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1.基本的考え方グローバルな貿易投資の流れを最も効果的に拡大させるとためには、次期交渉は、農業、サービスといった既に合意済みの分野に加え、鉱工業品関税や投資ルールの策定を含む包括的な交渉とし、一括受諾方式によって3年程度の比較的短い期間での合意を目指すべきである。
2.各論
(1)農業
我が国としては、次期農業交渉の枠組みを検討する際、UR合意の実施の経験について注意深く検証を行うとともに、特に非貿易関心事項等の要素に注意を払うべきと考えている。具体的には、環境保護、農村地域の活性化、国土保全等の農業の多面的機能や食料安全保障等の非貿易的関心事項が適切に反映されること、輸出国と輸入国の権利義務関係のバランスが図られること、及び途上国には、協定の実施状況やニーズ等も含め、適切な対応が図られるよう留意することが必要である。(2)サービス
GATS自身が示すとおり、適切な規制の枠組みの下で、漸進的なサービスの自由化を図ることは全ての加盟国にとって利益となる。現在サービス理事会で行われている情報交換プログラムを年末までに終了し、その後評価を行った上で、途上国の立場に配慮しつつ指針を策定していく等、既に合意されている作業を着実に実施していくことが次期交渉の成功、特に先進国・途上国がともに裨益するサービスの自由化達成のために鍵となる。(3)鉱工業品関税
関税引き下げ交渉に際し、先進国、途上国の区別なく、幅広い利益を実現するために、あらかじめ交渉対象となる分野を限定することなく、幅広い品目を対象とした包括的アプローチを採用すべきである。具体的な方式については、比較的短期間に合意を得るべく、対象分野の特性や各国の事情等にも配慮しつつ、どのような引き下げの方式が適当か検討していく必要がある。
林産物・水産物については、輸入関税のみではなく、輸出関税の譲許、引き下げや、輸出規制等輸出国側の非関税措置をどの様に扱っていくかについても、輸出国・輸入国の権利義務のバランスや地球的規模での環境問題等の視点から検討を行うべきである。(4)投資
投資の適切な保護と自由化を規定する包括的な多国間の投資ルールを策定することは、中長期的に投資環境の整備を通じ経済発展に貢献する。なお、投資ルールは、各国の柔軟な開発政策の実施を一律に制約するのではなく、経済発展段階に応じた適切な配慮を行うべきものと考える。更に、貿易に関して十分な経験を有し、先進国・途上国双方がコンセンサスにより意思決定を行うWTOは、多国間投資ルール策定交渉を行う場として適当であり、次期交渉に投資ルール策定を含めるべし。(5)競争
競争に関する最小限の基準の策定に向けて、次の論点について議論を深めていくことが有益である。(イ)競争法・政策の分野ではどのような一般原則が考えられるか。(ロ)反競争的行為の中で、特に貿易の流れに影響を及ぼすものは何か。(ハ)競争法・政策の適切な運用を確保するために必要な執行機関の権限と手続規定は何か。(ニ)国際的な反競争的行為を阻止するためどのような国際協力の仕組みが考えられるか。また、貿易措置(例えばアンチ・ダンピング)についても、競争の観点からの見直しが重要である。(6)政府調達の透明性
WTO加盟国間で広く政府調達の透明性を確保するための法的枠組みを策定することを支持しており、次期交渉開始までに透明性合意を決着させるべく議論を加速化させることが重要と考える。調達機会の公表の透明性等、中核となる原則を中心に規定することにより、多くの国に受け入れられる実効性ある法的枠組みを設計することが重要であると考える。今後この方向に沿って、柔軟、実効的、かつ簡素な枠組みづくりに向けて、具体的提案を行っていく所存である。(7)環境
貿易と環境は相互支持的であることが必要であり、WTOは持続可能な開発にも寄与するものでなければならない。貿易と環境についての議論を進展させるためには、加盟国間に共通の問題意識を醸成すること、及び市民社会の声にWTOが応えていくことが重要である。現行のルールが環境を名目とした不当な一方的、保護主義的な貿易措置を排除するのに十分であるか、また、多国間の環境協定(MEAs)とWTOのルールを如何に整理するかといった観点から、貿易と環境の問題を引き続き検討すべきである。また、その際、WTOとしてMEAs事務局や環境関連の国際機関との意見交換を密に行っていくことが不可欠である。(8)貿易円滑化
貿易円滑化の具体的内容については多岐にわたるが、98年3月のシンポジウムなどを通じて、貿易取引上の利益の観点からも重要性が一層明らかになっていると認識する。今後、WTOにおいて各国の現状や産業界の意見を踏まえつつ、貿易問題の一環として必要な議論を進めて行きたい。なお、議論を進めるにあたっては、従来からWCO、APEC、ASEM等の様々な国際機関、フォーラムで行われている作業との重複を避けつつ、どの様な分野においてWTOが貢献できるか検討していきたい。(9)アンチ・ダンピング(AD)
AD協定については、貿易と競争との観点に留まらず、保護主義的濫用を防止するとの観点からも次期交渉に向けて議論を進めるべきと考える。AD措置は、WTOの基本原則である、無差別原則(最恵国待遇の付与)、譲許税率を超える関税賦課の禁止の例外規定であり、その扱いは厳に慎重とされるべきものである。しかし、実際は他の貿易措置に比べ発動が比較的容易であること、特定国に対する輸入制限効果が大きいことから、しばしば保護主義的な濫用につながりやすい側面がある。我が国は、途上国を含む少なくない締約国が、AD措置の不公正な発動に懸念を示し、協定条文から曖昧性や恣意性を排除すべきとの問題提起をしたことを支持する。(10)TBT
TBT協定については、今後、更に議論を深めるべき点があると考える。例えば、国際規格・ガイドや国際標準化機関のあり方について、国際規格等の策定手続等も含め、国際標準化機関とともに如何に取り組んでいくかを議論していく必要がある。また、ワン・ストップ・テスティング(注:1回実施された試験・認証結果が世界中どこでも通用するという概念)の実現や相互承認の展開を円滑にすべく、必要に応じてTBTの規律の見直しを行うことも重要と考えている。(11)SPS
我が国は、SPS協定に係わる問題についても大きな関心を有しており、引き続き、議論に積極的に参画していきたいと考えている。(12)TRIPS
知的所有権の保護は、自由貿易及び経済の健全な発展のための不可欠の前提であり、適切な保護により予見可能性の高い貿易・投資環境を整備していくことは極めて重要と考える。途上国を含め、各国が既存のTRIPS協定を着実に実施するに留まらず、次期交渉において、然るべく見直しを行うべきと考えている。(13)地域統合
最近の地域統合の深化、拡大の動きの中で、多角的貿易体制の優位が揺らぐことがないようにするため、今後、地域貿易協定に対し、より一層厳格な検討を行う必要がある。具体的には、(イ)ガット第24条等、WTOルールの解釈の明確化、(ロ)ガット24条制定時に想定されなかった状況に対応する規律ルールの強化、(ハ)地域貿易協定とWTO協定との整合性を確保するための審査手続きの見直し、についての検討が必要である。
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