郵便送金業務に関する協定
郵便送金業務に関する協定
  万国郵便連合加盟国の政府の全権委員である下名は、千九百六十四年七月十日にウィーンで作成された万国郵便連合憲章第二十二条4の規定にかんがみ、合意により、かつ、同憲章第二十五条4の規定の適用があることを条件として、次の約定を作成した。
第一章 序
第一条 この約定の目的
1 この約定は、郵便送金を目的とするすべての業務を規律する。締約国は、この約定に定める業務形態のうち相互間で導入するものについて相互に合意する。
2 郵政機関以外の団体は、郵政庁又は郵便振替業務若しくは郵便送金網を所管する機関を通じ、この約定により規律される業務の交換に参加することができる。この約定のすべての規定の完全な実施を確保するためにこのような団体と自国の郵政庁との間の取決めを行うものとし、当該団体は、その取決めの範囲内において、この約定に規定する郵政機関としての権利を行使し、及び義務を履行する。当該郵政庁は、当該団体とこの約定の他の締約国の郵政庁及び国際事務局のそれぞれとの間の関係において仲介者となる。
第二条 提供される業務形態
1 為替
1.1 差出人は、郵便局の窓口において為替金を払い込むこと又は自己の郵便振替口座からの払出しを請求することにより、受取人への現金による為替金の払渡しを請求する。
1.2 差出人は、郵便局の窓口において為替金を払い込むことにより、受取人の郵便振替口座その他郵政庁が管理する口座への入金を請求する。
2 振替
2.1 郵便振替口座の加入者は、自己の口座から払い出した金額につき、受取人の郵便振替口座その他郵政庁が管理する口座又は払渡郵政庁を通じて受取人の銀行当座預金口座への受入登記を請求する。
3 郵便保証小切手
3.1 郵便保証小切手とは、郵便振替口座の加入者に交付される国際的な証書であって、郵便保証小切手の業務に参加する国の郵便局において一覧払を受けることのできるものをいう。
3.2 郵便保証小切手は、関係郵政庁の間の取決めがある場合には、第三者への支払に充てることもできる。
4 ポストネットを利用した現金自動支払機による払出し
4.1 合意によりポストネットに加入した金融取引を行う郵政機関又は団体は、これらの機関又は団体が発行するカードの所持者に対し、ポストネットを利用した現金自動支払機による現金の払出しの業務を提供することができる。
5 その他の業務
5.1 郵政庁は、二国間又は多数国間で、その他の業務を実施することを合意することができる。業務の条件については、関係郵政庁の間で定める。
第二章 指図の受付
第三条 証書の発行及び指図の受理(通貨、換算及び金額)
1 証書又は指図における金額は、特別の合意がない限り、払渡国(証書又は指図における振出先の国をいう。)の通貨をもって表示する。
2 振出郵政庁(証書を発行し又は指図を受理した郵政庁をいう。)は、払渡国の通貨に対する自国の通貨の換算割合を定める。
3 送金することのできる金額は、関係郵政庁の間で別段の決定が行われる場合を除くほか、無制限とする。
4 振出郵政庁は、証書又は指図(郵便によって送達されるものを除く。)の受付のための書類及び方法について任意に定める。郵便によって送達される証書又は指図については、この約定の施行規則に定める用紙を使用しなければならない。
5 国際電気通信規則の規定は、電気通信によって送達される証書及び指図について適用する。
第四条 料金
1 振出郵政庁は、証書の発行又は指図の受理の際に徴収する料金を任意に定める。振出郵政庁は、差出人のために行う特別の取扱いについて徴収する料金をこの基本料金に加える。
2 振出郵政庁は、払渡郵政庁(払渡国の郵政庁をいう。)との間の合意により、差出人の請求に応じて受取人のために特別の取扱いを行うときは、当該取扱いについての料金を当該差出人から徴収することができる。このようにして徴収された料金は、払渡郵政庁に支払われるものとする。
3 この約定の締約国の仲介により締約国と締約国でない国との間で行われる送金に対しては、仲介国の郵政庁は、その業務を行うことにより生ずる費用に基づいて決定する料金を追加して課することができる。当該料金の金額は、関係郵政庁の間で合意され、証書に表示された金額から控除される。ただし、関係郵政庁が合意する場合には、当該料金を差出人から徴収して当該仲介国の郵政庁に支払うこととすることができる。
4 この約定の施行規則に基づく請求に応じて証書を再交付する場合において業務上の過失がなかったときは、請求を受けた郵政庁が定めるその再交付に係る料金を差出人又は受取人から徴収することができる。ただし、払渡済通知につき既に料金を徴収している場合は、この限りでない。
5 万国郵便条約第八条2及び3.1から3.3までに定める条件に基づく郵便送金業務であって、郵便により郵政庁間で交換される書類、証書及び指図に係るものについては、料金を免除する。
第三章 指図の送達
第五条 交換方式
1 郵便による交換は、この約定の施行規則に定める用紙を使用して、振出局と払渡局との間で直接に又は交換局を通じて行われる。
