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演説

山崎隆一郎国際貿易・経済担当大使演説

UNCTAD XI 我が国首席代表演説(日本語訳)


平成16年6月15日


(英語版はこちら)


 議長閣下、各国代表の皆様、国際機関代表の皆様、並びに御列席の皆様、

 私は先ず、本会議の開催を準備されてきたブラジル政府及びブラジル国民の皆様に、深い敬意と感謝の念を表したいと思います。
 我が国とブラジルは時差が12時間で地球上において正反対にありますが、その地理的な距離にも関わらず、伝統的に極めて良好な友好関係を維持してまいりました。そして、その原動力は、日本の国外において最大規模である、約140万人にのぼる在ブラジル日系社会の存在であり、ここサンパウロを始めとして、多数の日系企業が活躍している次第であります。
 我が国の今次総会への参加は、未来に向けて一層の交流拡大の契機となるものと確信しております。

議長、

 今日、国際社会にとって最大の課題の一つは、開発問題です。そして、ミレニアム開発目標の達成のためには、開発途上国自身の努力と国際社会の協力が必要です。我が国としては、ODA、民間資金、貿易といった分野を含むあらゆる政策手段を動員して開発問題に取り組んでいます。そして、今後とも、自立の促進及び持続可能性の強化という二つの視点を重視しながら、開発のための途上国の努力を引き続き支援していきたいと考えております。
 第一の視点である自立の促進に関しては、人づくりが国づくりの基礎であるとの考えに立って、「人間の安全保障」の視点を我が国ODAの基本方針の柱の一つと位置づけ、個人の保護と能力強化を重視して、取り組みを進めているところです。特に、国際機関が開発途上国における貧困・難民・感染症の分野で実施するプロジェクトに対しては、我が国は1999年に国連に設置した「人間の安全保障基金」を通じた支援を実施しています。
 そのような「人間の安全保障」の視点に基づいた協力が、自立的な人づくり、ひいては国づくりを促進し、貧困の削減に寄与することによって、地域の安定を促し、究極的に、テロの抑止、世界平和に寄与するものと確信します。

 議長、

 次に、我が国の開発問題に対する視点の二つ目、持続可能性の強化について申しますと、我が国としては環境への配慮がその重要な柱であると考えております。
 1992年にリオデジャネイロで開かれた「地球サミット」、国連環境開発会議(UNCED)以来、経済開発と環境保護の両立を目指す持続可能な開発という考え方を踏まえて、様々な環境問題に関する国際的な枠組が整えられてきております。この文脈において、我が国古都の名を冠する京都議定書が地球温暖化問題に対する国際的な取組みの強化に向けての重要な第一歩として位置づけられていることは、我が国にとっても、大変誇らしいことであります。我が国は、この京都議定書を未だ締結していない国に対してできるだけ早期に締結するように呼びかけます。

 議長、

 次に、開発の原動力となるべき貿易と投資の促進の観点から、途上国の多角的貿易体制への参画のための、4つの重要な取り組みにつき申し上げます。
 第一に、貿易の自由化に関して、我が国は、途上国の開発と貧困の削減に資する一方で、途上国の現状を無視した貿易の自由化は途上国にとって大きな負担となることも認識しています。S&Dについて、途上国と今後とも建設的かつ現実的な議論をしたいと考えています。
 第二に、WTO協定に関連したキャパシティ・ビルディングに関しては、前回バンコクでの第10回総会や一昨年の持続可能な開発に関する世界首脳会議において、我が国は、5年間で4,500人を対象とした人材育成策を表明し、着実に実施してきております。また、WTOのドーハ開発アジェンダ・グローバル・トラスト・ファンドに新たに約80万米ドルを拠出することをここで表明いたします。
 第三に、市場アクセスの改善に関しては、途上国の貿易拡大を促すものとなることが重要です。なお、我が国は世界最大の食料純輸入国であり、また、昨年4月、後発開発途上国の産品に対する無税・無枠措置を大幅に拡大し、その対象品目の輸入額は、昨年と一昨年とで比較すると25パーセント以上拡大しました。
 第四に、途上国が改善された市場アクセスから実質的に裨益するためには、供給面での制約解消が必要なことは、今や共通の認識となっています。この点、我が国は、港湾や幹線道路の整備などの貿易インフラ整備を多数行っております。また、マーケティングや中小企業振興などの分野の技術支援も積極的に実施しており、WTO協定に関連した案件と併せ、昨年1年間だけでも1,000件以上の実績があります。
 なお、この点に関し、アジアにおいては活発な貿易・投資を通じて著しい経済成長を遂げた成功例があります。我が国は、こうしたアジアの経験を世界のために活用すべく南南協力を推進しております。特に本年は、TICADプロセスにおいて貿易・投資の分野におけるアジア・アフリカ協力の強化を目指しているところであり、秋に東京でTICADアジア・アフリカ貿易投資会議を開催する予定です。このような形で、我々は投資を自ら呼び込もうとする自助努力を積極的に呼びかけて参ります。
 また、投資については、我が国は、投資円滑化ジャパン・イニシアティブを提唱します。このイニシアティブは、来年初頭にAPECの各エコノミーの参加を得て、UNCTADその他の国際機関の協力の下、投資に関するセミナーを東京で開催するものです。投資環境に関するビジネス界の要望や最近急速に進展しつつある二国間・地域間の投資ルールのメリットについて、意見交換を行い、経験を共有する良い機会を提供するものであり、多くの方の参加を期待します。

 議長、

 ここで、私は、透明性のある安定した貿易ルールが、途上国がグローバル経済の中で利益を得ることができるようにするために重要であることを強調したいと思います。その意味で、今次総会は、開発が中心テーマとなっている今次WTOラウンドにおける交渉の前進へ向けた建設的な信頼構築の機会として、大きな意義があるものと考えております。
 今次WTOラウンドについては、現在、7月末の枠組み合意に向けてモメンタムが高まっておりますが、我々に残されている時間は刻々と少なくなってきています。我々の共同責任として、合意を達成できなかった場合は、多角的貿易体制において将来に与える悪影響は甚大なものがあるでしょう。野心の高い合意を達成するために、各国が切迫感を持って、合意形成へ向けて努力を傾注するよう呼びかけたいと思います。

最後に、今次総会で採択される成果文書により、今後4年間の貿易・投資を通じた途上国の開発問題の大いなる前進を期待します。

 ご静聴ありがとうございました。


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