進藤雄介 通常兵器室長 演説
カンボジアにおける小型武器破壊式典
進藤雄介 通常兵器室長のスピーチ
平成15年9月21日、於:シェムリアップ州バンテアスレイ郡
エム・サム・アン 内務副大臣
オン・ウン シェムリアップ州政府第一州知事
御列席の皆様
- この度、カンボジア政府、シェムリアップ州政府の協力を得て、小型武器破壊式典「平和の炎」に出席し、日本政府を代表して挨拶を述べる機会を与えて頂いたことは非常に光栄です。このような武器の公開破壊式典をにより、我々は小型武器のもたらす問題に対して真剣に取り組む決意を示すことができます。
- 社会を不安定化させる小型武器の過剰な蓄積は、紛争終了後の社会経済開発、人道支援、平和構築を阻害する要因となっています。また、小型武器による犠牲者は年間50万人に達し、その8割以上が女性や子供です。1995年、ガリ国連事務総長(当時)によって小型武器問題が提起されて以来、国際社会は、この問題に取り組んで参りました。我が国も小型武器問題に一貫して積極的に取り組んできました。具体的には、種々の国際フォーラムや会議において、小型武器問題への取組の重要性を喚起しつづけるとともに、小型武器に関連した多くの会議やワークショップを、日本のみならず、各地で開催してきました。
- 2001年に開催された国連小型武器会議において、我が国は副議長国を、本年7月に開催された国連小型武器中間会合では議長国を務めました。我が国は、紛争終了後の「平和の定着」を外交政策の重要な柱の一つと位置づけていますが、小型武器の規制、回収、破壊といった問題への取り組みは、そのためにも重要なものであります。
- 我が国は、国際社会において小型武器問題の重要性を喚起するとともに、小型武器の被害国における実際の「行動」が必要であると考えています。カンボジアでは、小型武器の非合法取引や流通が国内の治安に深刻な問題をもたらしていると認識しています。もちろん、小型武器回収の成功のためには、カンボディア自身による非合法な小型武器を根絶するという強い意志が重要です。また、武器回収に加えて、武器を保有せざるを得ない原因、動機を取り除くことも重要であります。そのためにはまず第一に国民和解が必要であり、それに続いて、国内の治安状況の改善、国境管理、啓蒙活動、「銃の文化」から「平和の文化」への転換が必要となります。換言すれば、「包括的なアプローチ」が必要となります。
- 我が国は、本年4月、カンボジアにおいて小型武器回収プロジェクトを実施するために、小型武器対策チーム(JSAC)を設立しました。このプロジェクトは、総額約370万ドルであり、武器の自発的供出の対価として、社会インフラの整備、治安維持への支援を行うものであります。
- プロジェクトは、「小型武器の自発的供出の対価としての開発の提供」、「小型武器破壊式典」、「小型武器の登録支援」、「啓蒙活動」の4つの柱から構成されています。「小型武器の自発的供出の対価としての開発の提供」とは、小型武器を供出してきた共同体に対して、現場のニーズに応えた開発、例えば、学校や橋、道路、井戸の建設などを提供するものであり、地域のニーズに沿ったものです。「小型武器破壊式典」は、非合法な小型武器の回収、破壊の必要性を市民が理解できる効果的なものであります。そうした式典は住民と関係当局の間の信頼醸成にも役立ちます。「小型武器の登録支援」は、将来の小型武器の非合法な流通を防止するためのものであります。「啓蒙活動」は、NGOを含めた全ての関係機関が協力して小型武器問題に取り組むことができるものであります。これらの柱は相互に補完的で必要不可欠なものです。
- 小型武器回収プロジェクトは、貧困、社会的疎外といった紛争の原因に対処する平和構築のプロセスでもあります。そして、人々の生活が持続的な開発、良い統治の実現、治安機関と市民との間の信頼醸成等により向上し、また、このプロジェクトの実施を通じて、小型武器の非合法取引が根絶されると確信しています。
- 今般、バンテアスレイ郡において回収された約1000丁を燃やす武器破壊式典は、小型武器問題への取組の第一歩であり、国際社会も歓迎しています。ここにある武器は、カンボジア政府、シェムリアップ州政府および我が国の協力によりして回収されたものです。我が国は、このプロジェクトが地域の多面的な開発ニーズを考慮した武器回収・破壊プロジェクトの成功例となることを期待しております。我が国は、平和国家、平和の文化を唱える国家として、非合法な小型武器の撲滅に向けた努力を強化する決意です。
- この武器破壊式典の機会に、我が国は、カンボジアにおいて小型武器がもたらす問題に向けた取り組みを強化するとともに、カンボジア国民とともによりよい、より安全な生活のために協力していく強いコミットメントを再確認致したいと思います。
ご静聴ありがとうございました。
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