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国連の場における演説
第56回国連総会における佐藤行雄国連代表部大使の演説 平成13年10月30日 議長、まず初めに、前国連総会議長ハッリ・ホルケリ閣下が安保理改革に関し発揮された指導力に感謝の念を表します。また、包括的な報告書を準備されたホルケリ前議長とドゥ・サラム・スリランカ大使とインガルフソン・アイスランド大使の御努力に対しても、感謝の念を表します。 議長、 我々は今、国際政治における新たな大きな変化を経験しつつあります。9月1日に発生した米国に対するテロ攻撃を契機にして、国連加盟国のほとんど全てが今回のテロ行為を非難し、この事態の責任者に法の裁きを与えることを国際政治の優先課題として様々な協力を展開していることは、国際協力の新しい傾向を象徴しています。 テロ行為自体は新しいことではありません。しかし9月1日に起きたことは、その手段の残忍さと犠牲の大きさによって、テロリズムの脅威をなくすことが国際政治の喫緊の課題であることを極めて過酷な形で示しました。それ故に世界各国がテロ撲滅という共通の目的のために結集したのです。171名の代表が総会でテロ非難の演説を行ったことは、今回のテロ行為に対する国際社会の憤りの大きさを如実に示しています。 議長、 テロ行為は国家間の紛争とも、国内の対立やそれに伴う暴力行為とも性格を異にしています。テロリズムに対する中立はないと云われる反面、テロリズムの定義は容易ではありません。更に、テロ行為を防ぐことには特別な困難が伴います。何故ならば、テロリストを識別することが容易でない上に、多くの場合、その姿も見えないからです。しかし、9月1日の攻撃は、テロリストが国家を相手に、国の軍事活動に匹敵するような規模の攻撃を仕掛けることができることを示しています。 それだけに、テロリズムに対する国際社会の取り組みにも新しい焦点のあて方と手段が求められています。テロリストの資金源に着目したり、テロリストに関する情報面での協力を進めていることはその端的な例です。それに加えて、核兵器や生物、化学兵器がテロリストによって使用される可能性がますます現実味を以て語られるようになってきたことは、テロ対策を国際政治の優先課題とすることの重要性を裏付けています。 議長、 以上述べたことは、われわれの議題である安保理改革にも重要な意味を持っています。一つには、既に安保理決議1373が如実に示している通りに、安保理事会が焦点をあてるべき分野が更に広がったということです。安保理事会がグローバルなテロリズムに対する効果的な対応を決めるためには、国内治安から国際金融までの幅広い分野の知識と経験が必要とされています。 そして第二に、これまた安保理決議1373が内包しているように、安保理事会の採択した決議の履行を確保するためには、国境を越える人や物、更には資金の移動を監視し、規制するための法律や制度の整備といった国内的な措置や、様々な分野での情報面での協力のような幅広い分野での全ての加盟国による協力が求められます。 現在の安保理事会がこうした新しい挑戦に取り組むにあたって、最善の努力をしていることは認めます。しかし、このことは、安保理改革を早期に実現することの重要性を減ずるものではありません。それどころか、テロリズムに対する国際協力を強化することの必要性は、安保理事会の正統性や実効性に新たな角度から光を当てて、安保理改革の努力を加速することの重要性をあらためて強く示しています。 議長、 安保理改革を必要とする理由はこのことにとどまりません。ひるがえって、90年代の安保理事会の活動を見ると、世界の平和と安全を守る上で必要な物の見方や人的、物的資源の幅は、既に、そしてますます広がりつつあります。例えば、国連の平和維持活動は、単にその数が再び増えつつあるだけではなく、その権限もシェラレオーネの例に見られるような、元兵士の武装解除、動員解除、社会への再統合からコソボや東チモールでみられるような民政、開発までの幅広い分野を含むように拡大してきています。また、安保理事会は難民や国内避難民への支援を始めとする人道支援やHIV/AIDSのような問題にも取り組むようになってきています。 更に目を将来に転じて、安保理事会が今回のテロ対策と密接な関係のあるアフガニスタンの恒久的な平和と安定の実現という課題を考えるに当たっても、既に深刻化しつつある難民や国内避難民の救済に加えて、アフガニスタンの政治的安定、その経済、社会の復興と開発といった分野の問題も視野に入れて検討することが重要であることは明かです。 他方で、云うまでもないことながら、朝鮮半島や中東に見られるように世界は冷戦の時代から続いている軍事的な対峙や暴力の悪循環からも解放されていません。また、イラクの問題についても解決の展望が開かれておりません。さらに、アフリカには解決の目途がたっていない紛争が残っています。 議長、 このように拡大する安保理事会の責任を考えると、改革を行うことにより、安保理事会の正統性、実効性を高めることが不可欠です。何となれば今日の安保理事会の構成は今日の国際社会の現実を反映していないからです。 しかし、冷戦の終焉にうながされて協調的な国際秩序を求める気運が盛り上がってきたことを背景にして1993年に始まった安保理改革の議論は、8年目を迎えたにもかかわらず、一向に進展の兆しを見せていません。昨年行われたミレニアム・サミット及び総会での議論により、圧倒的多数の国が安保理改革の必要性を認識していることが明らかになっただけに、この状態は多くの国々にとって大変失望をまねくものです。 それ故に、国際政治に新たな国際協力の気運が盛り上がっているこの時に、我々が、新たな熱意と決意をもって安保理改革に取り組むことの重要性を強調したいと思います。 議長、 ホルケリ議長は前総会の終わりにあたって、同議長のイニシアティヴに応えて加盟国の外務大臣から寄せられた意見をふまえて、安保理改革の進め方について、討議をより高い政治レベルに移行すること、ステップ・バイ・ステップで包括的な改革に進むこと、そして拒否権の問題も討議の一部とすることという三つの提案に言及されましたが、われわれとしては、これらの提案は十分に検討する価値があると考えております。 特にわれわれは、最終的な改革パッケージの達成に向けたステップ・バイ・ステップ・アプローチの次のステップとして、当面、議論の焦点を拡大後の安保理の議席数の問題に当てることが適当であると考えています。また、将来検討すべき提案ではありますが、安保理改革の議論を開始してから十年を終えても改革に向けた具体的な進展が見られない場合には、政治レベルの代表者によりこれまでの作業を評価し、前進の道を探る機会を設けることも検討に値すると考えています。 議長、 ミレニアム総会で示された安保理改革に対する加盟国の熱意を具体化すること、そしてそのために議論を前進させることが、加盟国に与えられた使命です。日本政府としても、このような認識に立って、認識を同じくする多くの国々と協力しつつ、改革の議論を前進させるために努力を続ける方針であり、各国の理解と協力をお願い致します。 ありがとうございました。 |
国連の場における演説 / 平成13年 / 目次 |
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