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演説
川口外務大臣演説

全国都道府県知事会議における川口外務大臣挨拶

平成14年10月8日


目次


1.序

2.現在の喫緊の課題

(1)日朝関係
(2)イラクを巡る情勢

3.主要国・地域との関係

(1)日米関係
(2)日中関係
(3)日韓関係
(4)日露関係
(5)日ASEAN関係

4.ODA

5.国際交流

6.結び



 全国都道府県知事会議の開催にあたり、日本外交の主要課題の中で、特に全国都道府県知事の皆様と関係の深いと考えられる項目を中心に述べたいと思います。

1.序

 外交は、国民の皆様の理解と支持がなければ進めていくことができません。そのため、私は、度重なる不祥事で損なわれた外務省に対する国民の皆様の信頼を、改革を断行することによって回復することを最優先の課題として取り組んできました。これからは、改革の成果を発揮させて、国民の皆様の期待に十分応えられるような力強い外交を実施していきたいと思っています。
 外交の目的は、国と国民の安全と繁栄を確保することにあります。そのためには、国際社会全体の平和・安定と繁栄を実現することが不可欠です。政府としては、各国・地域との関係強化に努めるとともに、日本外交の重要な手段であるODAの実施等を通じて、これら課題の解決に向けた取り組みに全力を尽くしています。地方公共団体、NGOの皆様と力を合わせることができれば、日本全体としてより大きな成果をあげることができるでしょう。国境を越えた経済・社会関係が緊密化した現在、政府以外の様々な主体が果たす国際的役割が益々重要となっています。外交を進めるにあたっても、全国都道府県知事の皆様から一層のご協力、ご支援が必要となっています。

2.現在の喫緊の課題

(1) 日朝関係
 9月17日、小泉首相が金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長と平壌で会談を行いました。双方は日朝平壌宣言により、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を示しました。拉致問題に対しては、ご家族の要望も十分踏まえながら、生存者とご家族の面会、生存者の帰国等を早急に実現し、亡くなられたとされる方々に関する事実関係の解明を含む真相究明を行い、それを踏まえて、日本としての対応を国交正常化に向けたプロセスの中で検討していきたいと考えています。

(2) イラクを巡る情勢
 イラクを巡る情勢が再び国際社会の注目を集めています。世界各国は力を合わせ、大量破壊兵器の拡散防止に取り組まなくてはなりません。イラクの大量破壊兵器を巡る問題は国際社会にとっての大きな懸念です。テロに対する闘いは成功を収めてきましたが、それは、国際社会が連帯と協力で対応したからであり、国際社会は、このような連帯と協調を維持し、毅然とした態度で、外交的な働きかけを重ねていかなくてはなりません。イラクによる査察受け入れと大量破壊兵器の廃棄を含む関連安保理決議が実際に履行されるよう、日本としても、国際社会と協力しつつ取り組んでいきます。


3.主要国・地域との関係

 その他の主要国・地域との関係の中で、特に都道府県知事の皆様からのご協力が重要なものを中心に述べると、以下の通りです。

(1) 日米関係
 日本が国際社会の諸課題への取り組みを進めるにあたっては、各国・地域との関係を強化することが不可欠です。中でも日米関係は日本外交の基軸であり、日米同盟関係はアジア太平洋のみならず世界の平和と安定の礎となっています。また、先日、小泉総理及び私が訪米した際に、米国政府要人との会談等においても確認したように、日米両国は、テロ、地域紛争、大量破壊兵器の拡散問題といった国際社会の諸問題に対して協力して取り組んでいます。2003年はペリー来航150周年、2004年は日米和親条約署名150周年にあたりますが、かつてないほど良好な今日の日米間の友好関係を更に発展させていきたいと考えています。

(2) 日中関係
 本年は日中国交正常化30周年にあたり、現在、各都道府県の御支援も得つつ、「日本年」「中国年」活動をはじめとする各種交流事業が数多く実施されています。また、日中間では、現在、地方自治体間で270組以上の友好関係が結ばれており、地方レベルでの交流も大変活発に行われています。こうした国民レベルの交流を更に充実させ、両国国民の間の相互理解・相互信頼を増進することこそが、日中関係の基盤を確固たるものにすることにつながると考えています。

(3) 日韓関係
 日韓両国の歴史的な共同作業として行われたワールドカップ・サッカー大会の成功、日韓国民交流年の行事などを通じ、本年、日韓関係は一層高いレベルへと発展しました。ワールドカップで醸成された日韓友好の気運を維持し、両国関係を更に発展させることが重要です。両国民間の交流を一層拡大し、協力を深めていくための共同プロジェクト推進、経済面での協力関係強化を図る日韓自由貿易地域(FTA)の検討などはもちろん、東アジア及び世界の安定と繁栄のために韓国との協力を強化していきたいと思います。

(4) 日露関係
 ロシアについては、平和条約の締結、経済分野の協力、国際舞台における協力という3つの課題を同時に進行させるべく、幅広い分野で両国関係の進展に努めていきます。平和条約締結交渉については、先般、私自身の目で北方領土を視察し、元島民の方々からもお話を伺って決意を新たにしたところです。これまでの成果を踏まえ、北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結するとの一貫した方針の下、交渉に取り組む考えです。私は10月12日から14日に訪露し、イワノフ外相と平和条約問題について協議する予定です。また、来年1月に予定されている総理訪露の際に作成する予定の「日露行動計画」の具体的内容を含め、幅広い分野について協議する予定です。さらに、明年は「ロシアにおける日本年」であり、ロシア各地で種々の文化紹介行事が実施される予定です。地方自治体の皆様に積極的に参加して頂き、これを機会に地方レベルにおいて日露間の文化交流がさらに活発化することを期待しています。

