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演説

古田肇 外務省経済協力局長 演説


国連開発計画(UNDP)主催国際シンポジウム
ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて:アジアの現状と課題
基調講演「ミレニアム開発目標と国際社会の課題」

  平成14年10月9日
於:国連大学


 先の10月1日にアナン国連事務総長が、ミレニアム開発目標(MDGs)の進捗状況に関して記者会見を行い全世界に対してMDGsの達成の重要性を訴え、各国の更なる努力を促した直後に、ここ東京においてマロック・ブラウン総裁を迎えてMDGsに関するシンポジウムが開催されることは誠に時宜を得たものであると考えております。また、本日外務省を代表しまして本シンポジウムの開催につき祝意を述べる機会と、MDGsに関する我が国の取り組みに関して紹介させていただく機会を得たことに感謝申し上げます。
 グローバル化が進む中、国際社会は種々の開発課題に取り組んでいますが、我が国はUNDPがこれまで途上国の支援に果たしてきた役割を高く評価しております。また、最近のアフガニスタン復興支援、ネリカ米(New Rice for Africa)の共同研究プロジェクトなどにも見られるように、我が国とUNDPとの間には非常に良好な協力関係が構築されてきました。このような良好な協力関係の中で、我が国はUNDPと共に、今後も共通の目標に向けて、緊密な連携の下途上国の開発問題に取り組んでいきたいと考えております。その共通の目標の一つとして、国際社会が合意したミレニアム開発目標があると考えております。
 2000年のミレニアム国連総会で合意されたミレニアム開発目標は、人類の将来の繁栄に向けての基礎的条件を整えるための重要な国際開発目標であり、その達成のため、被援助国、援助国、国際機関が一致団結して取り組むことが急務となっています。このような状況下において、途上国の開発活動の中で深い知見と経験を有するUNDPが国連の中でMDGsを推進するキャンペーンの主導的役割及びその達成に向けた進捗状況をモニタリングする役割を担っております。我が国はこうしたUNDPの役割と活動、特にMDGsの国別評価報告書の策定に対する途上国支援を高く評価しており、今後UNDPがMDGsのモニタリングにおいても中心的役割を担っていくことを支持しております。MDGsに関するUNDPの活動に対する具体的協力として、我が国としては、来年度、MDGsの進捗状況に関する日本とUNDPの共同の研究及び広報等を行うための予算要求を行っているところであります。

 このような認識の下、我が国は、MDGsの達成を我が国の経済協力の目的の重要な柱の一つと位置づけ、既に様々な取組を開始しています。本日は、それらの取組について御紹介したいと思います。

 まず第一に、教育、保健、水、農業といった「基礎生活分野」の取組は、MDGsの根幹を成す重要な要素と言えます。
 教育については、今年6月、小泉総理は、「成長のための基礎教育イニシアティヴ」を発表し、低所得国に対して教育分野で今後5年間で約20億ドル以上の支援を実施していくことを決定しました。
 また、保健については、2000年の沖縄サミットの際に表明した5年間で30億ドルの感染症対策イニシアティブを引き続き着実に実施していくとともに、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」においても我が国は同基金に2億ドルの拠出意図を表明し、引き続き中心的役割を果たしていく考えです。
 水については、安全かつ安定的な水供給、衛生施設設備を支援していきます。我が国は、過去5年間で4000万人以上に対して飲料水の提供及び衛生的な下水道の普及を支援しており、今後もこのような努力を継続する方針です。また、川口外務大臣はパウエル米国国務長官とともに、ヨハネスブルグにおいて、水・衛生分野における新たなパートナーシップとして水協力イニシアティブ 「Clean Water for People(きれいな水を人々へ)」を共同で発表したところです。さらに、来年3月には、京都、滋賀、大阪にて第3回世界水フォーラムと閣僚級国際会議を開催し、水問題に関する国際的議論の進展に大きく貢献していく考えです。
 農業に関しては、世界で貧困状況が最も深刻なアフリカに真の「緑の革命」起こしたいと考えています。冒頭申し上げた「ネリカ米」の開発・普及に対し、我が国は今後ともUNDPと全面的に協力していく考えです。
 第二に、MDGs達成のためには、開発資金の確保及び貿易が必要不可欠です。
 ODAに関しては、90年代初頭より2000年にかけて我が国は世界最大の貢献を行ってきており、今後も引き続き、主要な役割を担っていく考えです。更に、十分な開発資金を確保するためには、ODAのみならず、途上国の国内資金、海外直接投資等の民間資金、及び貿易などのあらゆる資金を動員し、更に貿易を強力に促進し、これらをうまく組み合わせることが重要です。
 その意味で貿易に関しては、今年8月に発表された「小泉構想」の中で、第10回UNCTAD総会で行ったコミットメントを拡充し、本年の持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)において貿易関連人材育成を2000年から5年間で4500人に対して行うことを表明しました。また、昨年4月、後発開発途上国(LDC)産品に対する市場アクセスの改善を行い、その結果、鉱工業製品についてはほぼ100%に近い品目について無税・無枠の市場アクセスを提供できるようになりました。今後とも、すべての後発開発途上国産品に対する無税・無枠の市場アクセスの供与という目標に向け努力してまいります。

