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小泉総理大臣演説
「21世紀の日米同盟:3つの挑戦」
1 序 ご列席の皆様 今日、お話しする機会を与えて下さった外交評議会と時事通信に感謝いたします。 来年は、250年に亘る日本の鎖国に終止符を打つこととなった、ペリー提督の日本来航から150周年にあたります。ここに、日米の公式な交流関係が始まりました。 その後、日米関係は、第二次世界大戦を含め、幾多の試練を経てきました。私の故郷でありアジア最大の米海軍施設がある横須賀は、ペリー提督が来航したところで、私の選挙区内にあります。横須賀では、住民による基地への抗議運動もありました。しかし、私は、日米関係は国益に最も適い、国際社会にとっても重要であると一貫して主張してきました。わずか半世紀前に戦火さえ交えた二つの国は、今日、日米安保条約に基づき、アジア太平洋のみならず世界の平和と繁栄の礎であり、世界に範となる同盟関係を築き上げました。 この木曜日、私はブッシュ大統領と会談します。私は昨年初めてお会いして以来、ブッシュ大統領には強い親しみと信頼を感じています。私と大統領の友情は日米二国間の関係を象徴するものと信じます。日米関係は、今日、かつてないほど緊密です。 今日、私は、21世紀の日米同盟が取り組むべき3つの挑戦について述べたいと思います。第一に、ポスト9月11日における我々の安全。第二に、グローバル化の時代における我々の繁栄。第三に、特に、アジア太平洋の安定と繁栄です。問題はこうした挑戦において日米がどのように協力すべきかです。 2 テロ、地域紛争、大量破壊兵器 明日、私は9.11のテロ攻撃犠牲者の追悼式典に出席します。この悲惨な生命の損失に対する心からの追悼の意をあらためて表明したいと思います。事件の後、東京や沖縄をはじめ、たくさんの日本の小中学校から、ニューヨークの子供達に、平和を象徴する千羽鶴が送られました。全ての日本人は、この悲劇に見舞われた家族の方々に、何時か心の平和が戻り、心の痛みが和らぐことを願っています。また、この悲劇における多くの英雄たち、―消防士、警察官、テロリストと闘った勇敢な乗客たち、―これらの人々への私の称賛の気持ちをお伝えしたいと思います。 9.11の事件は、多くの家族を破壊し、世界のあり方に関する我々の基本認識を大きく変えました。9.11は、我々の価値、市民、市民社会を如何に防衛するのかという課題を突きつけています。米国のリーダーシップの下、国際社会はテロの脅威に対して連帯して立ち上がりました。日本も、支援のために前例のない措置をとりました。新規立法を行い、輸送協力のために自衛隊機を、インド洋に於ける米英艦船への給油のために自衛隊船舶を派遣しました。米国と日本は、東京で行われたアフガニスタン復興支援国際会議のイニシアティブを取りました。アフガンの戦場を「国」に変えねばなりません。我々はこの困難な課題に直面しています。 また、頻発する地域紛争の予防や解決のための取り組みも重要です。米国は中東和平を進め、インド・パキスタン間の緊張を和らげようとしています。日本も、パレスチナ改革支援、インド、パキスタン両国に対する働きかけなど、同じ分野で積極的な努力を行っています。 また、世界各国は力を合わせ、大量破壊兵器の拡散防止に立ち向かわなくてはなりません。イラクによる査察の拒否は国際社会にとっての大きな懸念です。テロに対する闘いは成功を収めてきましたが、国際社会が連帯と協力で対応したからです。日本としては、このような連帯と協調が維持されるべきと強く信じます。 国際社会は、毅然とした態度で、外交的な働きかけを重ねねばなりません。イラクは、国連安保理決議に従わねばなりません。直ちに無条件で国連の査察を受け入れ、大量破壊兵器を廃棄すべきです。この働きかけにおいて、我が国としても米国と共に取り組んで行きます。 3 世界の繁栄 次に世界の繁栄について述べます。我々は、経済格差の拡大や環境破壊といった困難な問題に直面しています。現在60億人の世界人口は、2030年には80億となり、2050年には100億に迫るとの予測があります。二つの主要な経済国家として、主要な援助国として、米国と日本は、特別の責任を背負っています。国際社会の繁栄に対する責任です。この責任を果たすためには、日米両国の経済がしっかりしていることが肝要です。 米国では、投資家が米国企業の財務的信頼性に疑問を抱き、株式市場に不安心理が拡がりましたが、政府と企業は信頼回復のための方策を打ち出しました。 日本には、潜在的な成長力は十分にあります。今、小泉内閣を緊縮と批判する人がいます。しかし、日本はこの10年間、公共事業を中心とする景気対策を行ってきました。この結果、日本の財政は税収が50兆円しかないのに国債を30兆円も発行するに至りました。放漫と批判されるならともかく、どうしてこれが「緊縮」でしょうか。私は、やるべき構造改革を行わなければ、経済の再生は難しいと考えています。このため、小泉内閣は、発足以来、「聖域なき構造改革」に全力で取り組んできています。また、経済活性化戦略、不良債権処理を始めとする金融システム改革、税制改革及び歳出改革を推進しています。特に不良債権処理では、RCC(整理回収機構)が米国のウォールストリートの金融機関と共同してその処理や企業再生に積極的に取り組んでいます。最近の日本経済は、依然厳しい状況にありますが、一部に持ち直しの動きも見られるなど、着実に改革の成果が現れてきています。 具体的には、「民間にできることは民間に」との観点から、特殊法人の廃止・民営化を決定しました。また、郵政事業につきましても、来年4月に公社に移行し、将来の民営化への準備を進めていきます。