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演説

池田外務大臣演説

シンガポール閣僚会議における池田外務大臣演説


平成8年12月10日 

ヨー議長、ルジェロ事務局長並びにご列席の皆様、

 私は、日本国政府を代表し、この会議の開催準備のため尽力されたゴー首相、ヨー議長をはじめとするシンガポール政府関係者、及びルジェロ事務局長以下のWTO事務局関係者に対し、敬意と感謝の意を表します。

議長、
 我が国がウルグァイ・ラウンドでのコミットメントを実施すれば鉱工業品に関して平均関税率が一・五パーセントになりますが、それに加え本年四月に、更に六九七品目に関し、関税引き下げの約二年間の前倒しを実施致しました。これは、APECの自主的自由化措置の一環として実施したものですが、開かれた地域協力を標榜する我が国は、これらを当然のことながら、最恵国待遇を与える形で全ての国に均てんしております。このように我が国がウルグァイ・ラウンド後も、貿易自由化推進のための措置をとっているのは、それが世界経済の発展と我が国の利益増進につながると考えるからです。

 本会議は、世界貿易の自由化を進め、その円滑な発展拡大を促す重要な機会です。ウルグァイ・ラウンドの成果がきちんと実施されることを確保することはもちろん重要ですが、それのみでは十分とは言えません。WTOの下で、我々が更なる自由化を進め、貿易に関連ある新たな問題を取り上げていく姿勢を示す必要があります。
 私は、このような認識に基づいて、我が国が積極的に指導力を発揮してきた点を中心に、自由化の推進、多角的規律の策定、そして貿易上の紛争処理、の三つの側面から私の考えを述べたいと思います。

 まず、自由化の推進に関しては、サービス交渉と更なる自由化について述べたいと思います。
 サービス分野の継続交渉については、我々は、WTOが、この二年間この面で、十分な成果を上げられなかった事実を、直視しなければなりません。来年二月に交渉期限を控えた基本電気通信、更に金融サービスの分野においては、合意された期限内に最恵国待遇に基づいた合意を達成すべく、心して交渉に当たらなければなりません。さらに海運サービスについても、是非、次の交渉には、合意の達成のため、全加盟国が前向きに臨むことを強く期待します。

議長、
 次に、更なる自由化についてですが、既に合意されたタイムテーブルのある作業に加え、可能な分野で自由化を進めていくことが重要であると考えます。これからの産業の基本的インフラとも言うべき、情報技術の分野における関税撤廃、いわゆるITAについては、今次閣僚会議の自由化の分野での最大の成果として、是非合意したいと考えます。また、既に医薬品の関税撤廃の対象を広げることに合意できたことは、意味のある成果でありました。

議長、
 多角的規律の策定は、経済の相互依存関係の深化、グローバル化の中で、貿易の円滑な流れを確保するために、今後WTOにおいて益々重要な機能となると考えます。これまで我が国は、地域貿易取極がWTOを補完・強化するよう点検していくこと、貿易と環境について、WTOと多国間環境協定が相互に尊重し合い、協力し合うことを確保することを重視し、積極的に提案をしてまいりました。今後の作業の継続に期待しております。

 今後の課題として、我が国は、「貿易と投資」、「貿易と競争」に関する作業をWTOで開始することを提案しております。そして、後者については、競争を歪める貿易措置の濫用を防止するとの観点も含めて、取り上げることが重要であると考えます。多くの途上国から、これらの問題の検討を開始することに支持を得ていることを、心強く思います。確かにこれらの課題は、新しい問題を含んでおります。従って、将来の方向性を予断することなく「教育的」過程から開始することが適当であると考えます。また、我が国は、政府調達の透明性を中心とする新たな取決めに向けての作業についても、歓迎するものであります。

議長、
 紛争の解決について、WTOは、発足以来、大きな機能を果たしつつあるといえましょう。我が国もその機能を重視し、尊重してまいる所存です。但し、我々は、WTO協定の精神は二国間協議で極力問題を解決する努力を払うことにあり、紛争解決了解に規定されている、第三者を入れた法的解決手続に訴えるのは、やむを得ぬ場合であることも、念頭においておかなければなりません。

 以上の三つの側面に加え、多角的貿易体制を強化するためには、途上国、就中、後発開発途上国が貿易自由化から利益を得られるよう、行動計画の採択など手をさしのべていくこと、そして、WTOの普遍性を増すため、中国をはじめとする加盟申請中の経済主体の加盟が早期に実現することが重要である点を、付け加えておきたいと思います。

 最後に、我々はWTO事務局に多くの仕事を求めておりますが、有能な職員が十分にその機能を果たせるように、事務局の活動を支援していくことが如何に重要かを、強調しておきたいと思います。

 この閣僚会議の成功のため、我々全員が柔軟性を発揮し、WTOの今後進むべき方向について、一致して明確なメッセージを世界へ発出すべきことを強く呼びかけて、私の発言をしめくくりたいと思います。

 ご静聴有り難うございました。

●参考:シンガポール閣僚宣言

池田外務大臣演説 / 平成8年 / 目次

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