 第三に、MDGsは、人材と資金がそろえば、自然に達成できるものではありません。途上国のオーナーシップとそれを支える国際社会のパートナーシップが不可欠です。
 これに関し、我が国は、90年代より、アフリカにおけるオーナーシップとパートナーシップの実現を目的とし、「アフリカ開発会議(TICAD)」プロセスを推進してきましたが、これはアフリカ問題への日本の継続的取組、そして、国際社会の中でアフリカと共に歩もうとする日本の意思を象徴するものです。

 また、本シンポジウムのテーマであるアジアについて申し上げれば、我が国は今年、「東アジア開発イニシアティブ(IDEA:Initiative for Development in East Asia)」を打ち出しました。  80年代における世銀・IMF型支援が必ずしも功を奏しなかったと思われることを背景として、教育、保健等の社会セクターを中心に据えた支援が貧困削減のための主要な手段であるとの考え方が強まっています。
 他方、我が国は、貧困削減のためには経済成長の達成が不可欠であると考え、社会セクター支援のみならず、インフラ開発等の経済成長に資する支援を重視し、途上国の開発に向けた取り組みを支えてきました。こうしたアプローチに従って我が国が重点的に開発援助を行ってきたのが、東アジア地域であります。この地域が過去10年間で6%というめざましい経済成長をとげるとともに、一人当たりの所得が1日1ドル以下のいわゆる「絶対貧困人口」が10年前と比べて約半減していることは、東アジア型開発アプローチがこの地域の成長とMDGs達成に向けた前進に少なからず貢献していることを客観的に表している一つの証左と考えます。
 この考え方に基づき我が国は、本年1月、東アジアが実践した、持続的成長に向けた開発アプローチと、これを支えるODAの効果的活用方法を改めて検討し、地域の共通課題としての開発議論を促進するための「東アジア開発イニシアティブ(IDEA)」を提唱しました。8月には閣僚会合を東京で開催しましたが、そこでの一つの結論は、東アジア地域における、所得水準、市場経済化の段階、社会・自然状況等の多様性を直視し、異なる開発ニーズに対応する支援・協力が引き続き必要になっているとの認識です。これらの認識をふまえ、我が国は、各国の開発ニーズ・要望を踏まえた二国間支援を行うとともに、域内協力や南南協力の促進にも積極的に協力していこうと思います。
 同時に、経済成長を実現しながら貧困削減を進めてきた東アジアの開発知見や経験を世界と積極的に共有し、国際協調を深めていくべきとの結論を得ました。このような東アジア型の開発アプローチは、アフリカをはじめ、引き続き深刻な貧困にあえぎ、MDGs達成に向けた努力が急務となっている地域にとって一つの方途を示すのではないかと考えます。つまり、そのような地域においても、MDGsに表された各国の基礎的条件の整備を行いながら、同時に持続可能な経済成長を通じた一層の開発に向けて、オーナーシップ及びグローバルなパートナーシップを基本原則として自ら道を切り拓いていくことが可能となるのではないかと考えます。

 最後に本シンポジウムがMDGs達成に向けた議論を深め、戦略づくりに大きく貢献することを祈念すると共に、我が国とUNDPとのパートナーシップがあらゆる分野で発展していくことを期待しております。

 ご静聴ありがとうございました。


政府代表・幹部・大使・総領事 / 平成14年 / 目次


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