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WTO第5回ルール交渉会合に向けたアンチダンピング(AD)フレンズ共同ペーパーの概要

平成14年12月5日

 アンチダンピング(AD)フレンズは、近年のAD措置の濫用を懸念しWTO・AD協定の規律強化を目指す関係国の集まりであるが、5月及び7月に開催されたTNC第二回及び第三回ルール交渉会合にそれぞれ12項目及び11項目の問題提起をした。これらに引き続き、11月25日~27日に開催された第5回会合において8項目の問題提起をWTO事務局に提出した。その目的・背景を項目毎にとりまとめると以下のとおり。(日本の他、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、香港、韓国、ノルウェー、台湾、シンガポール、スイス、タイ、トルコの13加盟国・地域による共同提案)

0.本ペーパーの位置づけ
 冒頭に本ペーパーの位置づけを明確にするため次を記している。
  • 本ペーパーは、第1弾ペーパー(TN/RL/W/6)、第2弾ペーパー(TN/RL/W/10)に続く、ルール交渉会合のADの議論に貢献するための第3弾ペーパーであること。
  • 今後の交渉会合に更なるペーパーを提出すること。個々の国の全ての考えを表明したものではないこと。
  • 本ペーパーは明確化、改善を求めていく条項を記しているが、優先度をつけたものではないこと。また例示は理解を促進するために付記しているものであって限定的であること。


1.“ダンピングされた輸入品の定義”(AD協定3.1条)
 AD協定3.1条において、損害の決定は、実証的な証拠に基づいて行うものとし、“ダンピングされた輸入品”の量についての客観的な検討を行うこととされている。しかしながら協定上、“ダンピングされた輸入品”の明確な定義がないため、“ダンピングされた輸入品”の量を、調査対象国からの輸入品の全ての量として解釈している場合が散見される。この解釈によって間違ったAD措置が適用されることを問題として提起したもの。従って、“ダンピングされた輸入品”の定義を明確化するよう提案。
(具体的な問題例)
 X国からの輸入品Yに対するAD調査の結果、A社のダンピングマージンは10%とされ、B社はダンピングなしとされた。X国において、製品Yを生産している企業は、A及びB社の2社しかなく、損害を決定する期間中における調査対象産品の90%以上はB社生産のものであった。しかし、調査当局は、 “ダンピングされた輸入品”の量を、調査対象国からの輸入品の全ての量として解釈したため、ダンピングされていないB社からの輸入量も含めて損害の決定を行った。このように“ダンピングされた輸入品”の量を不合理に引き上げたことを基に損害を決定し、A社にAD税を賦課することは問題。このようなADの誤用や誤った解釈を防止するため、“ダンピングされた輸入品”の定義を明確化する必要があるのではないか。


2.AD協定2.2条における“十分な量”の定義(AD協定2.2条)
 AD協定2.2条の脚注において、輸出国の国内市場における同種の産品の販売量が対象となる産品の輸入国への販売量の5%以上である場合には、正常価額の決定に十分な量であるとされている。
 しかし、ダンピングマージンを計算する際に、公平な比較を行う観点から、調査対象産品のカテゴリー分けが必要な場合、“十分な販売量”かどうかの判断を調査当局によって設定されたそれぞれのカテゴリーごとに行うべきか、または産品全体で行うべきかどうかが不明確であり、これを問題として提起。
(具体的な問題例)
 あるAD調査において、調査当局は、国内市場における同種の産品の総販売量が対象となる産品の輸入加盟国への販売の5%以下であったため、正常価額の計算の際に全ての国内販売を無視した。一方、他のAD調査において、調査当局は、総販売量が輸入加盟国への販売量の5%以上であったにも関わらず、調査対象産品のそれぞれのカテゴリー毎に販売量が5%以上であるかどうかを検討し、ある特定のカテゴリーの国内市場における販売量が、その産品の輸入加盟国への販売量の5%に満たなかった場合、国内市場におけるそれら販売は、正常価額の計算に考慮しなかった。
 恣意的に輸出国の国内市場における販売に基づく正常価額の計算を制限すること及び構成価額の使用を恣意的に増やすことを防ぐために同種の産品の国内販売について考慮すべき要件を明確化すべきではないか。


3.構成輸出価格:輸出価格を無視できる要件(AD協定第2.3条他)
 AD協定第2.3条において、輸出価格がない場合、または、関係当局が、輸出者と輸入者もしくは第3者との間の連合もしくは補償の取決めのために輸出価格を基準とすることができないと認める場合において、輸出価格は、当局が決定する合理的な方法に基づいて決定されることができるとされている(構成輸出価格)。一方、関連者については、AD協定第4.1条において定義づけられているものの、AD協定第2.3条には“連合”についての定義がない。“連合もしくは補償の取決め”について明確に定義されるべきこと。加えて、調査当局は、輸出価格を基準とすることができない理由を説明すべきことを問題として提起。


4.輸入産品の累積評価について:無視できる輸入の量を定義するための指針(AD協定第3.3条)
 AD協定第3.3条において、二以上の国からのある産品の輸入が同時にダンピング防止のための調査の対象とされた際の累積評価について規定されている。この中で各国からの輸入量が無視できない場合についての記述があるが、無視できる輸入量を定義するための指針を設定していない。それ故、調査当局に個々の指針を設定できる自由裁量の余地を与えており、無視できる輸入量を定義するための適切な指針を設定する必要があることを問題として提起。


