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WTOカンクン閣僚会議に関する説明会


2003年11月1日


1日、外務省国際機関第一課の主催により民間団体等を対象にして標記説明会を行いました。

場 所:外務省芝公園庁舎19階会議室
時 間:14時から17時まで
参加者:民間団体33団体、報道関係者6名
説明者:
 ・佐藤外務省国際機関第一課長
 ・下川外務省サービス貿易室長
 ・実重農林水産省国際経済課長
 ・伊藤経済産業省通商機構部通商参事官

1. 上記の説明者より、カンクン閣僚会議に至るまでの議論、及びカンクンでの議論ないしはカンクン閣僚会議文書改訂二次案の焦点(農業、非農産品、シンガポール・イシュー等)について説明。また、今後行われる議論の道程についても言及。

2. 続いて質疑応答が行われたところ、概要以下の通り。


(1)改訂第2次案について

【質問・意見のポイント】
   カンクンで示された改訂第2次案(農業部分)に関し、日本側の主張が多少は反映されたものとなっているが、このままでよいのか。仕切り直しにして、農業の多面的機能に関して大胆に踏み込むようなものにすべく、努力した方がよいのではないか。

【答】実重農水省国際経済課長
(イ) わが国を含むG10(スイス、ノルウェー、韓国等10ヵ国グループ)は、(1)非貿易的関心事項の反映、(2)上限関税に関する記述の撤廃、(3)関税割当に関する修正を共同で提案している。現在の改訂第2次案はWTOから出た文書の中では、日本やG10の立場に一番近い。このため、改訂第2次案のわが国にとって有利な記述は残した上で、更なる成果を上げていきたい。
(ロ) APECでは改訂2次案をベースに議論していく旨表明されたが、現在ジュネーブで改訂第2次案をベースにする明確な合意はない。


(2)交渉上の戦略について

【質問・意見のポイント】
(イ) カンクン会議では途上国の力が発揮された。日本は取り残されたということになるのではないか。日本は米EUとは異なっているので、途上国とうまく協調すべきではないか。
(ロ) 投資に関する交渉において日本は孤立していたのではないのか。

【答】実重農林水産省国際経済課長
(イ) 日本は、スイス・ノルウェー等とともにG10を結成し共通する主張を行っている。このように関心を共有する国々と連携して交渉をしていくことが重要である。また、これらの国々から、途上国に対する働きかけを行っている。
多角的貿易体制を推進していくためには、野心の水準を収斂させていく努力が必要である。各国が野心の水準を下げていかなければ、合意に至ることは難しい。同じ考えを持つ国々と連携して、このような声を大きくしていくことは交渉の進展に貢献する。

【答】伊藤経済産業省通商機構部参事官
(ロ) シンガポール・イシューについては、14日午後のあのタイミングで交渉が打ちきられたのは残念。
(ハ) 途上国のコンセンサスを得るのは難しいが、途上国も一枚岩というわけではなく、色々な立場の国がある。それぞれの国の立場を踏まえて交渉していきたい。
(ニ) シンガポール・イシューをどういう枠組で話し合うのかについても議論はある。


(3)NGOへの対応

【質問・意見のポイント】
   今回の会議で途上国を動かしていたのはNGOであった。米EUは内外のNGOに対するブリーフを行うなど、対応をしっかり行っている。日本はそのような外交をやってきていない経緯があるのではないか。

【答】佐藤外務省国際機関第一課長
(イ) 市民や経済界のとの対話は重要である。外国のNGOとの対話も重要であるので今後やっていきたい。

【答】下川外務省サービス貿易室長
(ロ) NGOの活動や意見はNGOの方々が想像される以上に各国及びわが国の政策判断決定に影響している。交渉の過程においてもNGOとの意見交換をしており、NGOの意見を参考にしている。


(4)FTA交渉

【質問・意見のポイント】
   FTAは途上国の切り捨てである。通商交渉の軸足をFTAに移していくとの報道が多いが、その事実について確認したい。

【答】佐藤外務省国際機関第一課長
(イ) 多国間交渉を中心とするとの政府の方針には変わりはない。
(ロ) 二国間の交渉は力が強いものにとって有利である。よって、多国間のグローバルなレベルでのルールに基づいた体制を作ることは途上国にとっても重要。
(ハ) 人的資源の観点からも、各国が力を合わせてルールを作っていくことが効率的である。また、農業補助金削減のようにグローバルな枠組においてしか決められない事項もある。

