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演説

国連の場における演説

世界食糧サミットにおける藤本孝雄日本代表演説

1996年11月14日
於:ローマ(イタリア)

・ 世界食糧サミット(概要と評価)

 議長、大統領閣下、事務局長閣下、ご列席の皆様、

 私は、本日ここに日本国を代表して、我が国の食糧問題に関する所見を述べますことを光栄に思います。また、この会議をホストされたイタリア政府及びこれまで準備に携わってこられた国連食糧農業機関を始めとする会議関係者の方々に心から敬意を表します。

(背景)

 議長、
 近年、環境や人口などの地球規模の諸問題をテーマとする国際会議が相次いで開催されてきておりますが、世界の食糧問題は、これらの地球規模の最重要課題のひとつであり、世界食糧サミットの開催を高く評価しております。私は、21世紀に向けて食糧及び農林水産業の重要性に関する世界的な認識を高めるとともに、世界の食糧安全保障の達成と飢餓及び栄養不良の撲滅のため、各国が協調しつつ力強い行動を開始することは、大変意義深いものと考えます。

(多面的な食糧問題)

 議長、
 私は、食糧問題は、世界の全ての人々が等しく真剣に考えなければならない問題であると考えます。すなわち、水や土地など地球上の食糧生産資源の有限性が次第に明らかになる中で、急増する人口と食糧消費の高度化を背景とする大幅な需要の増加に対応し、いかに十分な食糧を安定的に供給するかという課題は、全ての人類にかかわる重要問題です。また、気象災害などに基づく食糧需給の不安定性や価格の大幅な変動も、多くの国や人々にとって切実な問題です。さらに、現在もなお8億人の飢餓・栄養不良人口が世界に存在していることは、人道的見地からも看過し得ない問題であり、我々が力を尽くして取り組まなければならない課題となっております。
 私は、このような状況に対処するため、そして、人類の生存の基盤である食糧や、自然環境の中で営まれる農林水産業は、単に経済的視点のみではなく、多面的な視点で考えていく必要があるという点を、まず強調したいと思います。私は、本世界食糧サミットの「ローマ宣言」及び「行動計画」に、かかる認識が盛り込まれていることを歓迎するものであります。

(世界の食糧安全保障の達成に向けて)

 議長、
 私は、世界の食糧安全保障を達成するためには、各国が各々の立場に応じて、適切な政策と行動をとることが重要であると考えます。

 第一に、食糧輸入国においては、先進国、開発途上国を問わず輸入に過度に依存することは、特定国の大量買い付けが国際市場に及ぼす悪影響、食糧不足時における輸入の不確実性、及び、将来の人口増加等を考慮すれば、適切な選択ではないと考えます。したがって、我が国を含め、食糧輸入国においては、国内資源を有効利用しつつ、持続可能な国内生産を推進することが、とりわけ重要と考えます。また、国内生産の推進が、農業の持つ食糧生産以外の多面的な機能の発揮につながることも強調したいと思います。
 以上、私は、国内生産の重要性について述べましたが、多くの食糧輸入国においては、農地や技術力の不足等の制約から、国民の必要とする全ての食糧を国内で生産することが困難な状況にあります。したがって、食糧の安定供給確保を図るためには、国内生産に加え、輸入及び備蓄の三要素を、各国の状況に応じて適切に組み合わせることが重要であると考えます。

 第二に、食糧輸出国においては、不作が生じた場合といえども輸入国に対して安定供給を行う責任を負うべきであると考えます。輸出国の一方的措置により供給が制限された場合、輸入国は危機的状況に陥る可能性があることを十分認識すべきであります。さらに、輸出制限等により価格が高騰した場合には外貨準備が不足しがちな開発途上国を中心に大きな影響が生じます。この点についても輸出国は十分認識する必要があると考えます。

 第三に、現に飢餓・栄養不良に悩む国々については、当面の対応措置としての食糧援助が必要であります。しかし、私が強調したいのは、これら諸国においても、持続可能な食糧生産能力の向上に努めることが何よりも重要だということであります。このような努力に対しては、国際社会からの技術的、経済的支援が重要と考えます。

(我が国の食糧政策)

 議長、
 次に、私は、我が国の食糧安定供給確保に向けた取り組みについて述べたいと思います。

 我が国の穀物自給率は、現在30%と先進国の中でも異例に低い水準となっており、これを背景に、国民のほとんどが将来の我が国の食糧事情に不安を抱いております。したがって、我が国においては、現存する農業生産資源を有効に活用しつつ、国内生産の維持・拡大に努めることとしているところであります。
 しかしながら、国土資源等農業生産資源に制約のある我が国においては、国内生産のみで需要を賄うことは困難であり、国内生産に加え輸入及び備蓄を適切に組み合わせることにより、国民のニーズに即応した供給に努めているところであります。
 私は、我が国のような食糧の大輸入国において、一定の国内生産の確保に努めることは、国際市場の安定化と、中長期的な世界の食糧安全保障にも資するものであると確信しております。

(我が国の貢献)

 議長、
 最後に世界の食糧安全保障の達成に向けた我が国の国際協力について述べたいと思います。

 我が国は世界最大のODA供与国となっておりますが、その中で食糧・農林水産業分野についても、積極的に各種の技術協力や資金協力を実施してきております。
 私は、各国の食糧安全保障を達成する上で少なくとも基礎的な食糧については自国で生産するとともに、持続可能な農業農村開発に努めることがとりわけ重要であると考えております。
 我が国としては、世界食糧サミットの成果を踏まえ、開発途上国の自助努力による食糧増産への取組みや、持続可能な農業農村開発を支援するため、食糧・農業分野を我が国の国際協力の重点分野の一つとして位置付け、一層の努力を傾注して参ります。
 特に「ローマ宣言」にある、2015年までに栄養不足人口を半減させるとの目標は、政治目標として極めて有意義であり、かつ、我が国が提唱する結果重視の新開発戦略にも沿うものであるので、これを支持し、できる限りの努力を行う所存であります。
 これとの関係で、国連事務総長をはじめ多くの方々から言及のあったザイール東部に対する支援については、我が国としても、国連事務総長の要請を積極的に受け止め、関係当事国への働きかけの強化や、1千万ドルに上る国連難民高等弁務官事務所の「ルワンダ/ブルンディ特別計画」への拠出を決定するなど様々な努力をしており、同地域における平和的解決が一日の早く実現することを期待するものであります。

(結び)

 議長、
 我が国は、世界食糧サミットを契機として、全ての人の食糧安全保障に向け、全世界が21世紀に向けて一体となって取り組める環境が整うことを切に望んでおります。

 私は、このサミットの成功を受けて、各国、国際機関、NGOを含む市民社会及び国際社会全体が、永続的な食糧安全保障の達成に向けて一致した行動に着手することを願うとともに、我が国としても世界の食糧安全保障達成のため、積極的に取り組んでいくことを再度表明したいと思います。

 ご清聴ありがとうございました。



国連の場における演説 / 平成8年 / 目次


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