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<提案>投資家の予見可能性を向上させることは、直接投資を促進し、世界貿易の拡大にもつながり、結果として、世界経済の発展に有益であることから、WTOの次期交渉において、投資に関するルールの策定を行うべきである。当該ルールは、直接投資に関する政府措置を規律することを目的とし、受け入れ国の制度の透明性や安定性の向上及び投資家が従うべきルールを明確にすることにプライオリティをおくべきである。当該ルールは、直接投資の促進に実質的に貢献すると同時に、開発途上国の開発上のニーズとの適切なバランスに考慮を与える必要がある。
<背景>
- 経済のグローバル化の進展の中で、貿易と投資は、企業の海外事業展開において不可分のものとなっている。しかし、サービス業における投資については既にGATSによりある程度のルールが確立しているのに比べ、特に製造業を中心とした投資に関してのルール整備は遅れている。したがってWTOにおいて投資に関する国際的なルールを整備することは、投資家の予見可能性を一層向上させ、国境を越える投資の更なる拡大をもたらし、世界貿易の拡大をもたらす。
- WTOにおける投資ルールの策定は、先進国のみならず途上国にとってもメリットとなる。投資ルールの策定によりもたらされる直接投資の拡大は、途上国の経済を活性化させ、雇用を増加し、技術レベルを向上させよう。世界経済がアジアに端を発した経済困難に見舞われる中、投資環境の一層の改善は、直接投資の途上国への環流のためにも重要。
投資ルールは、途上国自身にもメリットをもたらすものであるが、その策定にあたっては、途上国の開発上のニーズに適切な考慮が払われる必要がある。例えば、急激な投資自由化は、途上国の開発政策に大きな影響を与えかねない。また、投資ルールは、持続可能な開発につながる投資環境を保証するものでなくてはならない。
- WTOにおける投資ルールの策定に際しては、全メンバーの利益を反映させることが重要。したがって、メンバー構成の異なる他のフォーラムで行われた交渉からは明確に区別される。具体的にはWTOの投資ルールに含めるべき主要な要素としては以下が含まれる。
(1)投資には幅広い形態が含まれるが、受け入れ国に雇用の増加や技術移転効果をもたらし、直接に経済発展に貢献する投資は、企業が受け入れ国との長期的な経済的関係を継続することを念頭に行う直接投資である。
WTOでの投資ルールは、直接投資を対象とし、長期的な経済関係設立以外を目的とする短期的資本取引や、一定の資本支配率を下回るような投資は原則としてルールの対象から除くことが適当。特に、ポートフォリオ投資に関しては、金融秩序維持の観点から様々な議論が行われており、こうした議論との関係も慎重に整理していくことが必要。(2)投資受け入れ国の制度の透明性と安定性の向上は、投資家にとって中長期的視点に立った安定的な投資を可能とするものである。また、投資の促進のためには、受入れ国政府の手続きが不透明であるなどの結果、公平・迅速な処理がなされないといった事態を回避する必要がある。GATTやGATSのルール公表、国内規制の手続きに関する既存の規定など適切な規定を参考にしつつ、規定を整備していくことが必要。
(3)最恵国待遇及び内国民待遇はWTOルールの基本であり、投資ルールにも盛り込まれるべきである。特に、拠点設立後の企業に対しては、外国企業と国内企業で差を設ける合理的な理由は多くの場合存在せず、原則として無差別な待遇が与えられるべきである。他方、投資の自由化(設立前の内国民待遇の問題)については、開発政策とのバランスを図りつつ、漸進的に行うことが望ましく、いわゆるポジティヴ・リスト方式が望ましい。なお、投資環境の透明性を向上させる観点から、可能な限り制限措置をリストアップすることを検討すべきである。また、投資ルールに関しては、投資の適切な保護の提供も基本的な要請の一つであり、他の国際的な投資ルールを参照しつつ適宜ルールを検討すべきである。
(4)途上国の開発政策などの政策に対応して講じられるパフォーマンス要求は、貿易に対し制限的、阻害的な影響をもたらすとともに、投資家の効率的な事業展開や経済環境の変化に即応した柔軟な対応を困難にする可能性がある。他方、WTOにおける投資ルール策定にあたっては、途上国の開発政策の視点にも配慮すべきことは当然であり、パフォーマンス要求の扱いについても内容を十分に検討するべきである。なお、投資インセンティブについても、途上国の経済開発にとっての重要性をも踏まえ、慎重に検討する。
(5)紛争処理に関しては、WTOのシステムがこれまで基本的に有効に機能し、迅速な紛争解決を可能としてきたことを踏まえ、新たに策定される投資ルールには既存のWTO紛争処理ルールを適用することを検討することが適当であり、投資家対国の紛争処理メカニズムは導入すべきでない。 なお、投資家による紛争提起については、それが受入れ国にとって大きな負担となりかねないことや政府間機関たるWTOの性格を変化させかねないことに留意すべきである。
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