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WTO物品理事会公式会合(2002年7月22~23日)への
1994年GATT第8条に関する日本貢献ペーパー(日本語訳)


I.序

 2001年11月に開催されたドーハ閣僚会議において、物品理事会は、「1994年GATT第5条、第8条及び第10条の関連する側面を再検討し、適切な場合には、明確化、さらには改善する」との指示を受けた 1。物品理事会は、その後関係する作業を行うためのスケジュールを設定した 2。GATT第8条に係る議論については、2002年7月22、23日の物品理事会で行われることとなっている。

 本ペーパーは、官民双方の全ての関係者にとっての、貿易円滑化によるメリット及び貿易円滑化をWTOルール下におくことから得られるメリットを想起させることを目指し、GATT第8条にかかる議論に資することを目的とした、日本による貢献ペーパーである。また、キャパシティービルディングと、それに関連する事項に対しての考察にも言及している。

 本ペーパーは、上記のポイントについていくつかの例示を行うことを意図したもので、GATT第8条1(C)のみに焦点を当てており、同条の他の項目全てを網羅したものではない。したがって、本ペーパーをもって、日本が将来のWTO作業やありうべき交渉において意見するであろうGATT第8条関連事項が全て記載されたものとみなされるべきではない。


II.貿易手続簡易化のメリット
  1. 貿易手続簡易化のメリット:貿易及び投資の促進

     1994年GATTの第8条1(C)は、加盟国が「輸入及び輸出の手続の範囲及び複雑性を局限し、並びに輸入及び輸出の所要書類を少くしかつ簡易化する必要を認める」と規定している。

     このような貿易手続の簡易化は、疑う余地なく、貿易に携わる業者の費用負担を軽減する。UNCTADは、貿易円滑化措置は貿易取引コストを四分の一削減する(すなわち世界貿易総価値のおよそ2~3%(のコスト)を削減することができる)との試算を行っている 3。このような合理化は、国境を越える貿易・投資の一層の促進に貢献し、ひいては、経済成長や発展に資することになろう。

     さらに、OECD 4 等のレポートにおいて、「円滑化されていない」貿易手続によって、開発途上国における企業及び中小企業は、被雇用者一人あたりの手続コストが先進国の大企業よりも大きいため、後者(先進国の大企業)と比較してはるかに大きな損失を被ると示唆されていることも触れるべきことの一つであろう。このことは、貿易手続の簡易化は、開発途上国における企業及び中小企業に対して、より大きな利益をもたらすことを意味している。

  2. 貿易手続簡易化のメリット:管理の向上

     すべての貿易手続は、正当な政策目的(例.歳入の確保、人命の保護等。ただしこれらに限定されるものではない)を遂行するため、法や規則により導入されているものである。こうした正当な政策目的は、経済成長と並び重要なものである。貿易手続の簡易化にかかるWTO作業は、政府による正当な政策目的の遂行を妨げるようなやり方で策定あるいは実行されてはならないことが強調されるべきである。それと同時に、貿易手続が、このような政策目的を完遂するために必要な範囲を超えて、貿易制限的であってはならないということも重要である。

     いくつかの加盟国は、一見相反しているように見える簡易化と管理レベルの関係に懸念を有している。しかし、それは杞憂であろう。この点について、貿易円滑化に関するWTOシンポジウム(1998年3月9日~10日)での議論 5 や、2000年及び2001年の分析作業において物品理事会会合に提出された貿易円滑化に関する各国体験レポート 6 は注目に値する。我々は経験から、貿易手続の簡易化を通じた公的部門の効率化によって、政府が、人的・財的に余剰な資源を、資源が十分足りている業務(例.文書様式審査)から資源を必要とする活動(例.物理的な検査)にシフトさせることが可能となることを学んでいる。このような努力の結果として、関税歳入の増加やより効果的な貨物管理につながるのである。

  3. WTO規則の下で貿易手続の簡易化を行うことのメリット

     上述したような貿易手続を簡易化することによるメリットについて、加盟国が既に十分認識はしていると言えるかもしれない。しかしながら、現行のGATT第8条1(C)は、このような貿易手続の簡易化について、単に「必要を認める」との規定で、この分野の義務的要求を規定していないため、貿易手続の簡易化の成果はいまだ完全に実現できていない。

     貿易手続の簡易化の成果を完全に実現するためには、この条項に実効性を持たせる必要がある。適当な場合にはルールを作ることも視野に入れた、本件にかかるさらなるWTOでの作業は、加盟国が、貿易手続に関連した法令や貿易手続の執行過程を改善させる際に不可欠な指針や基準を生み出すこととなろう。このことは、加盟国が、自身を世界貿易体制に統合することに寄与し、世界貿易の一層の発展にも資するものと考える。

III.GATT第8条の改善に資すると考えられる措置

 先に述べたポイントを考慮すれば、以下の措置が貿易手続の簡易化に貢献すると考えられる。

  • 貿易手続を策定あるいは実施する際の基礎として、存在する場合には、国際的に受け入れられている標準や国際約束文書を採用すること

  • 適切なリスク評価手法に基づく、合理的な審査・検査対象貨物の選定を実施すること

  • 国境管理を担当する様々な官庁間で協力・協調すること(例.貿易業者が様々な公的目的で要求される情報を、ひとつの官庁へ一度だけ提出すればよいとする「シングル・ウィンドゥ」の導入)

  • 民間部門を含む貿易手続の利用者に、当該官庁に意見等を提出することができるようにするための機会を提供すること

  • 延納制度、事後調査制度、輸入許可前引取り制度(必要な場合には十分な担保を伴う)等の進んだ管理手法を採用すること

  • 税関手続を含めた輸出入のための公的国境手続にかかる電算化を推進すること。また、(その場合に)国際的に受け入れられている標準を利用すること

IV.検討すべき点

 能力が不足している国に対しては、貿易円滑化措置のスムーズな導入・実施のためには、適切な技術協力が効果的である。そのためには、効果的な資源配分を考えると、WCOのような専門国際機関の専門的知見や作業を十分に考慮に入れるべきである。

 技術協力プログラムを一層効果的なものとするためには、技術協力の目的をはっきりさせることが重要である。日本は、そのような目的を策定する最高のプロセスは、建設的なWTO交渉であると考える。



 1 2001年11月14日、カタール・ドーハにおけるWTO第4回閣僚会議において採択された閣僚宣言(WT/MIN(01)/DEC/1)パラ27
 2 2002年3月22日及び27日の物品理事会議事録セクションV(G/C/M/59).
 3 1994年10月、米国オハイオにおける貿易効率に係る国連シンポジウムにおいて採択された貿易効率化に係るコロンバス閣僚宣言パラ8.
 4 詳細は、2002年4月10日付OECDペーパー「貿易円滑化の業的利点」第D部(TD/TC/WP(2001)21/FINAL)参照.
 5 WTO事務局レポート「WTO貿易円滑化シンポジウム-事務局報告」(G/C/W/115).同シンポジウムは1998年3月開催
 6 WTO事務局ペーパー(G/C/W/393)が各国レポートのリストを掲載.


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