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演説

国連の場における演説

第56回国連総会(文明間の対話国連特別会合)における
佐藤行雄国際連合日本政府代表部大使演説

平成13年11月8日

 議長、

 まず最初に、日本政府を代表してこの「文明間の対話」を提唱されたイラン・イスラム共和国のハタミ大統領に深甚なる敬意を表します。また、この度、「分裂を越えて」と題する書籍をまとめられたピコ事務総長個人代表及び賢人グループの皆様の御努力に感謝いたします。この書籍はこの国連年の具体的な成果の一つです。

 議長、

 文明間対話国際年は歴史的な意義を有する画期的な試みです。それは、世界中の国々の人々に相互理解と寛容の精神に基づく対話を通じて平和と共生を求めることを促しました。それだけに、9月11日の残忍なテロ攻撃がテロリズムという文明に対するもう一つの脅威の持つ力を最も過酷な形で我々に知らしめたことは、最も皮肉なことと云わなければなりません。国際社会はこのようなテロ行為をなくすために協力していかなければなりません。その意味で国連総会で171名の代表が一致してテロリズムを批判し、その防止と撲滅の必要性を強調したことは大変心強いことです。

 同時に、我々が対決するのはテロリストであり、ムスリムやイスラム諸国、アラブ諸国でないということは、いくら強調してもし過ぎることはありません。

 議長、

 文明間の対話国連年である本年1月に、日本政府は、当時の河野洋平外務大臣のリーダーシップの下で、文明間の対話を促進するための努力の一環として、イスラム諸国との相互理解促進を目的とする新しいイニシャティヴを打ち出し、イスラムについての理解を深め、また、日本とイスラム諸国間の「知識人ネットワーク」を構築するための新たな努力を重ねてきました。その結果として来年の3月には、バハレーンで、「知識人ネットワーク」セミナーを開催する予定です。

 日本政府はまた3月に、各国から若者を東京に招待し、「文明間の対話ー紛争の世紀から共生の世紀へ」というテーマで地球規模の問題について討論を行い、その報告書を国連事務総長に提出しました。

 議長、

 私は本日、こうした取り組みに照らして文明間の対話についての日本政府の考えを述べたいと思います。

 歴史的に見れば今日の世界は、あらゆる地域において行われた文明間の交流の結果だと言えます。そのような交流に伴って一時的には衝突が起きることもありましたが、異なった文明間の交流がお互いを触発し、相互にその資質を高め合ってきたことは疑いを容れません。アジアの東端に位置する日本は、長い歴史の過程で様々な文明の流入を受け入れてきました。したがって、われわれは、文明間の交流の重要性がよく理解できます。我々は自らの歴史的体験に基づいて文明間の交流から積極的な成果を生み出すためには、異なった宗教、文化、生活習慣等に対する理解とそれを受け入れる寛容さが必要であることを、われわれは自らの歴史的体験に基づいて強く認識しています。

 議長、

 異なった文明の間でその優位を競うのではなく、文明間の対話と交流を通じ、お互いの相違点を理解し、お互いに尊重し合うことが、今日改めて重要になっています。
 グローバリゼーションの進展に伴い、モノ、資本、情報そして人がかつてない程の早さと到達力をもって動くようになった結果、異なった文明の間の接触が極めて短時間の間に、かつ関係する社会全体を巻き込む形で起きるようになってきました。グローバリゼーションの進展はまた、社会に対し多くの恩恵をもたらすと同時に、社会の中に様々な格差を生み、その結果として、新しく入って来る考え方や文化、習慣に対する受け止め方を複雑なものにしています。その結果時に、人々の内に異なる文明に対する不寛容な態度を生み、紛争を起こす結果も生んでいます。

 しかし、グローバリゼーションは止めがたい一つの現実です。それだけに、日本政府としては、人々がこの事実を認めた上で、お互いの信ずる宗教、お互いが大切にしている文化や習慣を理解し、尊重し合うことが重要であると考えます。この認識にたってわれわれは、人の交流、特に世界の将来についての責任を担う若い人達の間の交流を促進することが何よりも大事だと考えています。

 様々な文明についての知識の普及も大事です。しかしより根本的な問題として、世界中の人達が自分と異なった地域に住み人種、宗教、文化や習慣を異にする人達について、その人達も同じ人間であるという認識を持つことが大事であり、人的交流はそのような認識を深めるために不可欠です。

 議長、

 国連ミレニアム宣言は、21世紀の国際関係にとって寛容が必要不可欠であること、すなわち、人間は、信条、文化、言語の多様性についてお互いに尊重し合わなければならず、そしてそのために平和の文化及び全ての文明の間の対話を積極的に促進すべきであることを謳っています。

 国連加盟国の全ての首脳が賛同したこの目標を達成することがわれわれの責任です。
 この国連年はそのために重要な機会を提供してくれました。しかし、われわれは今後さらに、この国連年の成果を基礎にして文明間の対話、そして交流を拡大すべく、相協力して努力を払い続けていかなくてはなりません。
 そのような認識にたって日本政府も、文明間の対話と交流の一層の推進のために出来る限りの努力を行っていく決意であることを申し上げて、私のステートメントを終わりたいと思います。

 ありがとうございました。


国連の場における演説 / 平成13年 / 目次


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