(1) |
農業
(質問のポイント)
(イ) |
ケアンズ諸国の批判に対する日本の立場。 |
(ロ) |
閣僚会議宣言案の農業関係部分の一次案から二次案への変更点如何。二次案に対する日本の対応。 |
(ハ) |
資源の保全、水質管理等の水紛争に関する日本の対応。 |
(ニ) |
日本の農業提案は、自国の主張を述べるだけで、加の提案やEUの「Everything but arms」のような途上国や大向う受けするような文言が含まれていない。大向う受けし、多くの国から賛同を得られるような提案をしてはどうか。 |
(ホ) |
市民社会の環境への関心にどう応えていくか。 |
(答)
農水省柄澤室長より概要以下の通り応答。
(イ) |
農業交渉日本提案は国民的合意の下に作られたもの。現在農業協定20条の下で農業交渉が行われており、カタル閣僚宣言において交渉の途中で、ルールを変更するようなことは認められない。そのような観点から我が国は、カタル閣僚宣言等における非貿易的関心事項の位置付け等についてケアンズ諸国に対し適切に反論をしている。 |
(ロ) |
宣言案の農業部分は1次案と2次案では、変更点はない。カタルでは、今後とも農業交渉日本提案に基づく我が国の主張を続けていくための土俵がつくられることが重要であると考えている。 |
(ハ) |
農業には水問題を始め自然環境や国土保全が深く係わっており、それが農業の多面的機能でもあってそれぞれの国にある。カタルでは、今後の交渉において、このような共通の問題点を強調しつつ農業の多面的機能が主張できるような枠組みを作っていく。 |
(ニ) |
我が国は、食糧自給率が40%を切っているが、食糧安全保障は途上国だけの問題ではないと考えている。途上国に対する対応も市場アクセスの改善だけが途上国のためになる手段ではなく途上国の食糧自給率を向上するための支援や、国際食糧備蓄などが途上国のためとなると考えられる。従って、途上国のために何ができ、何ができないか、慎重に対応する必要がある。確かに、我が国農業提案が一見大向う受けするものであるか否かはわからないが、よく読んでもらえば、日本のことだけを考えて提案しているのではなく、強い農業も、弱い農業も、各国の多様な農業が共存していくためのルール作りを提案していることが御理解頂けると思う。
他国から賛同を得るには様々な方法があり、例えば我が国はEU等と共催して非貿易的関心事項に関する国際会議を開催し、多くの国の参加を得るなどして我が国の提案に賛同してもらえる国を増やしている。 |
(ホ) |
農業交渉のほか林産物、水産物交渉は、いわば環境問題そのものでもあり、ラウンドが立ち上がり交渉が開始されれば地球規模の環境問題や有限天然資源の持続的利用の観点を踏まえた議論ができるような交渉の枠組みを確保したい。 |
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(2) |
TRIPs
(質問のポイント)
(イ) |
AIDSなどに苦しむ途上国に配慮したTRIPs協定のあり方についての見解。 |
(ロ) |
TRIPsについては、議題を「TRIPsと公衆衛生」と「TRIPsと医薬品アクセス」どちらにするか議論があると聞くが、本件に対する日本の立場はどうか。 |
(答)
伊原国際機関第一課長より概要以下の通り説明
(イ) |
AIDSなど感染症問題に対する取組みには様々なものがあるが、ここでは知的所有権と医薬品アクセスに限って説明する。TRIPsには特許権者の承諾がなくても特許権を実施することができる強制実施権が認められているが、強制実施権によって自国の企業にコピー薬の製造を認められていても、アフリカ諸国には自国に製造能力がない場合がある。TRIPs協定の運用・解釈等でどこまで最貧国を支援することが出来るか、また、右を閣僚宣言の形で表明することが可能か、現在文書上で調整している。 |
(ロ) |
途上国は議題を「TRIPsと公衆衛生」にすべき旨提案しているが、議題を「TRIPsと公衆衛生」としてしまうと、様々な問題が含まれ議論がすすまなくなる恐れがある。AIDSなどの広域感染症の緊急性を考えれば、「TRIPsと医薬品アクセス」という議題として問題の早期解決を図るべきであり、またそれが途上国にとっても望ましいというのが日本の立場である。 |
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(3) |
サービス
(質問のポイント)
(イ) |
電気通信に関する交渉における日本の立場。 |
(ロ) |
政府調達に関し、政府調達協定以外に新しい枠組みを作るという動きがある由だが事実か。 |
(ハ) |
GATSにはサービス貿易の自由化を評価するよう規定されており、本件については途上国も関心が高いと承知しているが、サービス貿易の自由化の評価はどのように行われているのか。 |
(答)
下川サービス貿易室長より概要以下の通り応答。
(イ) |
電気通信では、市場アクセスに関する問題以外に、様々な国内規制があることが問題。電気通信に関する交渉では、途上国については第四議定書に基づき約束を行うことを求めていくことが重要。既に第四議定書を約束している先進国については第四議定書以外の約束を行うことになると考える。 |
(ロ) |
サービスの世界では、政府調達については、GATS規則作業部会で補助金及びセーフガードと共に検討されている(伊原国際機関第一課長より、政府調達協定と政府調達の透明性に関する協定の概要及び両者の関係等について説明)。 |
(ハ) |
サービス貿易の自由化の評価については、統計・データの不足といった問題もあり、必ずしも各国が期待するように進んでいない面もあり、途上国からは、自由化の評価について判明しなければ自由化約束交渉に入るのは困難との声もある。他方、自由化の評価は交渉の前提ではなく、評価については自由化約束と並行して行っていくことが検討されている。 |
