ムベキ・南アフリカ大統領の訪日
(概要と評価)
平成13年10月12日
1.概要
(1)ムベキ南ア大統領夫妻は、10月1日から10月3日にかけてズマ外務大臣をはじめとする6名の閣僚等とともに、国賓として訪日した。ムベキ大統領夫妻は滞日中、天皇皇后両陛下との御会見を行うとともに宮中晩餐に出席し、また、小泉総理大臣との首脳会談(大統領のみ)及び総理主催晩餐会(大統領夫妻)に出席した。この他、大統領は、経済団体共催午餐会及び友好議員連盟関連行事等に出席し、国連大学において「新アフリカ・イニシアティヴ」に関する記念講演を行った。
(2)日・南ア首脳会談に際し、幅広い分野における両国間のパートナーシップを強化していくことを謳った共同コミュニケが発出され、今後の協力の指針が示された。
(3)大統領訪日に合わせて、10月3日に日・南ア・ビジネス・フォーラムの第一回会合が行われ、今後とも両国経済界の定期対話が行われることとなった。
2.評価
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(1)訪問の意義
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(イ)昨年7月の九州沖縄サミットにおける南北首脳間対話、本年1月の森総理(当時)のアフリカ訪問に引き続き、日本と南アが、21世紀に世界が直面する諸問題に取り組むために「南北の架け橋」として協力することの重要性を再確認し、今後もこのパートナーシップを拡大・深化させていくことに合意した。新世紀を迎え、グローバル化がすすむ中、南北協調を唱え、アフリカを含む途上国に大きな発言力をもつ南アとの協力関係を堅固なものに出来た意義は大きい。
(ロ)わが国は、「アフリカ問題の解決なくして21世紀の世界の安定と繁栄はない」との認識に基づき、アフリカ問題への取り組みをわが国グローバル外交の最重要課題の一つとして取り組む姿勢を再確認し、特に日本主導の「アフリカ開発会議(TICAD)」を通じた「新アフリカ・イニシアティヴ」への積極的支援を表明した。アフリカ諸国及びドナー諸国との関係でも、NAIとの協力関係も含めTICADプロセスへの関心を高めることに寄与した。また、本年12月に予定されるTICAD閣僚レベル会合への基礎固めを行うことが出来た。
(ハ)今後、来年ヨハネスブルグで開催される「持続可能な開発に関する世界首脳会議」、本年11月の気候変動枠組み条約締約国会合、同11月のWTO閣僚会合等の重要な国際会議に向けて、両国間で協力していくことが確認された。また、安保理改革を含む国際問題について、日本が特別のパートナーであるとの南アの意識を再確認した。
(ニ)ムベキ大統領は総理主催晩餐会において、小泉総理について「重要な友人」である旨述べ、また、小泉総理も10月5日の国会答弁において教育の重要性について述べる中で、ムベキ大統領との会談に言及するなど、指導者間の個人的関係が構築された。更に、今回の訪問を機会に、参議院日・南ア友好議連に加えて衆議院に森前総理を会長とする友好議員連盟も誕生した。
(ホ)今回開催された「日・南ア・ビジネス・フォーラム」や、経済界とのハイレベルの対話を通じて、南アフリカの有する経済的な潜在力を日本経済界に認識される機会が提示されたほか、今後両国の経済交流を更に活性化することにつき合意が得られた。
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(2)日・南アフリカ共同コミュニケ
日・南アフリカ共同コミュニケの主要なポイントは以下のとおり。
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(イ)両国間の政府間対話の拡充
両国は、閣僚級を議長とする「日・南ア・パートナーシップ・フォーラム」を今後も積極的に実施して行くことで一致するとともに、右を補完する意味で、グローバルな問題について協議する高官級年次協議、並びにアフリカ問題について協議する高官級年次協議をそれぞれ実施して行くことを表明した。
(ロ)「新アフリカ・イニシアティブ」(NAI)とTICADの連携等
わが国は、アフリカ自身の努力により策定されている「新アフリカ・イニシアティブ(NAI)」はアフリカ開発におけるオーナーシップ(主体性)の原則を実現するものであるとして評価すると共に、本年12月に開催されるTICAD閣僚レベル会合においてもNAIを主要な議題の一つとして取り上げるとの方針を再表明した。この他、アフリカ統一機構(OAU)や南部アフリカ開発機構(SADC)の改革、紛争解決におけるアフリカ指導者によるイニシアティヴなどの正しい方向性を支持した。
(ハ)科学技術分野における協力
両国は、科学技術分野における協力の進展を歓迎し、科学技術協力協定締結に向けた交渉を開始することを決定した。一方的な援助ではなく、相互利益の原則に基づく同協定を、アフリカ大陸の国との間ではじめて締結することが出来ればその意義は大きい。
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(ニ)地球規模問題への対処に関する協力
両国は、先般米国で発生したテロ事件を非難すると共に、両国間で可能な限りの措置をとっていくことを強調した。
また、両国は、来年南アフリカで開催される「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(地球サミット)に向けた協力、国連安保理改革に向けた協力などについて合意した。
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(3)その他
ムベキ大統領は、国連大学にて記念講演を行い、「新アフリカ・イニシアティブ」の動向を中心に、アフリカの開発に向けた取り組みを紹介した。同講演には500人超の聴衆が詰めかけ、日本における南アフリカを含むアフリカ情勢に対する関心の高まりを伺わせた。
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