2 電気通信による交換は、当該交換の保障に係るすべての必要な手続が関係郵政庁の間の合意により遵守されることを条件として、払渡局又は交換局に直接送達することによって行われる。
3 送金は、磁気テープその他の媒体であって郵政庁間で合意するものにより払渡国に向けて行うことができる。払渡郵政庁は、受取人に送金額を現金で支払うための媒体として使用する用紙を任意に定めることができる。
4 すべての送金は、関係郵政庁の間の特別の合意に基づき、電子回線網により行うことができる。
5 郵政庁は、1から4までに規定する方式以外の交換方式を利用することについて取り決めることができる。
第四章 払渡国における処理及び調査請求
第六条 払渡し
1 為替金は、原則として、全額受取人に支払われなければならない。受取人が特別の取扱いを請求する場合には、当該特別の取扱いについて任意に定める料金を受取人から徴収することができる。
2 為替の有効期間は、次のとおりとする。
2.1 原則として、振出しの月の翌月の初日から起算して一箇月を経過するまでの期間
2.2 関係郵政庁の間の合意がある場合には、振出しの月の翌月の初日から起算して三箇月を経過するまでの期間
3 払渡局に送達される為替については、2に定める有効期間の満了後は、振出郵政庁の指定する者が払渡局の請求に応じて与える日付認証がない限り、為替金を払い渡さない。日付認証を受けた証書は、日付認証を受けた日から新たな効力を付与されるものとし、その有効期間は、当該日付認証を受けた日に振り出される為替の有効期間と同一とする。前条3に規定する方式により払渡郵政庁に送達される為替については、日付認証を与えない。
4 為替の有効期間の満了前に払渡しをしなかったことが業務上の過失によるものでない場合には、払渡郵政庁が定める料金を日付認証料として徴収することができる。
5 為替金の払渡しについては、払渡国の法令の定めるところにより行う。
第七条 調査請求
1 条約第三十条の規定は、調査請求について準用する。
第八条 責任
1 責任の原則及び範囲
1.1 郵政庁は、為替金が正規に払い渡される時まで又は受取人の口座に受入登記がされる時まで、窓口において払い込まれた金額又は差出人の口座に払出登記をした金額について責任を負う。
1.2 郵政庁は、情報の処理に際して自らが行った誤りであって、未払又は送金上の誤った処理をもたらしたものについて責任を負う。この責任は、換算の誤り及び送達の誤りにも及ぶものとする。
1.3 郵政庁は、次の場合には、責任を免れる。
1.3.1 その責任が、証書及び指図の送達、発送又は払渡しにおける遅延についての責任である場合
1.3.2 不可抗力による業務書類の損傷のために郵政庁が送金の処理について説明することができない場合。ただし、郵政庁の責任に関して別段の証拠があるときは、この限りでない。
1.3.3 差出人が条約第三十条1に規定する期間内に調査請求を行わなかった場合
1.3.4 振出国における為替の時効期間が満了した場合
1.4 差出人に弁済される金額は、弁済の理由のいかんを問わず、差出人が払い込んだ金額又は差出人の口座に払出登記をした金額を超えることができない。
1.5 郵政庁は、一層広い範囲の責任に関する条件であって、内国業務の要求するところに適合するものを適用することについて、相互間で取決めを行うことができる。
1.6 責任の原則を適用する条件、特に、責任の決定、債務の弁済、求償、弁済期限及び債務を弁済した郵政庁に対する償還に係る問題については、この約定の施行規則に定める。
第五章  計算書及び決済用振替口座
第九条  払渡郵政庁に対する手数料
1 振出郵政庁は、払渡郵政庁に対し、月次計算書に集記された払渡済みの為替のそれぞれにつき、当該払渡済みの為替の金額の当該月の平均額に応じてこの約定の施行規則に定める率の払渡手数料を支払う。
2 関係郵政庁は、1の規定による払渡手数料に代えて、異なる率の払渡手数料を取り決め又はそれぞれの払渡しについて一定額の払渡手数料を定めることができる。
3 払渡郵政庁は、振替につき、受入手数料の支払を請求することができる。この料金については、受取人の口座に払出登記をし又は振出郵政庁の決済用振替口座に払出登記をすることができる。
4 料金が免除された送金については、手数料を支払わない。
5 振出郵政庁が料金を免除する援助資金の送金については、関係郵政庁の間の合意がある場合には、手数料を免除することができる。
第十条 参加する郵政庁の間の決済
1 郵政庁は、債務の決済のために用いる技術的方式について相互に取り決める。
2 決済用振替口座
2.1 郵政庁は、郵便振替制度を有する場合には、相手国の郵政庁に自己の名義で決済用振替口座を開設し、当該口座を通じて、郵便振替業務の交換によって生じた相互間の債務及び郵政庁間に取決めがある場合には為替その他の業務から生じた債務を決済する。
2.2 払渡郵政庁が郵便振替制度を有しない場合には、金融取引を行う他の団体に決済用振替口座を開設することができる。
2.3 決済用振替口座が貸越しとなった場合には、その貸越金額につき、この約定の施行規則に定める率の利子が生ずる。
3 月次計算書
