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演説

茂木政府代表演説

国際原子力機関第48回総会
茂木敏充政府代表(科学技術政策担当大臣)演説

平成16年9月20日


1.序及び総論

議長、
 日本政府を代表して、閣下が国際原子力機関第48回通常総会の議長に選出されたことを心からお祝い申し上げます。貴議長の豊富な国際的経験と卓越した指導力によって、本総会が実り多きものとなることを確信しております。また、チャド共和国、トーゴ共和国及びモーリタニア・イスラム共和国が新たに加盟国となったことを心から歓迎します。

議長、事務局長、ご列席の皆様、
 北朝鮮等の核問題が深刻化し、核拡散の地下ネットワークの存在が明らかになるなど、現在、国際的な核不拡散体制は重大な挑戦に直面しております。そこで、不拡散体制の強化は、国際社会が緊急に取り組むべき最重要課題の一つになっています。同時に、原子力は、供給安定性に優れ、地球温暖化の防止にも寄与する貴重なエネルギー源として、その重要性を増しています。医療や農・工業分野を含む原子力の平和的利用は、国際社会の経済的・社会的発展にとって極めて有益であることは言うまでもありません。従って、核不拡散体制の強化と原子力の平和的利用の両面を司るIAEAの役割は、益々その重要性を増していると考えます。

2.核不拡散体制の強化

議長、
 核不拡散体制の強化は、我が国の外交の最重要課題の一つです。来年2005年は、我が国にとって被爆60周年に当たり、また5年に一度のNPT運用検討会議がニューヨークで開催される節目の年でありますが、国際社会が核軍縮・不拡散へのコミットメントを新たにし、核軍縮を始めとする一層の軍縮の達成に向けた努力が払われることを強く期待します。我が国は、唯一の被爆国として、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」との非核三原則を堅持し、決して核兵器を保有することはないことを改めて申し上げます。

 現行の核不拡散体制の「抜け穴」を塞ぎ、不拡散体制を強化することは、国際社会全体の責務です。不拡散に関するブッシュ米大統領の提案やエルバラダイ事務局長の国際核管理構想は、濃縮及び再処理を始めとする機微な技術等の拡散を防止する必要性に根差すものと考え、我が国はこの問題意識を充分に共有するものです。しかし、このような構想を議論する際には、原子力の平和的利用の現実とこれに対する人々の希望への配慮も充分なされるべきと考えます。

議長、
 核不拡散体制の積極的な強化のためには、IAEA保障措置を強化することが鍵であると考えます。我が国は、そのための最も現実的かつ効果的な方途として、追加議定書普遍化のための努力を継続しています。しかしながら、追加議定書の発効国は現在60カ国であり、満足できる水準に達しているとは言えません。私は、追加議定書未締結の加盟国に対して、早期の締結を呼びかけます。

 先週の15日、我が国において統合保障措置の適用が開始されました。我が国のような大規模な原子力活動を行う国において統合保障措置が適用されるのは初めてのことであり、他国に範を示す意味でも大きな成果と考えています。我が国は、限られた資源を有効に活用するとの観点から、保障措置の一層の効率化が図られることについても重視しており、統合保障措置の適用は、その観点からも有益と考えます。

3.北朝鮮、イラン、リビアの核問題等

議長、
 北朝鮮の核計画は、北東アジア地域の平和と安全を脅かすものであり、かつ、国際的な核不拡散体制への重大な挑戦です。我が国は、北朝鮮が、NPTを含む関連する全ての国際約束を遵守するとともに、信頼のおける国際的な検証の下、全ての核計画を完全に廃棄することを強く求めます。私は、この問題が六者会合のプロセスを通じて平和的に解決されることが不可欠であると考えており、第4回会合が早急に開催されることが重要です。

 また、イランについて、IAEAがイランの未申告活動を察知してから約2年が経過しているにも関わらず、依然として未解明の問題が残っていることに懸念を表明します。我が国は、2国間外相会談や軍縮・不拡散協議の機会を捉え、イラン政府に対し、国際社会の懸念を払拭するため、追加議定書を早期に批准するとともに、ウラン濃縮関連・再処理活動の停止を含む累次のIAEA理事会決議の全ての要求事項を誠実に履行することを強く求めてきました。イランの核問題を早期に解決するためには、イラン自身が透明性を高めることが不可欠です。改めてこの機会に、イランに対し、今般先週の理事会で採択された決議を含む累次のIAEA理事会決議の全ての要求事項の誠実な履行を求めるものであります。

