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演説

国連の場における演説

包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議
阿部信泰特命全権大使演説

2001年11月12日
於ニュー・ヨーク
(この演説は英語で行われました。以下はその和文仮訳です。)

英語版はこちら(原文)

議長、
代表の皆様、
ご列席の皆様、

 まずはじめに、9月11日の卑劣なテロ攻撃により、米国をはじめとして世界の多くの国々に愛する家族や友人を残したまま逝かれた犠牲者の方々を深く悼むとともに、残された家族の方々、そして米国民及び米国政府に対して衷心よりお見舞い申し上げます。我が国は、このような残忍極まりない、野蛮なテロ行為を強く非難し、国際社会とともにテロの防止と根絶のために出来うる限りの努力を行っていく決意であります。

議長、

 今回のテロは、人類の発展と繁栄をもたらすべき科学技術が、使われようによっては、文明の破壊者にも利用されることを如実に示しました。科学技術を制御し、人類に大きな破壊と不幸をもたらすことのないようにすることは、次の世代への我々世代の責務であります。

 現在の核不拡散体制は、核エネルギーという技術を制御し、不幸にして人類が作り上げてしまった核兵器の脅威を極小化することを目的として、構築されました。テロリスト組織という悪意ある人々の存在が、現実の脅威となった現在、NPT体制の強化の重要性がますます認識されるべきです。CTBTはNPTを礎とする国際的核不拡散体制を支え、核兵器のない世界を実現するための現実的かつ具体的措置として重要な意義を有するということは広く国際社会の共通認識となっているということを先ず第一に強調したいと思います。

議長、

 CTBTは、主要国が批准に躊躇していることも一因となって、しばらくは発効の見通しがありません。このことをもって、CTBTは最早「死んだ」、との声さえあります。しかし、そうした見方は、大きな間違いです。私は今こそ、CTBTが既に事実上国際社会において果たしている役割を評価すべきであると考えます。

 第一に、CTBTは、全ての核実験を禁止しようという、国際社会の強い願いが具体的な条約の形に結実したものです。国際社会のこうした願いに反し、核実験を強行することは国際社会からの激しい批判と非難に晒されることを意味します。核実験の禁止を国際社会の普遍的な価値観として根付かせた点において、CTBTは重要な役割を果たしています。

 第二に、核実験モラトリアムの重要性であります。1996年にCTBTが国連総会で採択された後に核実験を新たに行った国も含め、現在では核兵器を保有する全ての国が核実験のモラトリアムを宣言しております。私は、これらのモラトリアムを心から歓迎するとともに、CTBT発効までの間、その政策を堅持するように強く訴えます。

 第三に、検証制度の存在であります。密かに行われる核実験を探知する国際監視制度は、CTBTO準備委員会・暫定技術事務局の弛みない努力により、着実に構築されております。新たな国が国際社会に対し秘密裏に核実験を行う可能性は年々低くなっていると言えます。もちろん、この検証制度をも欺く核実験がありうるとの議論も承知しています。しかし、そうした精緻な核実験は初めて核実験を試みる国のなせるところではありません。高い検証能力を有する国際監視制度は、現実に、新たな核実験を抑止する具体的手段となりつつあるのです。我が国は、暫定技術事務局の努力に対し、今後とも惜しみない支援を行って参ります。

 こうした考えにたって、我が国は、1999年10月にウィーンで開催された先の発効促進会議で議長を務めた後も、「調整国」として、CTBTの発効促進のために格別の努力をして参りました。我が国は、あらゆる機会を捉えてCTBTの早期署名・批准を関係国に呼びかけてきており、外務大臣も、7月に開催されたG8外相会合やアセアン地域フォーラム(ARF)閣僚会合などの場においてCTBT早期発効を参加各国の外相に広く訴えました。また、この2年間に、数多くの総理親書や外務大臣書簡を発出し、各国に対してCTBT早期発効の重要性を訴えました。本年8月には、田中外務大臣より未批准・未署名の発効要件国12ヶ国の外務大臣に宛てて書簡を発出した他、66ヶ国に対して早期署名・批准を働きかけ、勇気づけられる回答も幾つかの国より寄せられています。また、我が国が本年の国連総会第一委員会に提出し、今月6日に国際社会の圧倒的多数の支持を得て採択された核軍縮決議案の中でも、CTBTの早期発効の重要性を強く訴えているところです。

議長、

 核実験の禁止はとりわけ、唯一の被爆国としてのわが国国民の強い願いであります。これまで核実験が地球のどこかで行われるたびに、わが国国民はあの原爆の惨禍を否応なしに想起させられました。核実験をこれ以上繰り返さず、また核兵器をこの世界から廃絶する第一歩として、CTBTはわが国国民にとって「核軍縮の礎石」とでも言うべき意義を有しています。わが国は、こうした国民の強い願いを基に、CTBTの早期発効に向けた努力を継続していくつもりです。

 20世紀は発展の世紀でありましたが戦争の世紀でもありました。核兵器の開発競争が激しく進められ、そのための核実験も膨大な回数行われてきました。これは、人々の心に潜む不信感を前提に、我々の安全保障を核兵器をはじめとする武器に頼るという「武器の文化」の中に生きてきた証でもあります。21世紀という新しい世紀を迎えて、我々は新しい考え方に立って、平和と安全を構築していくことを決意し、構想する時期に来たと痛感します。国際社会は、「平和の文化」を現実的かつ漸進的に築く努力を続けていく必要があります。CTBTこそは、そのアプローチに適う重要な第一歩であるということを訴えて、私の演説を終わります。


国連の場における演説 / 平成13年 / 目次


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