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橋本総理訪米の概要と評価


平成9年4月27日
外務省

1.主要日程(いずれも米国時間による)

4月24日 22:30~24:30 首脳間非公式懇談
25日 08:55~09:30 ギングリッチ下院議長の総理表敬
11:10~13:30 日米首脳会談、昼食会
14:35~15:35 共同記者会見
16:05~16:35 米国議会訪問
17:30~18:30 ナショナル・プレス・クラブでのスピーチ
26日 08:30~10:10 ゴア副大統領との朝食会
12:30~13:00 コーエン国防長官の総理表敬

2.首脳間非公式懇談(24日)

(1)
現地時間24日夜(10時半)、橋本総理は急遽クリントン大統領の招きで大統領を訪問し、2時間近く懇談。

(2)
本件懇談は、家族の話(ヒラリー夫人、チェルシー令嬢)など社交を中心に両首脳の個人的な親密さを象徴するものであった。また、かつての総理の交渉相手であるミッキー・カンターの話に及び、大統領がその場でカンター氏に電話し、総理も電話に出る一幕もあった。

(3)
総理より、ペルー事件解決に関連して、これまでの米国からの協力に感謝する旨伝達。また、同夜米上院を通過した化学兵器禁止条約の話なども行われた。

3.ギングリッチ下院議長の総理表敬(25日)

(1)
橋本総理は、宿舎(ブレアハウス)にてギングリッチ下院議長の表敬を受けた。同議長はノースダコタ州洪水の現地視察に急遽赴くこととなったため、予定を変更して朝の表敬となったもの。総理より、右洪水への見舞いを述べた。

(2)
議長より、先般の訪日時の歓待への感謝。また、沖縄基地問題への総理の指導力に敬服する旨述べるとともに、東アジアにおける同盟国日本の重要性、米国議会による対日理解促進の必要性等に言及した。これに対し、総理より、米下院における沖縄に対する感謝決議に対する謝意等を述べた。

4.日米首脳会談(25日)

(1)
橋本総理は、少人数会合(50分)、全体会合(30分)、テ・タ・テートのプライベート・ランチ(1時間)の順序で、ホワイトハウスにてクリントン大統領と首脳会談を行った。全体会合の同席者は次のとおり。(米側)ゴア副大統領、オルブライト国務長官、ルービン財務長官、コーエン国防長官、デイリー商務長官、バシェフスキー通商代表他。(日本側)与謝野官房副長官、斉藤駐米大使、柳井外務審議官、平林外政審議室長他。

(2)
会談での主たるやりとり

・総理より、ペルー事件への協力に感謝。

・安保
(総理)現時点で在日米軍兵力削減を論じることは不適当だが、安保共同宣言に基づく防衛政策・軍事態勢に係る緊密協議への両国のコミットメントを確認したい。特措法、ガイドライン見直しに言及。
(大統領)沖縄の米軍駐留に関する総理の対応に感謝。沖縄問題に個人的にコミットしており、できるだけのことはしたい。
(コーエン国防長官)沖縄に係る総理の対応に感謝。

・経済
(大統領)現在、日本が、財政赤字の削減努力を行うことにより高齢化社会に対応しようとしている現状は理解できる。日本の規制緩和は世界にも好影響。財政赤字削減は、経常収支黒字を拡大し、米国の保護主義を刺激しかねず、心配。
(総理)(日本経済の現状を詳細に説明の上)我が国の貿易・サービス収支黒字が中期的に大幅に増大するとは考えていない。我が国の各般の改革は、内需主導型で世界経済とも調和した経済成長に寄与。
(大統領)個別経済問題(テレコミ、航空等)につき、事務方に解決努力を指示したい。南氷洋の鯨問題を指摘。

・国連改革
(大統領)日本の常任理事国入りを支持、協力。(オルブライト国務長官)議会との間で、分担金未払の解決に努力。(総理)常任理事国入りに係る支持に感謝。

・中国
 建設的協力関係の構築につき日米間で認識一致。

・ロシア
(大統領)G7を8ヶ国サミットにすることへの日本の支持に感謝。 エリツィンに日露関係改善を求めた。

・朝鮮半島
(大統領)食料援助は必要だが、困難な面もある。(総理)日本国内の対北朝鮮世論は厳しい。

・中東
(大統領)日本の努力を多とする。
(総理)よく連絡を取り合いたい。

・カンボディア
(総理)高村政務次官を派遣し、状況改善を働き掛け中。
(大統領)日本の働き掛けを支援。

5.共同記者会見(25日)

(1)両首脳は、首脳会談終了後ホワイトハウスにて共同記者会見を行った。

(2)大統領冒頭発言

・米軍基地の日本国民に与える負担を軽減しつつ、両国間協力を強化。在沖縄米軍基地の整理に関する最近の進展を評価。引き続き沖縄問題に協力。

・日米は、北朝鮮に四者会合を受け入れるよう求めることで一致。KEDOにおける日本の役割に感謝。中国との協力的関係の構築の重要性につき一致。カンボディアにおける民主主義の前進に国際社会が断固たる支持を与えるべきことで一致。

