考えます。 来年初めのプーチン大統領の訪日が、このような観点から、日露関係の更なる進展に弾みを与えるものとなることを期待して止みません。 5.国民間交流の進展 最後に、以上のような日露関係を更に進展させるためには、両国の世論による理解と支持が不可欠であり、そのための国民間交流の重要性を改めて指摘したいと考えます。 国民間交流の分野では、昨年10月より日露青年交流事業が新しい実施体制の下で再開されました。昨年以来、本事業の下で、ロシア柔道チームが訪日し日露合同合宿を行ったほか、若手外交官、日本語履修学生、ジャーナリスト等、様々な青年グループが訪日し、1999年に事業が開始されて以来、1500人を超える交流が実現されています。 昨年8月には、石川県の150人規模の代表団がイルクーツク州を訪問し、森前総理のご参加とゴヴォリン知事、メーゼンツェフ副議長のご協力を得て様々な交流事業を行ったと聞いております。地域間交流は、草の根レベルでの人と人の交流を通じて国民間の相互理解の基礎を形作る重要な活動であり、長年にわたり温かい関係を築かれている石川県とイルクーツク州の取り組みに敬意を表したいと考えます。 メーゼンツェフ副議長がかねてより提唱されていたわが国ジャーナリスト・グループの訪露が先月実施されました。報道関係者の交流と相互理解は、メディアを通じて情報の受け手である国民に広く還元されるため世論啓発の観点から意義が大きく、本件実現のために尽力されたメーゼンツェフ副議長に敬意を表するとともに、この交流を高く評価したいと思います。 また、わが国は、現在外国人観光客に日本を訪問してもらおうとビジット・ジャパン・キャンペーンを推進していますが、観光分野の協力は大規模な国民間交流にもつながる重要な分野です。日露の観光客数は双方向とも増加傾向にありますが、この分野でどのような協力が可能なのかについても共に考えていきたいと思います。 6.おわりに 現在、日露の政府間では、来年初めのプーチン大統領の訪日に向けて、精力的に準備が行われています。本フォーラムは2000年9月のプーチン大統領訪日時の森総理と大統領の合意を出発点とするものであり、プーチン大統領訪日を控えた今こそ、本フォーラムが活発な議論を行い、両国の世論に向かって発信することが求められています。本フォーラムの設立の目的に資する活発な議論が行われることを期待します。 ご静聴ありがとうございました。 |
政府代表・幹部・大使・総領事 / 平成16年 / 目次 |
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