5.価格約束-“レッサー・プライスルール”(AD協定第8.1条)
 AD協定第8.1条において、価格約束に基づく価格の引き上げに際して、ダンピングマージンに相当する額よりも少ない額の価格の引き上げが国内産業に対する損害を除去するために十分である場合には、当該価格の引き上げの額は、その少ない額であることが望ましいとされている。これは、AD協定第9.1条の“レッサー・デューティー・ルール”と類似のコンセプトであるが、価格約束を対象としたものである。AD措置の目的は、ダンピングによる損害の影響を除去するに限定されるべきであり、損害を除去するために必要な額を超えた価格の引き上げを伴う価格約束は不適切であることを問題として提起。


6.公告及び決定の説明(AD協定第6条、12条)
 調査における様々な段階において、AD協定第6条(証拠)と第12条(公告及び決定の説明)は密接に関連している。調査当局はしばしば、不正確で誤解を招きやすくかつ偏った情報を信頼する場合がある。特に構成価額や調査対象の標本抽出(サンプリング)を採用する際、厳格な基準や方法が採用されるべきであり、調査当局は、積極的に正確・妥当かつ代表的であって、統計的に有効なデータや情報を収集するように努めるべきである。同様に調査の過程において、関心を持つ者に対してそれら事実及び見解を提示する機会を設けるべきである。このように公告と決定の説明に対して、よりよい基準と手続きを提供する必要がある。
 こうした手続きによって、一般やいかなる関連者に対して全ての事実、方法、評価(どのようにしてダンピングと損害に関する決定が得られたかを詳細に説明し、独自の分析を可能とさせるため)を提供すべきと提案。
(i)調査の開始
 AD協定第12.1条において、調査における様々な観点から適切な情報を公告または別の報告書によって提供すべきとされている。しかしながら、例えば、ダンピングと損害のための調査期間、公告に明示された証拠に基づく調査当局による判断等、基本的な情報について提供することとは明示されていない。(AD協定には、申し立てに関する事項が列挙されているだけ)
12.1条をさらに明確化、詳細化し、調査開始以降における透明性を確保することが必要ではないか。

(ii)暫定決定及び最終決定
 AD協定12.2条において、仮または最終的な決定に関する説明を公告(または別の報告書によって説明)するとされているが、同様に提示された論証の採用または却下をもたらした事実及び法令に係る事項について言及するとされている。これらについて適切かつ必要な説明を確保することを可能とさせるためにAD協定12.2.1及び12.2.2条を更に詳細化すべきではないか。

 例えば、調査当局は、正常輸出価格として第3国(A国)への輸出価格を採用する場合、第3国(A国)を選択する際に利用した基準の説明を行う。
 6.10条で規定されている標本抽出手法を採用した場合、標本抽出にかかる基準を説明すべき。
 構成価額を採用する場合、調査当局は、販売のための管理費の設定や、一般的な経費や利潤の額の算出について、選んだ基準について説明すべき。
 また、調査当局は、国内産業に与える他の要因による影響を分析し、提示する必要があるのではないか。


7.AD調査のためのデータ収集期間
 AD協定において“調査期間”とは、ダンピング調査のためのデータの収集期間を指し、その他特定の期間は、規定されていない。よって、ダンピングまたは損害を認定するための適切な調査期間の決定に関するガイドラインも存在しない。
 ダンピング及び損害の存在を認定するための当初調査において、ダンピング調査にかかるデータ収集期間とコスト割れ販売の調査にかかるデータ収集期間が一致すること、損害調査にかかるデータ収集期間がダンピング調査に係る調査期間全体を含むべきであると提案。
 AD協定はデータの収集にかかるいかなる期間が、ダンピング及び損害の認定のために適切なデータ収集期間であるかを決定するためのガイドラインを設けることを提案。


8.調査対象の制限(サンプリング)(AD協定第6.10条)
 AD協定6.10条によると、調査当局は、原則として、個々の知られている、調査対象産品にかかる輸出者、または生産者のそれぞれについてダンピングマージンを個別に決定すべきとされている。他方、輸出者、生産者、輸入者、製品の種類の数がその決定を行うことが実現可能でないほど多い場合には、調査当局は、その検討の対象を合理的な数の利害関係者を有する者または産品に制限し、(その制限を行うにあたっては標本抽出の際に当局が利用することができる情報に基づいて統計上有効な標本を使用する。)、または関係国からの輸出のうち合理的に調査することができる範囲で最大の量に制限することができると規定されている。
 “合理的な数”及び“合理的に調査することができる範囲で最大の量の割合”について明確化し、基準を設けるべきこと。また、標本抽出を採用する際の状況についても明確化すべきことを問題として提起。
(具体的な問題例)
 調査当局が輸出企業15社を対象にAD調査を開始した。調査当局は、輸出者の数が個々のダンピングマージンを決定することが実現可能ではないほど多いと決定し、実際には、輸出企業のうち3社の調査を行うことが合理的に調査できる範囲の最大量であると判断した。




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