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(4) |
環境
(質問のポイント)
(イ) |
環境については、EUが強く交渉議題にするよう主張している。シンガポール非公式閣僚会合では日本はEUよりの発言をしたと聞いているが、日本とEUの主張は同異なるのか。 |
(ロ) |
(予防原則を国内制度に導入することについては時期尚早という旨の鈴木参事官の説明を受け)予防原則の導入を時期尚早と判断する理由は何か。 |
(答)
伊原課長より概要以下のように説明。
(イ) |
環境問題そのものに日本は熱心に取り組んでいる。しかし、WTOは貿易を専門に扱う機関であり、その中で環境問題を如何に取り扱っていくか、貿易と環境をどう両立させるかという観点から、環境について検討されることになる。
EUが新ラウンドで交渉議題にするよう強く主張しているものに予防原則がある。これは、科学的な確実性が十分でない場合であっても貿易制限的な措置をとることを許容するという原則。EUは予防原則に基づいて国内制度を作っているが、それをそのままWTOの世界に持ち込むことが適切かどうかは別である。 |
(ロ) |
貿易交渉は自国の利害を反映して行われる。時に誰も反論できない「正義」という」理由を前面に出して自国の利害を主張することもある。その意味で、交渉を行う際には「正義」という背後に如何なる利益が隠されているかよく見極め、いかなる制度が日本にとって一番良いものなのか考える必要がある。従って予防原則という言葉には何が盛り込まれているのか、まずは、その定義を明確にし、自らの国の制度、枠組みに適合するか否かを精査することが重要である。 |
鈴木参事官より概要以下のように説明。
(ロ) |
WTO協定上でも、検疫に関するSPS協定などで予防原則の考え方は反映されており、国民の健康を守ることは国として当然の義務である。日本としては、EUの問題意識は共有するが、日本の制度、国情を精査して問題をとらえる必要がある。 |
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(5) |
アンチ・ダンピング、投資
(質問のポイント)
(イ) |
投資に関し、途上国に対する配慮をどう行うのか。 |
(ロ) |
アンチ・ダンピングの今後の取扱い。 |
(答)
伊原課長より概要以下のように説明。
(イ) |
途上国の中には、マレイシアのブミプトラ政策などWTOの基本的なルールである内外無差別の原則に反するような政策を行っている国もあり、今後どの程度のルールを策定するのかは検討すべき課題である。 |
鈴木参事官より概要以下のように説明。
(ロ) |
アンチ・ダンピングについては米国自身も被害者になってきている。しかし、ADを使って国内産業の保護を行おうとする議会との関係が困難である。ADについては、米国が孤立している状況にあり、日本はその他の国と協調して議論を進めていくことになると考える。 |
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(6) |
その他
(質問のポイント)
(イ) |
カタルでの閣僚会議に関し日本政府からの代表団のメンバー構成及びWTOに関する日本政府の意思決定方法。 |
(ロ) |
カタルでのNGO向けのブリーフィングの有無、又設備などの便宜供与の内容。 |
(ハ) |
会議日程やテロ関連で緊急事態の際の対応。 |
(ニ) |
EUや米国を見ていると、交渉の窓口が一つにまとまっているが、日本でも一つの省が交渉をリードすることを考慮しても良いのではないか。 |
(ホ) |
WTOに関して日本は何を目指しているのか。日本の政府全体としてのビジョンが不明確。 |
(ヘ) |
WTOの意思決定に、途上国は排除されているのではないか。 |
(答)
伊原課長より概要以下のように説明。
(イ) |
日本政府の代表団は、大臣はじめ関係省庁及び我が省の担当者200人をこえる規模となる予定。意思決定のプロセスについては、事務レベルですり合わせを行い、最終的には閣僚が意思決定を行う。特に、農業など政治的関心が高い分野では政治家の関与が重要。 |
(ロ) |
NGO向けのブリーフィングは機会を作り行いたい。その他詳細は、追って説明したい。 |
(ハ) |
閣僚による一般演説が行われることは決まっているが、それ以外の会議の日程については詳細未定。会議期間については、13日で終わるべく全力をあげる。 |
(ニ) |
日本の発言は各省とすり合わせを行っており、一つの声になっていないとは思わない。EUは理事会の決定に強く拘束されるし、米国も議会の権限が強く議会との調整が難しい。各国にはそれぞれの意思決定メカニズムがあり、日本の意思決定システムが不十分だとは思わない。日本に欠けているとすれば、国民的な関心。 |
(ホ) |
日本政府全体のビジョンは、「ルールに基づく多角的貿易体制が重要である」ということ。WTOはこれを具体化したもの。形成された多角的貿易体制を如何に生かしていくか、ということは国内政策の重要な課題である。 |
(ヘ) |
WTOの基本原則はコンセンサス方式だが、実際問題として様々な背景を持つ加盟国全てが常に参加する形で意思決定を行うことは非効率的で困難。そこで、少数で集まって議論を行い、できるだけ早く参加できなかった加盟国にも議論の内容を知らせる方法を通常とっている。効率性と透明性の両立が重要。 |
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