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演説

国連の場における演説

第56回国連総会本会議議題20(人道支援調整強化)
に関する佐藤大使演説

平成13年11月26日

 議長、

 まず始めに、日本政府を代表して、世界各地で困難な状況の下で人道支援活動に従事している国連及びNGOの関係者に対して深甚なる敬意と感謝の念を表明します。特に、国際職員が国外退去を余儀なくされた後のアフガニスタン国内で、多くの危険を冒しながら人道支援活動を継続してきたアフガニスタンの人々の勇気と使命感は特別の称賛に値します。
 人道支援は、国連の中核的任務の一つであり、かつ紛争や対立の中で、そしてしばしば生命の危険にさらされながら実施する必要もある最も困難な業務です。今般のアフガニスタン内外における人道支援はその端的な例で、国連にとっても大きな試練です。
 このような認識に立って日本政府は、大島賢三人道問題担当事務次長を中心に行われるアフガニスタン内外における人道支援諸機関の努力に対し強い支持と協力を提供する方針です。
 日本政府は既にアフガニスタン難民に対する支援も含めて、パキスタン等の周辺諸国に対する緊急経済支援を進めるとともに、アナン事務総長の呼びかけに応えて国連機関等による難民・避難民支援活動に対して、1億2000万ドルまでの財政支援を行うことを約束しました。また、先週末には、田中眞紀子外務大臣がパキスタンを訪問し、難民キャンプも訪れました。

 議長、

 日本政府は、アフガニスタンに対する人道支援を進めるに当たって、次の三点に十分な考慮が払われることが重要と考えます。
 第一に、人道要員の安全と人道要員の難民や国内避難民との自由な接触の道を確保することが人道支援の成功のために不可欠です。日本政府は、アフガニスタンの全ての勢力に対し、人道要員の安全及び移動の自由の確保を求めるとともに、報復行為を慎み、国際法、就中、人権・国際人道法を厳格に遵守することを求めます。
 また日本政府は、アフガニスタン各派が国連の主導の下にドイツで開かれる暫定政権についての協議に参加する運びになったことを歓迎するとともに、この対話やこれに関連する努力がアフガニスタンの政治的安定につながり、人道支援が円滑に行われるようになることを期待します。
 第二に、人道支援の円滑な実施のためには周辺国の協力が不可欠です。周辺国の中には既に多くのアフガン難民の受け入れに協力してきた国もありますが、それに加えて、アフガニスタンにおける人道援助のために必要な物資の輸送のためにも周辺国の協力が極めて重要です。国際社会はこれらの国々に対する支援を強化する必要があります。日本政府もこれらの国々に対する緊急経済支援を実施しています。
 第三に、人道支援に切れ目なく続けて復旧・復興支援を提供することを確保することが重要です。そのために人道支援の成果を生かす形で復旧・復興を実施できるように、早い段階から復旧・復興支援準備を始める必要があります。また、復興支援は難民や避難民の帰還を促し、兵士の社会復帰を促進することにも役立つものであり、さらに、そのような進歩の展望を示すことがアフガニスタン国民の間に政治的安定に努力する機運を高めることにもつながります。
 日本政府が米国政府とともに、20日にワシントンでアフガニスタン復興支援高級事務レベル会合を開催したのもこのような考え方に基づくものです。なお、この会議において確認されたとおり、日本政府は来年1月後半に日本でアフガニスタンの復興に関する閣僚級会合を開催する方針です。

 議長、

 言うまでもないことながら、世界の他の多くの地域において人道支援がアフガニスタンと同様に深刻かつ緊急に求められています。先ほど、アナン事務総長が発表した25億ドルに上る2002年国連統一アピールが、世界の18の国・地域の3千300万人を対象にしていることはその証左です。西アフリカ、アフリカの角、大湖地域及び中央アフリカや、北コーカサス、南東欧、アジア各地などにおける人道支援活動のために資金を確保することが国際社会の責務です。
 また、アフガニスタン情勢との関連で指摘した人道支援に従事する要員の安全、周辺国を含む地域的な協力、そして人道支援と復旧・復興支援の継続的な取り組みという三点の重要性は、これらのいずれの場合においても、いくら強調してもしすぎることはありません。

 議長、

 自然災害も、同様に重視しなければならない人道上の深刻な問題です。しかも、自然災害は、近年、世界各地でその規模と頻度を増しており、特に途上国においては開発の重大な阻害要因となっています。
 インド西部やエル・サルバドルの大地震、「ヅッド」と呼ばれるモンゴルにおける異常な寒波、中米・カリブ地域のハリケーン、東アジアの台風、世界各地の旱魃や洪水等、この一年間に発生した自然災害だけを取り上げてもその破壊力の大きさは明らかです。
 このような自然災害とこれに伴う人道支援の必要は突然発生します。したがって、緊急事態に効果的に対応するとともに、その被害を最小限にくい止めることを可能とするような備えを平時から整えておくことが重要です。このような見地から日本政府は本年、人道上の緊急事態にかかわる情報を24時間全世界的規模で集約し発信することを可能とするリリーフ・ウェブ事務所の一つを神戸に設置するという人道問題調整事務所(OCHA)の企画を支援しましたが、今後とも、国際防災戦略(ISDR)への支援を始め、こうした分野での協力を強化する方針です。

 議長、

 日本政府は、貧困、環境悪化から、紛争、難民、さらには災害やエイズ等の感染症までの幅広い分野におけるグローバルな課題に取り組むに当たって、人間の安全保障、即ち人々の生存と尊厳を守ることに焦点を当てることを重視してきていますが、人道支援こそこのような人間中心のアプローチが最も必要な分野です。それ故に、日本政府は今後とも、人間の安全保障を重視する観点から、国連諸機関による人道支援活動への協力を強化していく方針です。

 有り難うございました。


国連の場における演説 / 平成13年 / 目次


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