(5) 日ASEAN関係
 本年1月、小泉総理大臣は、来年を「日本ASEAN交流年」として、文化のみならず政治、経済、教育、科学技術等幅広い分野の交流を実施することを提案し、ASEAN諸国の賛同と支持を得ました。2003年を幅広い国民的な交流拡大の契機とするには、国際交流に携わる官民の機関・団体のご支援、ご参加が不可欠です。


4.ODA

 開発途上国に対する政府開発援助(ODA)は、日本が国際社会の課題の解決に向けて取り組む際の重要な手段の一つですが、ODAを推進していくに当たっては、国民の理解と支持を得ていくことが不可欠です。そのためにもODA改革を積極的に進め、透明性や効率性を高めていくことが重要だと考えています。
 このような問題意識を基に、外務省は、「ODA改革・15の具体策」や外務省改革「行動計画」に盛り込まれたODAの効率化、透明化を実施していきます。
 地方に関係する具体策の一つとして、全国各地で定期的に「ODAタウン・ミーティング」を開催していきます。これは、ODAに関する情報提供を通じて国民の理解と支持を得ること、地方との対話の機会を通じて国民の意見を直接かつ幅広く聴取することを目的に行うものです。
 また、平成15年度予算要求においては、ODA推進に地方のイニシアティブをこれまで以上に積極的に活用する地域発信型国際協力を推進することを重点の一つとしています。具体的には、住民参加型の、我が国の地方の経験・資源を活かしたコミュニティ・ビルディングを途上国で展開するモデル事業を積極的に支援していきます。地域の特徴ある国際交流を推進することは、地方の活性化につながり、ひいては日本全体の活性化にも資するものと考えています。これらの施策を実施していくに当たって、地方との対話や連携にも意を用いていきたいと考えます。

5.国際交流

 各国・地域との関係を強化していく上で重要な国際交流は、地方自治体の協力なくしては成り立ちません。本年は、世界最大級の国際イベントである日韓共催ワールドカップ・サッカー大会が日本全国で開催されました。全国各地で参加各国チームのキャンプや全国10の会場で試合が行われ、大会期間中には前年に比べ約7%増の約48万人の外国人が入国しました。この機会を通じて、全国各地で直接、外国の方とサッカーを通しての国際交流が深まり、また、世界各国に「日本」を発信することができたものと思います。
 また、今年で16年目となる「JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招聘事業)」は、40近い国から年間6000人以上の青年を日本に招致し、各地の地方自治体等で、外国語教育の充実を図るとともに、青年交流による地域レベルでの国際交流の促進に大きく貢献してきました。これまで、多くのJETプログラム参加者が、日本での経験を活かし、帰国後、大学院に進学するなどして日本関係の研究者となったり、日本と係わりのある職業に就いています。これらの参加者は、親日家、知日家となり、日本文化の伝搬の役割を果たしてきました。このJETプログラムが高い評価を得てきたのは、地方自治体の方々が、異国の地での生活に不慣れな世界各地からの青年を温かく迎え入れていただいた結果と感謝しています。
 各都道府県にお願いしている旅券発給の件数も、昨年は9月11日の米国同時多発テロ等の影響から減少しましたが、それでも435万冊ほど発給しています。また、国民の方々の利便の向上を目指して都道府県と連携、協力しつつ旅券の電子申請にも取り組んでいます。旅券事務に関する全国都道府県の皆様の御協力に感謝するとともに、今後ともご協力をお願いしたいと思います。
 今日、海外に行かれる方は年間1600万人を越え、3ヶ月以上海外に滞在する長期滞在者も80万人を越えています。さらに、海外に移住された方々、永住者並びに日系人の方々は世界各地に約250万人おられ、現地で大いに活躍をされています。また、外国から日本へ来られる方も年間約530万人に上ります。このように渡航者、入国者数等を見ても、人の交流は着実に進んでいることがわかります。
 こうした中で、海外で思わぬ事故や事件に遭遇する邦人の方も少なくなくありません。こうした方々の支援、保護等のため、在外公館は東京の外務省と一体となって日夜努力しており、国民の皆様の安全な海外渡航の確保に努めています。近年、海外との交流が益々活発化する中で、こうした領事業務は質量ともに増大し続けています。外務省としては、業務体制の一層の整備、強化を図ること等を通じて、国民の皆様の海外での活動や生活を安全で実り多いものとするためにお役に立てるよう、今後とも努力していきます。
 今日、外国人による犯罪の増加、在日外国人の医療や教育の問題、生活習慣の違いによる地域コミュニティとの軋轢等、国際的な人の往来に伴うマイナス面も生じてきています。こうした多岐にわたる問題を乗り越え、「共生」を実現していくためには、これらの問題に寛容かつ真摯に対応していくと同時に、相互理解・相互信頼を深めていくことが重要です。そのためには、お互いに異なる歴史や文化を持つ人々の間の交流の機会を増やしていくことが大切であり、これには国のみならず、直接、国際交流の前線で活躍されている地方自治体や地域コミュニティの皆様の積極的な取り組みが重要です。

6.結び

 冒頭で述べた通り、外交を進めていく上で、常に国民の皆様の目線を忘れず、国民の皆様への説明責任を果たしていくことが必要であり、そのため、私は、自らが参加する外務省タウンミーティングを始めました。これまでに東京、大阪、札幌で開催していますが、今後も全国各地でこのタウンミーティングを続けていく考えです。地方自治体の皆様と一層の連携・協力関係を築いていきたいと考えています。今後とも都道府県知事の皆様方の更なるご支援、ご協力をお願い致します。


川口外務大臣演説 / 平成14年 / 目次


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