 我が国は、リビアが核を含む大量破壊兵器計画の廃棄を決定し、国際社会との協力を進めていることを評価します。他の核拡散懸念国がリビアの例に倣い、IAEAと完全に協力することを強く期待します。

 韓国については、我が国は、韓国がこれまで透明性をもってIAEAと協力してきたと理解しており、かかる姿勢を評価しています。同時に、我が国は、NPT・IAEA体制の信頼性の維持の観点から、本件事案に重大な関心を有しており、事務局長による「本件は深刻な懸念すべき問題である」との報告に注目しています。韓国が、これらの過去の懸念される案件の解明に向け、透明性を確保しつつ、引き続き、IAEAと十分に協力していくことを期待します。我が国は、本件問題の早期解決が重要と考えます。

4.核セキュリティ対策

議長、
 9.11事件を契機として核テロリズムの危険性が指摘されるようになった今日、国際社会は、団結して適切な核セキュリティ対策をとることが求められています。この観点から、我が国は、核セキュリティ基金(NSF)を始めとするIAEAの取り組みを評価しており、また、核物質防護条約改正案審議のための会議の早期開催を期待しております。米国が提唱した地球的規模脅威削減イニシアチブ(GTRI)については、我が国としてもその進展に留意しており、先に開催されたパートナー会合で発出された報告を踏まえ、引き続き適切な形で協力していきたいと考えます。

5.原子力の平和的利用

議長、
 原子力の平和的利用の分野におけるIAEAの役割は非常に大きなものがあります。特に、IAEAが発展途上国に対して行っている技術協力は、医療や農・工業の分野における放射線の利用促進の観点からも重要です。我が国は技術協力基金への拠出を100%実施しており、各加盟国においても、遅滞なく完全に拠出が行われることを強く希望します。一方で、被援助国側も相応の責任を果たすことを期待します。

 我が国は、原子力発電を基幹電源と位置付け、原子力発電の特性を一層改善するために、核燃料サイクルの確立を積極的に推進しています。現在、従来以上に幅広い各層から議論への参画を求め、原子力政策について国民の理解増進を目指した新たな「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」を策定中です。

 原子力の将来を展望した活動も重要です。核融合エネルギーの実現に向けたITER計画については、建設地問題が6カ国の合意によって解決されることを期待します。我々としては引き続き青森県六ヶ所村への誘致を目指したく、本件が国際的パートナーシップの下で計画が推進されることが何よりも重要であると考えます。

6.美浜事故・原子力安全

 先月、我が国の原子力発電所において、蒸気噴出事故が発生しました。この事故は放射性物質の放出を伴うものではありませんでしたが、作業員の方々に死傷者を出す大変痛ましい事故となりました。我が国は、安全性確保の重要性を再確認し、事故の再発を防ぐべく、安全性の一層の向上のために最大限努力する決意です。また、我が国は、原子力安全に関する国際協力を重視し、IAEAのこれまでの取り組みを高く評価するとともに、今後とも積極的に貢献していく考えです。

7.放射性物質の輸送

議長、
 原子力の平和的利用のためには、放射性物質の円滑な輸送が不可欠です。特に、放射性物質の国際輸送は、国際法上確立した「航行の自由」の権利に基づいた活動です。その実施に当たっては、関連国際機関が定めた国際基準に従って、最大限慎重な措置が講じられています。また、本年、我が国は、IAEA事務局に対してTranSAS実施の要請を行ったことを御報告致します。

8.IAEA財政・人事

 IAEAがその期待される役割を果たすためには、充分な財政的裏付けが必要です。そのため、我が国は、保障措置予算の増額を含む来年度の通常予算を支持しました。他方、事業の優先順位設定と経費削減によって予算の一層効率的な運用を図るよう、IAEA事務局の引き続いての努力を求めたいと思います。

9.結語

議長、
 最後に、我が国がIAEAがその重要な使命を達成するよう積極的に支援していくことを確約し、私の演説を終わります。

 ご静聴ありがとうございました。


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