これら民営化は財政投融資制度の改革、特殊法人の改革と一体として日本の公的システムの改革を目指すもので、財政構造改革、民間金融の活性化など、日本経済システム全体の改革に繋がっていくものです。さらに、民間の活力を引き出すよう規制緩和を推進し、外国投資に魅力的な環境整備を図ります。 今後とも、「改革なくして成長なし」との決意の下、活力に溢れる民間部門と簡素で効率的な政府を目指した構造改革を強力かつ迅速に遂行し、民間需要主導の持続的経済成長を実現していきたいと考えています。 世界経済の13%を占める日本経済が元気になること、それこそが日本がなすべき最大の国際貢献です。私は、日本は、米国と共に、国際社会の繁栄のために、重要な役割を果たすと信じます。 4 アジア太平洋 最後に、アジア太平洋に触れたいと思います。ブッシュ大統領は、2月の訪日時、国会における演説でアジア太平洋地域における日米協力の強化を訴えました。私も全く同意いたします。日米同盟は、この地域の安定に重要な役割を引き続き果たさねばなりません。その上で、アジア太平洋地域を、ヒト、モノ、資本、情報が自由に行き来する開かれた地域とするための努力を強化する必要があります。 東アジアの安定のためには、朝鮮半島の緊張緩和が不可欠です。我が国は、国際社会の責任ある一員として、朝鮮半島の緊張緩和に向けた国際的な努力に積極的に貢献していきます。 日朝関係は、戦後半世紀も国交のない不正常な関係が続いており、核やミサイル等の安全保障上の問題や日本国民が北朝鮮に拉致された疑いのある人道上の問題が未解決です。これら懸案の解決を図り、関係を正常化することは、政府の歴史的責務です。同時に、国交正常化は地域に平和と安定を創り出すものでなければなりません。そのため、北朝鮮が懸案解決に前向きに対応し、関係国と対話を促進することが不可欠です。 私は、これまでも北朝鮮が建設的な対話を通じて国際社会への関与を深めることの重要性を訴えてきましたが、最近、北朝鮮は、日米韓三国との対話に前向きな姿勢を示しつつあります。北朝鮮の動向は引き続き注意深く見極めることが重要ですが、我々は、今、北朝鮮との関係を改善させる重要な機会に直面しています。 私は、政治的意思をもって首脳同士が話し合うことが重要と考え、日本の総理として初めて訪朝し、金総書記と会談することとしました。朝鮮半島の緊張緩和のため、北朝鮮の誠意ある対応を強く求める考えです。ブッシュ大統領や金大中大統領、さらにはプーチン・ロシア大統領からも直接力強い支持を頂きました。中国政府も歓迎と支持を表明しています。私は、今回の訪朝が懸案解決と朝鮮半島の緊張緩和に向けた重要な一歩となることを強く期待しています。 私は、1月、シンガポールに於いて、日・ASEAN関係を基礎として、東アジア地域協力を拡大し「共に歩み共に進むコミュニティ」を構築することを訴えました。このコミュニティは、域外との密接な連携の上に成り立ち、より広い地域に貢献するものです。経済面では、日本は1月にシンガポールと初めて経済連携協定に署名しました。これを良い例として、「日ASEAN包括的経済連携構想」に基づき、日・ASEAN間で幅広い分野における経済連携の強化に取り組んでいます。また、韓国との経済連携の検討を加速化させ、メキシコとの検討も進めています。こうした様々な経済連携構築の試みは、国境を越えたビジネス・チャンスを広げ、アジア太平洋全体の繁栄に貢献するでしょう。 また、中国は政治経済面において存在感を増しつつあります。中国を、脅威と見る向きもありますが、私はそうは思いません。中国のダイナミックな経済発展は、世界にとって新しい時代の挑戦であり経済的な好機です。現在、中国は改革・開放の推進に取り組んでいます。WTO加盟に見られるように国際社会でより大きな役割を果たしつつあります。これらは中国自身にとっても大きな挑戦です。中国が国際社会の建設的なメンバーとなるよう、中国の努力を奨励、支援する必要があります。 5 結語 現在の日米関係は、かつてないほど、良好で緊密です。相互理解も益々深まっています。50年前、米国人が日本の国技相撲の横綱になることを誰が想像したでしょう。日本人が大リーグの首位打者になることを誰が想像できたでしょうか。 しかし、我々は、今日の日米の緊密な関係の背景には、交流や相互理解に尽くした多くの米国人、日本人の努力があったことを忘れてはなりません。私は、ファビアン・バワーズ氏という日本文化に深い理解を示した米国人に触れたいと思います。戦後、占領軍は、封建的、反民主的との理由で、日本の伝統芸能である歌舞伎の多くの題目の上演を禁止しました。マッカーサー将軍の副官であったバワーズ氏は、歌舞伎は「文化」であると主張し、努力して上演禁止を解きました。これは、文化の多様性を認め、異なる文化を理解し受け入れる、米国人の寛容さと柔軟な精神を象徴するものです。多数の日本人、特に、歌舞伎ファンである私は、彼に深く感謝しています。 日米関係を支えるのは両国民個人の間の友情と信頼です。日米関係の発展のためには、未来を担う、日米両国の次の世代を育てねばなりません。そのためには、草の根レベルを含む、人対人(people-to-people)の交流が重要です。例えば、日本には、JETプログラムの下、地方で英語を教える2700人をはじめ、数多くの米国人青年が滞在しています。また、米国には、日本から多数の留学生や若者が渡っています。こうした多くの日米の若者が太平洋を自由に行き交い、日米関係の本当の地固めを行っているのです。 皆様。ペリー提督の時代から、我々は、幾多の困難を乗り越えて、今日の友好関係を築き上げました。これからも、日米両国のために、世界のために、共に歩んでいこうではありませんか。 ご静聴ありがとうございました。 |
小泉総理大臣演説 / 平成14年 / 目次 |
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