3.1 払渡郵政庁は、振出郵政庁ごとに、為替の払渡金額についての月次計算書を作成する。この月次計算書は、差引計算における残高を決定するための総計算書に定期的に取りまとめる。
3.2 勘定の決済は、また、相殺によることなく月次計算書に基づいて行うことができる。
4 この条の規定及びこの約定の施行規則の関連規定は、モラトリアム、送金禁止その他の一方的措置によって効力を害されることはない。
第六章 郵便保証小切手
第十一条 郵便保証小切手業務
1 郵便保証小切手の交付
1.1 郵政庁は、郵便振替口座の加入者に対して郵便保証小切手を交付することができる。
1.2 郵便保証小切手の交付を受けた郵便振替口座の加入者に対しては、払渡しの際に提示する郵便保証小切手カードを交付する。
1.3 各郵便保証小切手について保証される最高限度額は、その裏面又は附せんに関係締約国の間で合意する通貨をもって表示する。
1.4 振出郵政庁は、払渡郵政庁との間に特別の合意がない場合には、払渡国の通貨に対する自国の通貨の換算割合を定める。
1.5 振出郵政庁は、郵便保証小切手の交付を受ける者から料金を徴収することができる。
1.6 郵便保証小切手の有効期間については、必要があるときは、振出郵政庁が定める。その有効期間は、郵便保証小切手にその効力の終了の日を記載して表示する。その表示がない場合には、郵便保証小切手は、無期限に効力を有する。
2 払渡し
2.1 郵便保証小切手の金額は、払渡国の法定通貨で受取人に払い渡す。
2.2 一枚の郵便保証小切手によって払い渡すことのできる最高限度額は、関係締約国の間の合意により定める。
3 責任
3.1 払渡郵政庁は、払渡局の窓口における郵便保証小切手の提示及び払渡しの条件についてこの約定の施行規則に定める条件に従って払渡しが行われたことを立証することができる場合には、すべての責任を免れる。
3.2 振出郵政庁は、払渡済郵便保証小切手の振出郵政庁への返送についてこの約定の施行規則に定める期間の後に返送された郵便保証小切手であって変造又は偽造されたものを受け入れる義務を負わない。
4 払渡郵政庁に対する払渡手数料
4.1 郵便保証小切手業務における振出郵政庁及び払渡郵政庁は、払渡郵政庁に支払う払渡手数料の額を相互間で定める。
第七章 ポストネット
第十二条 加入及び参加の条件
1 ポストネットへの加入は、ポストネットに係る合意に署名し及び加入に係る納付金を支払うことを条件とする。
2 業務への加入及び参加の条件については、ポストネットに係る合意に定める。
第八章 代金引換郵便物
第十三条 代金引換郵便業務の定義
1 普通通常郵便物、書留郵便物及び保険付通常郵便物並びに普通小包郵便物及び保険付小包郵便物は、二国間の合意により、代金引換郵便物として送達することができる。
2 郵便物を配達した機関は、その代金を、金融取引を行う郵政機関に向けて送金し、当該代金の金額をその受取人に払い渡すことを請求する。
第九章 雑則
第十四条 外国に郵便振替口座を開設するための申込み
1 この約定の締約国の金融取引を行う郵政機関又は団体は、外国に郵便振替口座が開設される場合には、その開設の申込者についての通常の審査の範囲内において、相互に提供可能な援助について相互間で合意する。
第十章 最終規定
第十五条 最終規定
1 この約定に明文の定めのない事項については、適当な場合には、条約の規定を準用する。
2 憲章第四条の規定は、この約定については、適用しない。
3 この約定に関する議案の承認の条件
3.1 この約定に関する議案であって大会議に提出されたものは、実施されるためには、この約定の締約国である加盟国であって出席しかつ投票するものの過半数による議決で承認されなければならない。投票の際には、この約定の締約国である加盟国であって大会議に代表を出しているものの二分の一以上が出席していなければならない。
3.2 この約定の施行規則に関する議案は、実施されるためには、この約定の締約国である郵便業務理事会の理事国の過半数による議決で承認されなければならない。
3.3 この約定に関する議案であって大会議から大会議までの間に提出されたものは、実施されるためには、次の数の賛成票を得なければならない。
3.3.1 規定の追加に関する議案については、この約定の締約国である加盟国の二分の一以上の投票を条件として投票の三分の二以上
3.3.2 この約定の規定の改正に関する議案については、この約定の締約国である加盟国の二分の一以上の投票を条件として投票の過半数
3.3.3 この約定の規定の解釈に関する議案については、投票の過半数
3.4 3.3.1の規定にかかわらず、締約国は、提案された追加がその国内法令と矛盾する場合には、当該追加の通報の日から起算して九十日以内に、当該追加を受諾することができない旨の書面による宣言を国際事務局長に行うことができる。
4 この約定は、二千一年一月一日に効力を生じ、次回の大会議の文書の効力発生の時まで効力を有する。
 以上の証拠として、締約国政府の全権委員は、国際事務局長に寄託されるこの約定の本書一通に署名した。大会議開催国の政府は、その謄本一通を各締約国に送付する。
 千九百九十九年九月十五日に北京で作成した。