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演説

黒河内久美外務省参与(日本代表団長)スピーチ(仮訳)

対人地雷禁止条約(オタワ条約)第3回締約国会議

平成13年9月18日

議長、
ご列席の皆様、
はじめに、先週の米国における悲劇的な事件について、日本政府及び日本国民を代表して、ブッシュ米大統領ならびに米国民に対し、心よりお見舞い申し上げます。私たちは、このような残虐なテロリズムに対して強い憤りを覚えるとともに、決して許すことなく、また、二度と繰り返してはならないと考えます。

議長、
このマナグアの地において、オタワ条約第3回締約国会議に出席し、また、日本政府を代表してご挨拶する機会を得ましたことを、大変光栄に思います。この会合をご準備されたアレマン大統領をはじめニカラグア政府の皆様、ダナパラ国連事務次長ほか国連の皆様、その他全ての関係者の方々に、深甚なる敬意と謝意を表明したいと思います。

議長、
オタワ条約は締約国の数を徐々に増やし、現在は120ヶ国に達しました。対人地雷の禁止を国際社会の原則として確立するためには、署名済みの未批准国も含め、更に多くの国が締約国となることが重要です。我が国においても、安全保障上の理由から締結を躊躇する意見もありました。しかしながら、人道的な観点からこうした兵器を禁止すべきだという国際社会の強い願いを重視し、我が国は率先して本条約を締結し、更に、条約を批准していない各国政府に対して、条約への参加を働きかけて参りました。例えば、先だってのPIF諸国会合においては、小島外務大臣政務官が太平洋島嶼国に対してオタワ条約への参加を呼びかけたところです。我が国は、今後とも、関係諸国と力を合わせて一つでも多くの国が条約に参加できる環境を創り出していきたいと考えております。

議長、
条約の内容について、その適用範囲を拡大したり、厳しく解釈することによって、対人地雷への規制を一層強化しようという考えがあることは承知しています。しかし、我が国としては、あまり条約を厳しいものにする場合、これから締約国になろうとする国がかえって躊躇することになることを懸念します。むしろ、多くの国が対人地雷禁止に対する共通の認識と目標の下に、条約に参加し、条約の普遍化が図られることが極めて重要であると確信しております。

議長、
また、各国が実際に対人地雷の撤廃に取り組んでいくことが重要であると考えます。我が国は、2000年1月より廃棄に着手し、2000年末までに約26万個の廃棄を完了しました。

私は昨日、地雷処理の式典に参加しました。ニカラグア政府が、地雷の被埋設国として、対人地雷の除去に真剣に取り組んでいることに、大変感銘を受けたところです。式典の場に、我が国経済援助の一環でニカラグア政府が調達された、日本製の地雷除去機材が展示されておりましたが、今後、これらの機材が有効に活用され、ニカラグアの人々の生活に平和と安全をもたらすことを心から期待いたします。

議長、
対人地雷問題解決に向けた我が国の取り組みを述べさせていただきたいと思います。まず「資金」面では、我が国は、「犠牲者ゼロ」の目標の下、1997年に総額約100億円の支援を行うことを発表し、対人地雷問題の解決に取り組んでおります。主な例を挙げますと、地雷除去関連の活動では、昨年、カンボディアに2,750,000米ドル、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに3,100,000米ドル、モザンビークに600,000米ドルを拠出しました。また、犠牲者支援のためには、本年に入り、カンボディアでの職業訓練支援として約270,000米ドル、アフガニスタンでの義足による歩行訓練等に約310,000米ドルを既に拠出しております。地雷問題教育に関しては、昨年度UNMASにおける地雷啓発教育基準策定支援のために180,000米ドル拠出した他、今般、アンゴラにおける地雷教育事業に130,000米ドル拠出することを決定しました。「技術・知見」の分野では、スイス主催の「貯蔵地雷廃棄マネージメント・トレーニング・コース」及びマレーシア・カナダ共催の「アジア太平洋貯蔵地雷廃棄地域セミナー」に相次いで貯蔵地雷処分の専門家を派遣いたしました。もう一点付け加えさせて頂くとすれとすれば、私自身が「犠牲者支援等常設委員会」の共同議長を務めさせて頂いたことことを大変光栄に存じます。

議長、
犠牲者支援は、緊急医療、義肢の供与、職業訓練の機会の付与など、犠牲者が社会に復帰し、再びその能力を発揮できるようにしていく、忍耐のいる息の長いプロセスです。これには、自国民への社会福祉政策に第一義的な責任を有する被埋設国が、責任を持ってあたらなければなりません。我が国は、2年前の第1回締約国会議で主張したとおり、「オーナーシップの原則」により、被埋設国がこの問題に主体的に取り組むことを期待するとともに、そうした被埋設国の努力に応えるかたちで、わが国の支援を実施していきたいと考えます。また、地雷除去は、住民の農業生産活動を回復させる第一歩であり、復興開発計画と一体として考えていく必要があります。我が国は、対人地雷問題の解決のためには、地雷除去や犠牲者支援といった活動と、その背後にある開発や、更には「人間の安全保障」の観点からの教育や貧困除去といった、社会復興の支援とを包括した、総合的な観点からの取り組みが必要であると考えます。

議長、
ご列席の皆様、
オタワ条約は、対人地雷によって多大な苦しみを受けている、多くの罪のない人々を救おうという、世界市民の強い願いが基礎になってできた条約であります。こうした願いを結実させるにあたって、市民社会の重要な役割を忘れてはなりません。NGOが各国において、この問題の深刻さを訴え、人道的考慮からの対応と、支援の重要性を訴えたことが、世界市民の願いを纏め上げ、国際社会を動かしたのです。私は、このようにNGOが掛け橋となって国際社会の規範作りが進んでいった事実に、21世紀の新しい国際政治の姿を見る思いがしています。我が国においても、「難民を助ける会」が対人地雷の廃絶を訴える「地雷でなく花を」のキャンペーンを進め、「地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)」がアジアにおける締約国の拡大に尽力するなど、我が国のNGOは、ここに挙げない団体も含め、積極的にこの問題に取り組んでいます。我が国としては、今後ともNGOと密接に連絡を取りつつ、対人地雷の問題に取り組んでいきたいと考えます。国際社会の悲願ともいうべき対人地雷問題の解決に向けて、一致団結し、私達の子供や孫達のために、平和な暮らしを約束しようではありませんか。

ご静聴ありがとうございました。



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