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日本提案(競争)

<提案>

 関税の引下げ等国境段階での貿易障壁の削減が進んだ結果、貿易に影響を与える企業の反競争的行為に対応することが重要な課題となってきている。また、企業活動が国際化する中で、貿易に影響を与える企業の反競争的行為に適切に対処するためには、各国政府間の協力も重要である。このため、各国がこれら行為に適切に対処しうるよう法制度を整備するとともに、法制度の効果的な執行を確保すること、また国際的な協力を促進することを目的として、WTO次期交渉において、競争法・政策についてとり上げるべきである。その際、競争法・政策についてのマルチの協定の整備が、オプションとなろう。

<背景>

  1. 関税を含む国境段階での貿易障壁は、GATT及びWTOの数次にわたる交渉により、相当程度減少しつつある。この結果、国境の内部における各種の非関税障壁、なかんずく企業の反競争的行為が、貿易に影響を与える残された問題としてクローズアップされてきており、各国政府が貿易に影響を与える企業の反競争的行為に適切に対処していく必要性が高まっている。

  2. また、企業活動の国際化に伴い、企業の反競争的行為は、複数国にまたがって行われたり、外国における行為でありながら自国市場の競争状態に悪影響をもたらすなど、国際的な広がりを有するようになってきている。こうした行為が有する貿易阻害効果を的確に判断し、必要に応じて当該行為を効果的に阻止または防止することは、一国の政府当局だけでは一般に困難である。また、自国の競争法や貿易措置を用いて他国にわたる行為を排除しようとする場合には、しばしば、他国との間に摩擦を惹起するのみならず、実務的にも執行の実効性を確保し難い場合が多い。

  3. 翻って、競争法・政策の国際的な整備状況を見ると、現状においては、WTO加盟国の中でも未だに競争法を有していなかったり、競争法はあっても効果的に機能していない国が多数存在するなど、企業の反競争的な行為への取組が十分に行われているとは言えない状況である。国際的に重大な影響を及ぼす反競争的行為への対処に関しては、二国間協定やWTO以外の国際機関の場において協力活動が進展しており、一定の成果を上げているが、こうした取組は相互恩恵的でないと成立しにくいものであるため、競争法に関する経験を蓄積した一部の先進国間に限定されやすい。

  4. 以上のことから、WTO加盟国における競争法・政策及びその執行体制の整備を促進し、また、各国政府間の競争法・政策にかかる協力を強化することを目的としたマルチラテラルな枠組が望まれるところであり、そのためにも、WTO次期交渉において、そのような枠組みを整備することを含め、競争法・政策についてとり上げるべきである。その際、加盟国の競争法・政策及びその執行体制の整備の現状等を考慮し、漸進的なアプローチを採ることが重要である。

  5. WTOにおいて競争法・政策に関する協定を策定する場合には、まず、WTOの基本原則である透明性と無差別性の考え方が確保されること、及び、協定において競争法・競争政策を整備していくべきである旨を規定することが検討されるべきである。同時に、WTOの重要な目的の一つが財・サービスの貿易の拡大であることに鑑み、貿易に影響を与える企業の反競争的な行為を対象とすべきであろう。

  6. さらに、WTOの競争法・政策のルールづくりに当たっては、それが途上国の開発に与える影響を十分に考慮し、適切な配慮を行っていくことが重要である。WTO加盟国は経済発展状況において様々であり、競争政策に関しても、競争法を有しない国が多数ある一方、競争法の執行に長い経験を有する国も存在する。また、多くの途上国においては、行政上の人的資源、専門的知見などが必ずしも十分でなく、競争政策の重要性に関するカルチャーの醸成、競争法やその執行体制の整備などに準備期間が必要である。このため、国ごとのこうした相違に適切な配慮を行っていくべきである。例えば、国内競争法の制定が困難な場合に、透明性や無差別性の原則を確保しつつ競争政策を効果的に執行するために、競争法に代わり得る方法があるかどうかについて、今後議論することは有益である。また、競争法・政策の整備に当たっては、その内容に関して一定の柔軟性が許容されよう。

  7. 国際化する企業の反競争的行為に対応し、貿易措置や国境を越えた競争法の適用により生じる摩擦を回避するために、競争法執行についての情報交換など各国政府間の各種協力等の方策についても検討すべきである。また、途上国の競争法の執行体制を強化する観点から、先進国による技術的支援も重要である。

  8. 競争法・政策のルールの加盟国における実効を確保することは重要であるが、個別事件への法適用の当不当については、証拠収集や事実関係の解明に多大な困難が伴うことなどを鑑み、紛争処理メカニズムの対象としないことが適当である。実効性の確保のためには、例えば、競争法・政策の一般的な運用状況に関する情報収集や意見交換を行うことについても検討すべきである。

  9. なお、貿易と競争の相互関係については、作業部会の場において幅広く(extensively)議論が行われてきている。これに関して、競争政策の視点より貿易救済措置に関する既存ルールの見直しを行うことも有用と考えられ、我が国は、AD協定見直しに関する作業の場など適当なフォーラムにおいて、そのような議論も行っていきたいと考えているところである。


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