・経済に関し、この4年間両国は開放されバランスのとれた貿易・投資関係につき努力。この成功を基に、米国に対する主要分野における新たな機会、日本の消費者のための利益を創出することの必要性を述べた。日本経済の内需主導型の成長、日本の対外黒字が大幅に増加することを避けることを望む。

・その他デンバーサミット、国連改革、コモンアジェンダ、国民交流等に言及。

(3)総理冒頭発言
・SACO最終報告の実施について一致。「日米防衛協力のための指針」見直しについては透明性をもって進めたい。昨年4月の「安保共同宣言」を再確認。

・財政構造改革、規制緩和、金融システム改革等の日本の改革努力を説明。大統領はこれを評価。内需主導型の経済成長、大幅黒字の回避が共通目標。規制緩和に関する対話のための事務レベル協議開始で一致。

・中国との建設的協力関係の構築の重要性につき一致。朝鮮半島につき、四者会合の早期実現、KEDOの推進を含め日米韓の連携を確認。カンボディアの民主主義に基づく安定の必要性で一致。現地に高村政務次官を派遣。

・グローバルな課題への日米協力(デンバーサミット、テロ・犯罪対策、国連改革、国際情勢、コモンアジェンダ)、日米国民交流に言及。

(4)質疑応答(主たるもの)
問:ガイドライン見直しと憲法の整合性
(総理)憲法の枠内が大前提。新たな法的措置の要否は予断したくない。透明性をもって作業したい。

問:米軍削減問題
(総理)現在の兵力水準に係る米国のコミットを大切にしている。地域情勢は不確定で、日米協力が必要。沖縄の負担軽減に向け、SACO最終報告の実施が第一歩。
(大統領)米軍プレゼンスは、日米、アジア太平洋の安全に必要。沖縄問題には敏感さをもって対応したい。

問:中国による日米内政への関与
(総理)日中関係は昨年11月の首脳会談で修復。本年は首相往来も予定。中国が日本内政に影響力を行使しようとしているとは思わない。
(大統領)中国関連の問題につき証拠もなく非難することはできない。

問:対米黒字削減の方途
(総理)内需中心の経済成長に自信あり。為替水準につき議論はしなかったが、日米蔵相会談で扱う方が適切。
(大統領)健全・強力なドルを望む。ドル安は望まない。

問:朝鮮半島情勢
(大統領)協議プロセス再開が必要。北朝鮮核開発計画凍結に係る日本の支援に感謝。
(総理)(食料援助に関し)「人道的」支援が必要というのなら、日本人妻、拉致問題等につき北朝鮮側も人道的対応を示すべき。

6.議会訪問(25日)

(1)
橋本総理は、米連邦議会を訪問し、ロット、ダッシェル両上院院内総務始め上下院の共和・民主両党の代表議員9名と懇談した。

(2)
総理より、議事堂に入るのは2度目とした上で、議員交流の活性化、沖縄問題について米側の理解・協力を得ながら引き続き努力していくこと、21世紀に向けて規制緩和をはじめとする広範な経済構造改革に取り組んでいること、日米がグローバルな問題に協力して取り組んでいること等を説明。また、ペルー事件での米国の協力に感謝。ロット上院院内総務より、特措法に係る総理の指導力に敬意表明。

7.ナショナル・プレス・クラブ(NPC)でのスピーチ(25日)

(1)
橋本総理は、ワシントンのナショナル・プレスクラブにて、演説(「日本の進路と日米関係」)を行った。聴衆約200名。

(2)
総理は、冒頭、ペルー事件の解決に向けられたペルー政府、米国政府をはじめとする国際社会の連帯・支持に謝意を述べた上で、(a)日本の経済・社会の改革への決意、(b)日米同盟へのコミットメント、(c)アジア太平洋における日米協力の推進、の3点に触れつつ、日米の絆を今後如何にして更に深めていくかについての考えを述べた。

-日本の改革及び進路:行政改革、財政構造改革、規制緩和を含む経済構造改革、金融システム改革、社会保障構造改革及び教育改革の6分野の改革への決意を表明。

-米国との協力:日米安保体制の重要性に触れつつ、「日米防衛協力のための指針」の見直しを高い透明性をもって議論していきたい旨、また、沖縄問題について日米両国が引き続き真剣に取り組むことの重要性を訴えた。更に、国際情勢(中東、ボスニア、アフリカ等)、コモンアジェンダ等に係る日米協力、日米経済関係にも言及。

-地域安定協力:中国情勢に関し、同国のWTO早期加盟等に触れつつ、中国が国際社会における建設的パートナーとなるようにすることが地域の安定と繁栄にとり重要な旨言及。朝鮮半島情勢に関し、四者会合が速やかに開始され、南北間対話が進展することへの期待を表明。APEC、ARF等のアジア太平洋地域における取り組みを日米が尊重し、成功へ導くことが重要な旨言及。

8.ゴア副大統領との朝食会(26日)

(1)
ゴア副大統領の招待により、副大統領公邸において朝食会が行われ、コモン・アジェンダを中心に地球規模問題についての協力を一層推進することが合意された。

(2)
会談での主たるやりとり(全体としてコモン・アジェンダの話が主体)
 冒頭、副大統領より、訪日時の歓迎に感謝。また、特措法に係る総理の努力に敬意を表明、更に、ペルー人質事件解決への祝意を述べた。

