![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() | ||||||||||
|
トップページ > 報道・広報 > 演説 |
![]() |
川口外務大臣演説 ウラジオストクにおける川口外務大臣による極東に関するスピーチ
2003年6月29日 フリステンコ副首相、ダリキン沿海地方知事、ロシュコフ外務次官、ウラジオストク及び極東のロシア国民の皆さん、私は今、日本国の外務大臣として歴史上初めて極東の地に立ち、皆さんに直接お話できる機会を持てたことに、大きな喜びを感じています。極東の皆さんに、是非、日本と極東ロシアとの間の協力の可能性について理解を得たいと考え、私の考えを述べたいと存じます。 1.我が国と極東との歴史的関係 日本と極東ロシアは、同じ北東アジアに位置し、この地理的な近さから、極東ロシアと我が国との間には、深い交流の歴史があります。日本にとっては、ウラジオストク、極東ロシアは「日本に最も近いヨーロッパ」であり続けてきたのです。早くも1876年に、ウラジオストクに日本の貿易事務館が開設されています。それ以来、日本人居留民の数も増加し続け、20世紀初頭には約3000人を数えるまでになったのです。日露戦争終了後の1907年には領事館と日本人学校が開設されました。1921年には、ここウラジオストク在住の日本人の数は6000人になりました。 第二次大戦を経て、1952年、ウラジオストクは軍事的理由から閉鎖され、両国関係は冷戦の狭間に置かれました。1986年、当時のゴルバチョフ書記長が「対日関係について好転の兆しがある。この転換が生じるのは好ましいことである」と演説しました。その演説が行われたのがウラジオストクの地であったことは、ウラジオストクがロシアの太平洋に開かれた窓であることを考えれば、偶然ではありません。 2.今日の北東アジア地域が直面する諸問題に関する日露間の協力 日本と極東ロシアが位置する北東アジア地域は、発展の可能性と混乱の危険を同時に内包する地域です。この地域の繁栄と安定の鍵を握るのは、日米露中の4ヶ国です。この4ヶ国の相互の繋がりを比較すると、日露間の人的・経済的な繋がりが未だ最も弱いということを認めざるを得ません。日露関係の発展・強化は、北東アジア地域の安全保障環境の改善に繋がるものです。私は、極東ロシア地域における北朝鮮問題、非核化協力、防衛交流を始めとする日露の幅広い分野の協力は、北東アジア地域の主要な安定要因になると考えます。
3.我が国と極東の間の経済分野における協力の現状と展望 また、経済的側面を見ても、我が国と極東ロシアは相互補完関係にあり、その協力は大きな潜在力を有しています。極東・シベリアには豊富な天然資源があり、我が国には豊富な資金力、技術力が存在します。そして我が国と極東シベリアは距離的に近接しており、輸送コストの面で優位性は高いと考えられます。そうした条件下で、現在両国間で進められているプロジェクト、あるいは今後進めようとしているプロジェクトで協力していくことを通じて両国の経済関係が持つ潜在力が大きく開花するものと信じます。
4.日露関係の完全正常化の必要性 日露関係が飛躍的に発展する潜在性を有しているにもかかわらず、満足のいくレベルに達していない最大の原因は、両国間に平和条約が締結されていないということです。これまで述べてきたような大きな可能性を持ち、既にその一部が実現している日本とロシアの両国の間に、未だに平和条約が締結されておらず、国際的に承認された国境すら存在しないこと、即ちその関係が完全に正常化していないことは、極めて残念な現実です。そしてこのことが、これまで本来直ぐ近くに住む両国国民の足枷となり、真の関係発展のための障害となってきたのです。まさにこうした考え方から、両国首脳により採択された「日露行動計画」において日露関係を幅広い分野に亘り発展させていく中で、平和条約交渉についても進展させていくことが謳われているのです。 領土問題の解決は決して簡単ではありませんが、この問題は日露両国が正面から解決に取り組まなくてはならない重要な問題です。四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することにより日露関係を質的に新たなレベルに引き上げ、日露新時代を切り開きたい、というのが私の強い希望です。 20世紀の初めに既に「アジアの国々との有機的な繋がりは、我々の将来の保証になる。」と述べ、極東ロシアの役割をそこに見いだしていたロシアの識者がいたと聞いています。日露関係はその「有機的な繋がり」の中でも最も強固な関係の一つであるべきであり、現下の国際情勢は日露関係がそうなることを既に求めています。経済、防衛、文化、芸術など、それぞれの分野で日本と関わりのある活動をしておられる方々にも、これから日本に巡り会われる方々にも、日露関係の持つこうした意義を正確に認識していただきたいと思います。ロシア国民の英知を、私は信じています。 ご静聴有り難うございました。 スパシーバ |
川口外務大臣演説 / 平成15年 / 目次 |
| ||||||||||
![]() |