【質問・意見のポイント】
   FTAに関する情報公開、市民との対話はWTOに比して遅れているのではないか。

【答】佐藤外務省国際機関第一課長
  バイであることの多いFTAは確かにWTOやマルチの環境会議などに比してNGOの関与は薄い。今後の検討課題であると思う。


(5)わが国の農業

【質問・意見のポイント】
(イ) 貿易の自由化を考えると、わが国の食糧自給率が低いことは問題である。自給率を上げるための生産刺激的な方策が必要なのではないか。
(ロ) 農業の生産性が低いのは農耕用機器や土木インフラなど構成要因のコストの問題もあるのではないか。

【答】実重農水省国際経済課長
(イ) 自給率は国内消費に対する国内生産の比率の問題である。
(ロ) 生産に関しては、国内の生産性を上げながら、生産力を強化していく必要がある。この際の予算については、農業にどれだけ充てることできるかについて国民的なコンセンサスが必要である。皆様の声を拡げていっていただきたい。
(ハ) 消費に関しては、コメの消費量の減少にみられるように、国民の食生活が変化している。栄養面でもアンバランスとなってきているので、これを改善すべく文科省と厚労省とも協力して「食育」を推進している。また、食糧の廃棄分を減らすことも自給率の改善につながる。日本の食生活は非常に豊かであり、すべてを国内生産だけで賄えないことも確かである。国内生産と、安定的な輸入、備蓄の組み合わせで食料の供給を確保していく必要がある。
(ニ) 農業のコストに関しては、機械等農業生産資材のコスト削減が必要であるが、同時に、農産品の最終価格の75%が流通過程によるものであることを考えると流通過程の改革も必要である。
(ホ) 野菜について行った調査によると、国民の多くは日本産の農産品の価格が中国産より2, 3割高い程度であれば日本産を購入したいと思っている。こうした価格水準を念頭に置いて、国内において努力することが必要であるし、行政としてもこれを支援したい。


(6)中国・ASEANの対応

【質問・意見のポイント】
(イ) カンクン会議の結果に対し、中国やASEANはどのように対応しているか。
(ロ) アジアにおける地域連携はどのように動いていくのだろうか。

【答】伊藤経済産業省通商機構部参事官
(イ) 自給率は国内消費に対する国内生産の比率の問題である。
(ロ) 多くのアジアの国はWTOの動きに関わらず、日本とFTAを締結したいと考えている。日本としてはこれらの国とFTAを締結する用意はある。しかしASEANにとって重要なのは、ASEAN外とFTA結ぶと同時に、ASEANが一つの自由貿易圏として機能することである。

【答】佐藤外務省国際機関第一課長
(ハ) APECでの閣僚ないし首脳宣言に含まれているように、アジアとしてもカンクン会議の結果は残念に思っている。そして、無から始めるのではなく改訂第2次案の上に積み上げていくべしとのメッセージを発出した。

(7)ドーハ・ラウンド終了の期日

【質問・意見のポイント】
   ドーハ開発ラウンドの期限は2005年1月1日に変わりはないのか。

【答】佐藤外務省国際機関第一課長
   現在のところ、期限を更新するとの決定はない。現実的になかなか難しいのは確かである。


(8)通商政策の形成過程

【質問・意見のポイント】
   カンクン会議の決裂をうけて、日本としての対応についての国民的議論を政府の責任においてやらなくてはならないのではないか。

【答】佐藤外務省国際機関第一課長
(イ) カンクン会議の前と後で日本としての実現したいものについての考え方が変わったということはない。新しい局面への対応には、知恵を結集して対応すべきである。

【答】実重農水省国際経済課長
(ロ) 食料・農業・農村基本計画の見直しに関連して、農業についての構造改革についての国民的な議論を展開する時期となっている。グロバリゼーションは不可避的に進展していく。我が国としては、国土・環境保全等の農業の多面的機能を重視する一方で、構造改革をしながら農業の生産性を向上していくことが重要と考えている。


(9)貿易理論における農業の位置付け

【質問・意見のポイント】
   「多様な農業の共存」という考え方は既存の比較優位原則を修正する考え方なのではないか。

【答】実重農水省国際経済課長
  おっしゃるとおり、農業は工業製品とは異なっている。農業は工業製品と別グループにより交渉を行っているし、農業協定にもドーハ閣僚宣言においても非貿易的関心事項への配慮の記述がある。我が国は各国の多様な農業が共存できるような、非貿易的関心事項に十分配慮された貿易ルールが確立されるよう努力している。


(10)途上国

【質問・意見のポイント】
   途上国が大きな発言力を有するようになってきているが、これに対しどのように対応していくつもりなのか。

【答】伊藤経産省通商機構部参事官
  一部の途上国は道義の闘いで勝利したと話しているが、道義の話をしている限り、WTO交渉は前進しない。もう一度経済論議の場にしていかなければいけない。途上国は経済原則に基づいた重要なプレーヤーとして活動すべき。


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