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川口外務大臣演説
川口外務大臣冒頭挨拶-西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合-
2004年4月5日 本日、ご列席の皆様をお迎えして、「西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合」を開催できることを、大変光栄に思います。 【情勢認識】 旧ユーゴ紛争の終結から数年が経過し、西バルカン諸国では、ようやく平和と安定が軌道に乗りつつあります。今日、このように西バルカン諸国の閣僚が一堂に会し、地域の協力や発展について語り合えること自体がこの地域の安定化に向けた動きを示すものであると言えるでしょう。これは2月に悲劇的な死を遂げたトライコフスキー大統領を始めとする西バルカン各国の指導者及び米、EU、国連、NATO、OHR等の国際社会の努力による成果であり、関係者に敬意を表したいと思います。 しかし、問題が全て解決されたということではなく、これからも時間をかけ、解決すべき多くの問題が残されています。情勢は安定化に向かっているものの、未だ盤石とは言えず脆弱性を抱えています。先月、コソボで起こった暴動は、未だ真の平和が定着していないことを示しています。 私はこの会合の開催を通じ、西バルカン地域における平和の定着を確固たるものとし、持続的な経済発展を実現するために、西バルカン地域が一致協力し、国際社会もこれに引き続き高い関心を持って関与していくという力強いメッセージを打ち出したいと思います。 【三本柱】 我が国は、「平和の定着と国造り」を我が国の国際協力の柱の一つと位置づけ、積極的な「平和の定着」外交を推進して来ました。その一環としてこれまで西バルカン地域を含む南東欧地域に対し、総額18億ドルに上る経済協力を行ってきました。こうした協力にあたっては、我が国は「人間の安全保障」の視点を踏まえつつ、この地域の「平和構築」に貢献することを重視しておりますが、こうした取り組みは、新しいODA大綱に基づく我が国ODAの新しいアプローチであります。この地域に対する我が国の支援は、新ODA大綱にある「人間の安全保障」の考え方とともに、重点課題の一つである平和構築に沿って実施されてきました。 今後、我が国は、西バルカン地域に対し以下の3つの考え方に基づき、引き続き積極的な貢献を行っていきたいと思います。 ((1)平和の定着) 第一は平和の定着です。そのためには西バルカン諸国が民主化、法の支配、域内協力、ICTYとの協力を含む国際社会との協力を進めていくことが特に必要です。 域内の平和の定着との関連で、コソボ情勢について言及したいと思います。先月のコソボ各地で発生した暴動を強く非難し、関係当事者の抑制された対応を求めます。国際社会は国連安保理決議1244に基づき「地位の前の水準」アプローチを引き続き支持しており、我が国としても関係当事者がベオグラードとの直接対話を含め、現在UNMIKによって策定されたコソボの水準履行計画の着実な実施に取り組むこと、そして、国際社会がこれを支援していくことを呼び掛けたいと思います。今般のコソボの事件は、平和の定着のためには民族融和が最も重要であることを改めて示しました。域内の関係当事者が民族融和を促進し、難民・避難民の帰還・定住促進のための協力を含め、多民族社会の構築のための努力を続けていくことが重要であり、我が国としても引き続きこれらの分野における協力を続けて行きたいと思います。 また、組織犯罪及びトラフィッキングの問題は、西バルカンの法の支配と健全なビジネス環境に対する障害となっています。そして、この問題は国際社会と協力して取り組むべきトランス・ナショナルな性格を持つようになっています。西バルカン諸国が国際組織犯罪防止条約を着実に履行するとともに、この地域がテロリストの活動の拠点として利用されないよう引き続き適切な措置を執ることを期待します。我が国はこれまでコソボにおける小型武器の回収や警察支援等を行って参りましたが、今後とも西バルカン諸国の治安強化に対する努力を、警察関係者の研修等によって支援していきたいと思います。 ((2)経済発展) 第二は経済発展です。この地域は基本的な復興支援の段階が終了し、持続的経済発展を目指す段階に移りつつあります。そのためには民間セクターの活性化が何よりも重要であり、西バルカン諸国は市場経済化のための改革努力を続けて行かねばなりません。中でも中小企業や起業家の育成、貿易・投資の振興が重要です。このような観点から、我が国は、中小企業振興に係る「人造り」支援、貿易・投資振興に係る政策支援等の協力を行ってまいります。特に専門家の長期派遣、青年海外協力隊及びシニアボランティアの派遣についても検討していきたいと思います。 この地域への外国直接投資を促進するためには、西バルカン諸国とビジネス界との対話の一層の強化が有益です。このような観点から、明日行われる予定の日本経団連との会合は重要であると考えます。ビジネス界は、この地域に多くの潜在的機会があることを知ることが出来るでしょう。 また、持続的かつ安定的な経済発展の基盤として、経済・社会インフラの整備は必要不可欠であります。我が国は、これまで港湾施設の改修や高速道路建設等、特に運輸インフラ整備に重点を置いた支援を実施して参りましたが、今後とも、地域物流を促進し、経済の活性化に繋がるような資金協力を検討してまいりたいと思います。 また、比較優位のある産業を振興するとの観点から、西バルカン諸国にとっては、観光分野が特に有望と思われます。本日の会合のフォローアップとして、観光を始めとする域内の産業振興に関するワークショップを開催することを提案したいと思います。 (両輪) 「平和の定着」と「経済発展」は、車の両輪のような関係で相互に強い連関性があります。民族融和が促進され、平和の定着が確固たるものとならなければ経済の発展は望めません。それとは逆に、経済発展の遅れに起因する貧困層や失業者の増大が犯罪の温床や、民主化や改革に対する幻滅を生み、民族融和の障害となる等、平和の定着を阻害する大きな要因となります。したがって、これら二つの課題に対する様々な取組を互いに有機的に連携させて考えていく必要があります。 ((3)域内協力) 第三は域内協力です。平和の定着も経済発展も一国だけで成し得るものではなく、域内協力がなければ達成できません。これまでの南東欧安定協定が域内協力に果たした役割を高く評価したいと思います。国境管理や組織犯罪・トラフィッキング対策には各国自身の取組に加え、国境を越えた協力が不可欠です。また、経済発展のためには域内のFTA促進等の経済交流を積極的に推進する必要もありましょう。一国のみでは数百万の市場であったとしても、FTAによって数千万という魅力溢れる大市場へと変貌します。これは、将来的な発展に必要な投資を誘致する上でも不可欠なことでしょう。 【EUとの補完協力】 この地域のEU加盟とNATO加盟プロセスは、安定化のための強力な手段であります。我が国はこの地域の欧州大西洋統合を支持し、グローバル・パートナーとしてのEUと協調しつつ、我が国が同地域の安定のために補完的役割を果たして行きたいと思います。 【西バルカン諸国のコミット】 アルバニアの諺に「最良の医者は自分自身である」というものがあります。真の改革を断行出来るのは、正に西バルカン諸国自身であります。今こそ、世界に向けて各国の当事者が平和定着及び経済発展に向けた力強いコミットを行い、それが実際の行動に繋がることを強く期待します。 最後になりましたが、ここにいらっしゃいます平和親善大使のストイコビッチさんに、「強いサッカー・チームを作る秘訣は」とお聞きしたなら、「個人」と「組織」の二つを挙げられるのではないでしょうか。個人の能力とチームワーク、何れかが欠けても強いチームにはなり得ないでしょう。このことは西バルカンというチームにも当てはまることではないでしょうか。各国がそれぞれタレントを発揮すると同時に、チームとしての域内協力を活性化させることが重要です。是非、力を合わせてゴールを目指して欲しいと思います。日本は、これからも西バルカン・チームのサポーターであることをお約束し、私の挨拶に代えさせて頂きます。 有り難うございました。 |
川口外務大臣演説 / 平成16年 / 目次 |
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