文化交流に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定
文化交流に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定
日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、
千九百七十二年一月二十七日付けの両国外務大臣間の交換公文及び千九百七十三年十月十日付けの両国外務大臣間の交換公文が両国間の文化交流の発展を促進してきたことを考慮し、
文化、教育及び学術の分野における両国間の交流を更に拡大することが両国の国民の間の相互理解の増進及び両国間の関係の進展に寄与することを確信して、
次のとおり協定した。
第一条 両締約国政府は、文化、教育及び学術の分野における両国間の交流を発展させるものとし、相互主義の原則に基づきこの協定を適用する。
この協定に基づく交流に参加する一方の国の国民及び団体は、他方の国において、当該他方の国の国内法令を遵守しなければならない。
各締約国政府は、自国において、この協定に基づく交流に参加する他方の国民及び団体に対し、活動及び滞在のために必要な便宜を与える。
第二条 両締約国政府は、特に次の方法による文化の分野における交流を奨励する。
(a) 芸術家、文化機関の職員その他の文化の分野の活動に従事する者の交換
(b) 芸術家の団体の間又は文化機関の間における協力
(c) 展示会、演奏会及び舞台芸術の実施
(d) 講演、セミナー及び会議の実施
(e) テレビジョン、ラジオ及び映画の分野における協力
(f) 文化の分野における出版物の交換
第三条 各締約国政府は、他方の国の文化、文学、歴史、社会制度及び生活様式についての理解の増進を目的として次のことを行う。
(a) 自国において、他方の国による展示会、演奏会及び舞台芸術の実施を奨励すること。この場合において、第十九条2の規定に従つて作成される計画に含まれるものについては、これに関する他方の国の国民又は団体に対する支払の形態及び種類につき、両国間の文化交流の拡大のため、両国の関係当事者の間の協議の結果を考慮し、必要に応じ、第十九条1に規定する日ソ文化交流委員会で協議するものとする。
(b) 自国において、他方の締約国政府に対し、展示会、演奏会及び舞台芸術を政府レベルで実施する機会を与えるものとし、それらの実施の時期、回数、場所その他の条件につき他方の締約国政府と合意すること。
第四条 1 両締約国政府は、テレビジョン及びラジオの分野において、番組の交換及び共同制作、番組の素材の準備に必要な援助のそれぞれの国における提供、テレビジョン及びラジオの分野の活動に従事する者の交換その他の方法による交流を奨励する。
2 各締約国政府は、自国の法令及び慣行に従つて、他方の国の代表者が、当該他方の国の文化、文学、歴史、社会制度及び生活様式を理解させることを目的として自国のテレビジョン又はラジオに出演する機会を与える。
第五条 1 両締約国政府は、映画の分野において、映画フィルムの営利的又は非営利的目的のための交換、映画フィルムの共同制作、映画の分野の活動に従事する者の交換その他の方法による交流を奨励する。
2 各締約国政府は、他方の締約国政府に対し、自国において毎年映画祭を政府レベルで実施する機会を与える。
第六条 両締約国政府は、特に次の方法による教育及び学術の分野における交流を奨励する。
(a) 研究、講演又は修学のための教授その他の高等教育機関の教員及び高等教育機関の学生の交換
(b) 研究、講演又は視察のための学者及び研究員の交換
(c) 高等教育機関の間又は研究機関の間における協力
(d) 講演、セミナー及び会議の実施
(e) 高等教育機関用の出版物、学術的内容の出版物及び視聴覚資材の交換
第七条 1 両締約国政府は、相互に関心を有する教育及び学術の分野における研究、講演又は修学を目的とする教授その他の高等教育機関の教員又は高等教育機関の学生の交換を行う。
2 両締約国政府は、相互に関心を有する教育及び学術の分野における研究、講演又は視察を目的とする学者及び研究員の交換を行う。
第八条 両締約国政府は、それぞれの国において、他方の国の国民に対し、研究又は修学のための奨学金その他の便宜を与えることを奨励する。
第九条 両締約国政府は、それぞれの国において、高等教育機関及び研究機関における他方の国の言語、文学、芸術、歴史、経済、社会制度その他の側面についての教育及び研究を奨励する。
第十条 両締約国政府は、両国の学位及び教育に関する資格証書の同等性についての相互評価に資するような情報の交換について協力する。
第十一条 1 各締約国政府は、それぞれの国において定められた手続に従い、他方の国の国民に対し、研究、修学その他のこの協定に合致した目的のために図書館、博物館、美術館、公文書館その他の文化的性質を有する施設を利用する機会を与える。
2 両締約国政府は、1に規定する施設の間における交流を奨励する。
第十二条 両締約国政府は、著作権の分野における両国の団体の間の協力を奨励し、それぞれの国において、他方の国の文学的、音楽的、美術的又は学術的内容の著作物の翻訳、複製及び出版を奨励する。
第十三条 1 両締約国政府は、両締約国政府の間で合意される手続に従つて、それぞれの国の公の刊行物を交換する。
2 両締約国政府は、両締約国政府の間で合意される手続に従つて、それぞれの国の政府の機関が発行する広報資料を他方の国において配布することができる。
第十四条 両締約国政府は、両国の報道関係者の団体の間又は報道機関の間における交流を奨励するとともに、それぞれの国において、他方の国の報道関係者に対し、職務上の接触を含む任務の遂行について便宜を与える。
第十五条 両締約国政府は、両国の青少年及び青少年団体の間並びにスポーツマン及びスポーツ団体の間の協力及び交流を奨励する。
第十六条 両締約国政府は、両国の国民の間の相互理解を増進するため、両国間における観光旅行を奨励する。
第十七条 両締約国政府は、この協定の目的に従つて行われる両国の各種団体及び機関の間の文化、教育及び学術の分野における交流を奨励する。
第十八条 この協定のいかなる規定も、いずれか一方の国の査証の付与並びに外国人の入国、在留及び出国に関する法令に影響を与えるものとみなされてはならない。
第十九条 1 両締約国政府は、日ソ文化交流委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、少なくとも二年に一回日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦において交互に会合する。各締約国政府は、委員会の会合のためにそれぞれの委員を任命する。
2 委員会は、その任務として、この協定の実施状況の検討、この協定の実施に関する二年間の計画の相互主義の原則に基づく作成並びに文化、教育及び学術の分野における両国間の交流に関する問題についての意見交換を行う。
3 2に規定する計画は、各締約国政府がそれぞれの国の法令に従つて実施を確保するものとし、各締約国政府がそれぞれの国の法令により定められた手続に従つて当該計画を承認したことを通知する外交上の公文を交換した日に効力を生ずる。
4 2の規定は、委員会により作成される二年間の計画に含まれない両国間の文化、教育及び学術の分野における交流を妨げるものではない。両締約国政府は、可能な範囲内で、そのような交流について相互に通報する。
第二十条 両締約国政府は、この協定の規定の実施に関する細目及び手続につき合意することができる。
第二十一条 この協定は、批准されなければならない。この協定は、東京で行われる批准書の交換の日に効力を生ずる。
第二十二条 この協定は、六年間効力を有するものとし、その後においても、いずれか一方の締約国政府がこの協定を終了させる意思を他方の締約国政府に対し文書により通告した日から一年の期間が満了するまで引き続き効力を有する。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
千九百八十六年五月三十一日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及び口シア語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 安倍晋太郎
ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために E・シェヴァルナッゼ