川口外務大臣談話
イスラエル軍によるハマスの精神的指導者ヤシン師殺害について
平成16年3月22日
- 本22日(月)早朝(現地時間)イスラム過激派ハマスの精神的指導者であるアハマド・ヤシン師が、イスラエル空軍のミサイル攻撃により殺害されたことに対し、わが国政府として懸念を表明する。
- 最近発生したパレスチナ過激派による自爆テロを受けイスラエル軍はガザ地区への攻撃を強め、一般市民にも犠牲が生じている。今回のヤシン師の殺害により、憎悪と暴力の連鎖が拡大する様相を見せており、わが国政府としてもこれを強く危惧している。わが国はイスラエル政府が最大限の自制を行使し、事態の沈静化を図るよう強く求める。
- また、パレスチナ側においては、今回の事件による事態の更なる悪化をもたらさないよう、冷静な対応を期待する。
- 現在、イスラエル、パレスチナ側双方による「ロードマップ」に基づく和平に向けた取組が事実上停止している。昨年6月、イスラエル、パレスチナ側両首脳が「ロードマップ」に基づく二国家の平和共存にコミットしたことを想起し、イスラエル政府およびパレスチナ自治政府が直ちに話し合いに入るイニシアチブを発揮することを強く期待する。
(参考)
- 22日(月)午前5時30分(現地時間、日本時間12時30分)、ガザ地区ガザ市内においてイスラム過激派「ハマス」の精神的指導者であるヤシン師は、早朝礼拝に車で向かう途上に、イスラエル空軍のミサイル攻撃により殺害された。併せて同師の警護官等5人も死亡。ヤシン師の殺害を受けて、ハマス関係者は報復への決意を公言、パレスチナ自治政府も殺害を非難している。
- わが国は昨年9月30日の閣議をもって、ハマスに対するテロ資産凍結を実施する旨決定している。
- 昨年6月4日、ヨルダンにて行われた米・イスラエル・パレスチナ首脳会談で、マフムード・アッバースPA(パレスチナ自治政府)首相(当時)、アリエス・シャロン・イスラエル首相はロードマップの実施にコミットしたが、その後の事態の改善は見られておらず、ロードマップの実施は進展していない。今月16日には、イスラエル・パレスチナ首脳会議が予定されていたが、14日に発生した自爆テロを受け、延期された。
- シャロン・イスラエル首相は、昨年末からガザ地区からの撤退等を含む「一方的措置」を提唱、今月15日にはクネセット(イスラエル議会)を僅差で通過。これによるハマスのガザ地区での勢力の増大が懸念されていた。
- なお、イスラエルによる暗殺政策については昨年10月21日に採択された国連総会決議(A/ES-10/L.15)において、イスラエル政府が、市民の追放、攻撃や「超法規的殺害」等の措置をとらないよう要請している。
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