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演説

河野外務大臣演説

パレスチナ支援調整東京会議における河野大臣冒頭ステイトメント


1999年10月15日


 アラファト長官、
 ヴォッレベク大臣、
 マサルハ副大臣、
 御列席の皆様、

 私は、パレスチナ支援調整会議の共同議長として、また、日本政府を代表して、参加者の皆様を心から歓迎すると共に、ここに会議の開会を宣言致します。
 先般9月4日、シャルム・エル・シェイク合意が成立し、中東和平プロセス進展の期待が現在大きく高まっております。このような時期にパレスチナ、イスラエル、援助国の三者が、和平の達成という共通の目標に向けて、またパレスチナ人が周辺諸国の人々と共に平和と繁栄を享受できるように協力し、努力していくための会議を開催することが重要となっています。
 日本は中東から1万キロメートルも離れておりますが、その日本で世界からの参加者を得て会議を開催すること自体、世界全体が中東和平に関心を持っている証左であります。是非、参加者の皆様の熱意と努力によって会議を成功させるよう御協力をお願い申し上げます。

 御列席の皆様
 93年9月のオスロ合意以来、国際社会はパレスチナ支援のため過去5年間で約25億ドルの支援を実施しました。わが国もこれまで約5億ドルの援助を実施し、更に、昨年10月のワイ・リバー合意成立後の和平支援閣僚会合において、2年間で2億ドルを目途として援助を実施していく旨表明致しました。
 具体的にはわが国は、99年に入ってから既に約7200万ドルを越える支援を実施しておりますが、これに加え、昨日私はシャアス長官とともに小中学校11校の建設に対する約1500万ドルの無償資金協力の交換公文に署名致しました。また、UNDPを通じて約2000万ドルの支援を行う方針を決定致しました。これらを合わせれば1億ドルを越える援助となります。更に、今週末に西岸・ガザ間の安全通行路が開通されることとなりましたが、わが国は、来月調査団を派遣し、道路・運輸分野での協力の可能性を探求致したいと思います。
 様々な計画を持ち援助の実施に努めている他の援助国にも、さらに援助を具体的に実施し、成果を出していく努力の継続を呼びかけたいと思います。また、同時に、援助を可能な限り効果的、効率的に実施していくことも重要です。今回の会議では、過去の援助の評価報告や援助の効率的実施のための報告を行う予定です。
 わが国もそうですが今日各国とも厳しい財政状況の中における援助であることを認識し、パレスチナ側にも一層の自助努力、特に自主運営能力の強化を求めたいと思います。最も重要なことは、人材開発です。そのため、わが国は技術協力専門家をパレスチナ自治政府に派遣することと致しました。専門家による技術移転が拡充されることにより、よりきめ細かな協力が実施できると考えたからであります。

 御列席の皆様
 こうした政府ベースの援助に加えて、今後はパレスチナ自治区に対する直接投資など民間経済部門の活発な活動が持続可能な経済発展のためには必要です。また、パレスチナとイスラエルの草の根レベル、市民レベルの信頼醸成のための交流を図っていくことも極めて重要です。わが国は3年前から、政府、マスコミ、民間各分野の青年をパレスチナ及びイスラエルの双方よりそれぞれ10名ずつわが国に招待し、寝食を共にしつつ交流を行うプログラムを実施しています。本年の参加者には、この会議にも来て頂いておりますが、私は、双方の青年の間の心のふれあいが必ずや将来役に立つ時が来るものと信じ、かかる支援プログラムを続けていく考えです。

 御列席の皆様
 私は、前回の外務大臣の任にあった時、95年9月のワシントンで行われた暫定自治拡大合意の署名式典及び閣僚級の対パレスチナ支援会合に出席したことを記憶しています。その時、出席者の間で共有された感動と協力の精神を今でも昨日のことのように覚えています。その後、ラビン・イスラエル首相を突然失った悲劇的事件が起こりました。国葬に参加した折に、故ラビン首相の平和に対する強い遺志をイスラエル国民のみならず、全ての和平当事者が継承し、勇気を持って粘り強く対話に取り組んでいる、私自身も可能な限り支援をしてきたいとの思いを強くしたことが思い起こされます。
 私は、アラファト長官とバラック首相を始めとする和平交渉当事者が、和平プロセスの進展に断固たる決意をもって取り組んでいることに、強い感銘を受けております。わが国として和平プロセス進展のためあらゆる努力を惜しまない考えですが、その際、特に次の諸点を重視しております。
 第一に、わが国は、シャルム・エル・シェイク合意を支持し、その合意実施に向けた努力を要請します。この点実施の遅れていたパレスチナ人拘禁者の釈放が本日中に実施されるとのニュースに接したことは誠に喜ばしいことです。今後とも、現在の和平プロセスのモメンタムを維持するためにも、シャルム合意が予定通り確実に実施されることが重要と考えます。更に、最終的地位交渉を通じ、公正、永続的かつ包括的な和平が実現することを強く希望します。わが国としては、経済的な支援に加え、政治的な役割も積極的に果たしていきたいと考えます。
 第二に、多国間協議と二国間交渉は、いわば車の両輪であると考えます。二国間交渉のインセンティブを維持するためにも、多国間協議のプロセスが早期に活性化される必要があり、わが国も環境作業部会、観光部会の議長として積極的な役割を果たしていきたいと思います。
 第三に、包括的和平を達成するためにはシリアとレバノン両トラックの解決が不可欠です。この点、バラック首相が繰り返し南レバノンからの1年以内の撤退に言及していることを歓迎しています。今後、わが国の南レバノンに関する四項目提案をも踏まえ、早期に交渉が開催されることを強く期待しています。

 御列席の皆様
 今回のパレスチナ支援調整会議のような会合を日本で初めて開催し、中東和平の実現に向けて貢献できますことは、私にとっても大きな喜びであります。私はこれまで何度か中東を訪問したことがありますが、申すまでもなく、かの地は多様な宗教、文化、民族が共存してきた地域であり、それら多様な背景を持つ人々が活発に交流し、繁栄を築いてきた歴史と伝統を有しています。
 先日、西岸・ガザ間の安全通行路の開通が合意されましたが、これを第一歩として、地域を横断するような「平和の回廊」が具体的プロジェクトとして実現され、こうした交通路が「ヒト」や「モノ」の自由で迅速な往来を可能にし、地域繁栄の礎となることが望まれます。このためには、和平当事者、支援国を始め、周辺国の理解と協力が不可欠であると考えます。
 日本国民は、50数年前の戦火による破壊から復興を遂げてきたものとして平和の尊さを身にしみて知っており、中東における平和の実現を心から願っております。
 最後に、2000年9月までの最終的地位交渉の終結に向け、当事者が粘り強く交渉を行い、残された多くの困難な課題を解決していくことを期待すると共に、日本政府、国民は各国と協力してあらゆる支援を行っていくことを改めてお約束したいと思います。

 ご静聴ありがとうございました。



河野外務大臣演説 / 平成11年 / 目次


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