・国際情勢
(副大統領)中国の経済開放の進展に着目。朝鮮半島情勢については、色々な懸念はあるが、全体としては希望的観測を持ちたい。(総理)(朝鮮半島に係る考えを説明の上、)非常に重要な問題であり、情報交換を続けたい。

・コモン・アジェンダ
 今後とも協力を深化させ、グローバルな問題につき解決を目指すとの決意で一致。具体的には、副大統領より、ハイティでの協力、カリブ海の海洋保全、グローブ計画への関心表明があり、5月の次官級会議の重要性の指摘があった。
 これに対し、総理より、副大統領訪日時に合意したグローブ計画等5項目の着実な実施の必要性に言及の上、来年初頭にNGOや途上国の参加も得てコモン・アジェンダ世界会議を開催したい旨述べた(副大統領より協力を約束)。
 なお、副大統領の示唆を受け、アジア酸性雨モニターについての検討も行われることとなった。

・フロンガス規制問題
(副大統領)ロシアのフロンガス規制に係る世銀の特別イニシアティブへの日本の参加を得たい。
(総理)世銀や関係国と協議しつつ検討中。

・気候変動枠組条約
(副大統領)本年12月の京都会議に向けた日本の努力を評価。地球温暖化防止に向けての途上国のコミットメントを得ることが重要。
(総理)途上国取り込みは必要だが、その手段については相違があり得る。相談しながら、実効性のある議定書策定に務めたい。

・捕鯨問題
 捕鯨問題については、客観的且つ冷静に議論すべきであり、専門家間の科学的検討が必要とのやりとり。

9.コーエン国防長官の総理表敬(26日)

(1)
橋本総理はブレア・ハウスにてコーエン国防長官の表敬を受けた。表敬ということで実質的な議論はあまりなかったが、次のようなやりとりがあった。

(2)
長官より、「日米防衛協力の指針」見直しを今秋までに完了するよう努めたい、透明性が重要であると述べたのに対し、総理より、中間的な報告を行い、一部に存在する疑問を解きたい旨応答。

(3)
更に長官より、米国は、軍同士の交流推進を含め対中国・ロシア関与政策をとっているとしたのに対し、総理より、軍同士の交流から誤解が解けるのは結構なことであり、日本としてもかかる努力が必要である旨応答。

10.評価

(1)
最近2ヶ月のクリントン第2期政権主要メンバー(オルブライト国務長官、ゴア副大統領、ルービン財務長官、コーエン国防長官等)の訪日により構築されてきた包括的な協力関係を土台とし、幅広い分野について両首脳が、率直かつ踏み込んだ議論を行うことができた。

(2)
その結果、首脳会談では、現在のバランスのとれた日米協力関係を更に進展させていく上で、次のような成果をあげた。

(イ)安保関係
 「日米安保共同宣言」に沿って安保関係を充実させることで一致。具体的には、「日米防衛協力のための指針」の見直し作業を促進すること、沖縄問題に引き続き取り組むこと(大統領より、土地使用権原問題への総理の対応を高く評価する、沖縄問題について敏感さをもって協力していく旨の発言。)で一致。また、「宣言」に基づく軍事態勢についての協議への両国のコミットメントを確認。

(ロ)経済問題
 経済問題では、総理より日本の諸改革の進展状況につき説明し、大統領よりは抜本的な規制緩和を含む日本経済の構造改革に対する歓迎の意が示された。また、日本経済の内需主導型の成長促進と日本の対外黒字の大幅増加の回避が共通の目的である旨確認された。

(ハ)アジア太平洋地域でのパートナーシップ
 対中政策、対朝鮮半島政策、カンボディア等に関する日米協調の重要性を確認した上で、率直な意見交換を行った。

(ニ)グローバルな日米協力
 デンバー・サミット、テロ対策、国連改革、コモン・アジェンダの推進等における政策協調を確認。この関連で、在ペルー日本大使公邸占拠事件に対する米国の協力に謝意を表するとともに、両国はテロリズムと戦う決意を新たにした。

(3)
その他に、議会訪問やNPCスピーチを通じ、日本の諸改革への決意とその意義、日米安保体制へのコミットメント等について説明した。また、ゴア副大統領と意見交換を行ったほか、コーエン国防長官、ギングリッチ下院議長から表敬を受けた。
 ゴア副大統領との会談においては、コモン・アジェンダの更なる推進につき見解が一致し、特に、環境関連の協力強化、及び、来年初頭東京において開催予定のコモン・アジェンダ世界会議の成功に向け、協力していくこととなった。(4)橋本総理にとり初めての米国公式訪問であったが、クリントン大統領との首脳会談は6回目であり、到着当日深夜の懇談、ホワイトハウスの私的居住部分における昼食会等により両首脳間の暖かい関係が示されるとともに、既に確立されている総理と大統領の信頼関係が一層強固となった。(クリントン大統領の総理に対する友情と気づかいが訪問を通して感じられた。)

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