北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書に定められた漁業規則の違反により拿捕された漁船及び逮捕された乗組員の引渡手続に関する取極(口上書)
北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書に定められた漁業規則の違反により拿捕された漁船及び逮捕された乗組員の引渡手続に関する取極(口上書)
二一/二DVIN
(□上書)
ソヴィエト連邦外務省は、在ソヴィエト連邦日本国大使館に敬意を表するとともに、千九百八十四年五月七日に署名された北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書によつて定められた漁業規則の違反に関連して、拿捕された漁船及び逮捕された乗組員の引渡手続に関し、ソヴィエト連邦政府及び日本国政府の代表者の間で到達した次の了解をソヴィエト連邦政府に代わつて確認する光栄を有する。
以下に規定する引渡手続は、千九百八十四年において実施される。
1 拿捕された漁船又は逮捕された乗組員の所属する国の公務員が拿捕又は逮捕の場所の近くにあるときは、漁船を拿捕し又は乗組員を逮捕した公務員は、当該漁船又は乗組員を拿捕又は逮捕の場所において他方の国の公務員に引き渡すものとする。(この□上書において「公務員」とは、ソ連側については、ソ連邦漁業監督機関の監督官をいい、日本側については、日本の漁業監督又は取締りの権限を有する者をいう。)
漁船を拿捕し又は乗組員を逮捕した公務員はヽ当該漁船又は乗組員による漁業規則の違反に関するロシア語及び日本語による調書を三通作成する。当該公務員は、調書の一通を保持し、一通を当該漁船の船長又は操業責任者に手交し、拿捕された漁船又は逮捕された乗組員を引き渡す際に他の一通を他方の国の公務員に手交する。
この場合、拿捕された漁船又は逮捕された乗組員の引渡し及び前記の調書の手交の事実についてロシア語及び日本語による調書(書式別紙のとおり)を二通作成し、調書の各一通を双方の公務員が保持する。
2 港を根拠地とする漁船が拿捕された場合において、1の規定に基づいて拿捕の場所で当該漁船の引渡しを行うことができないときは、次の手続を適用するものとする。
漁業規則に違反した漁船を拿捕した公務員は、当該漁船の網を封印し、当該漁船の所属する国によりあらかじめ定められた港の一に赴くよう指示を与え、その指示を遵守する旨の船長又は操業責任者の署名した交書を提出させる。その指示を受けた漁船は、指定された港に赴くものとする。
漁船を拿捕した公務員は、当該漁船の拿捕の事実について無線により他方の国に通報する。この通報には、漁船名、番号、船籍港、船長の姓名、拿捕の場所及び時並びに当該漁船が赴くよう指示された港が示されるものとする。
漁業規則の違反に関する調書は、1に規定されている方式と同様の方式で作成される。このほか、調書には当該漁船が赴くよう指示された港及び当該漁船の網の封印の有無が記載される。当該公務員は、調書の一通を保持し、一通を当該漁船の船長又は操業責任者に手交し、他の一通をできる限り速やかに他方の国の公務員に手交する。船長又は操業責任者は、同人に手交された調書を自国の公務員に提示するものとする。
港に赴くよう指示を受け、かつ、網が封印された漁船は、その網の封印が解除されるまでは漁業を行つてはならない。その網の封印は、当該漁船の所属する国の公務員のみが解除することができる。拿捕された漁船の所属する国は、当該漁船が指示された港に到着したことをその到着後十二時間以内に他方の国に対し通報する。
3 母船に属する漁船が拿捕され又はその漁船上による乗組員が逮捕された場合において、1の規定に基づいて拿捕又は逮捕の場所で当該漁船又は乗組員の引渡しを行うことができないときは、次の手続の一を適用するものとする。
(A) 拿捕された漁船又は逮捕された乗組員は、当該漁船の属する母船に搭乗する他方の国の公務員に引き渡される。この場合、1に規定された手続が適用される。
(B) 拿捕された漁船に対し、当該漁船の属する母船に搭乗している他方の国の公務員のもとに赴くよう指示が与えられる。この場合、2に規定された手続が適用される。
母船に搭乘している公務員は、拿捕された漁船が母船に到着したことをその到着後十二時間以内に当該漁船を拿捕した公務員の所属する国に対し通報する。
4 拿捕された漁船の所属する国の公務員が2及び3(B)に基づいて港又は母船に向かつている漁船に遭遇するときは、当該公務員は、遭遇した場所で当該漁船を引き取ることができる。この場合、当該公務員は、拿捕された漁船が引き取られたことをその引取り後十二時間以内に当該漁船を拿捕した公務員の所属する国に対し通報する。
5 前各項の規定によらないで、漁船を拿捕し又は乗組員を逮捕した公務員の所属する国が、当該漁船又は乗組員の所属する国の要請に基づき、当該漁船又は乗組員を自国の領域内で監規の下に置くときは、拿捕された漁船の乗組員の代表者又は逮捕された乗組員は、当該漁船又は乗組員に必要食料品、清水、燃料その他の需品の供給を要請することができる。拿捕された漁船又は逮捕された乗組員を監視の下に置く国の官憲は、その要請を満たすために必要な措置をとる。
前記の需品の受領が行われた場合には、漁船又は乗組員を監視の下に置く国の官憲と需品の供給に対し支払の義務を負う拿捕された漁船の乗組員の代表者又は逮捕された乗組員は、需品の供給及び受領を確認するロシア語及び日本語による調書を二通作成し、その一通は需品を供給した国の官憲が保持し、他の一通は拿捕された漁船の乗組員の代表者又は逮捕された乗組員が保持する。
需品を供給した国は、できる限り速やかに、前記の調書の写し及び関係書類を拿捕された漁船又は逮捕された乗組員の所属する国の政府に送付する。
調書の写し及び関係書類を受け取つた国の政府は、供給された需品の代金の支払が確実に行われるように適当な措置をとるものとする。供給された需品の代金の支払は、これらの交書の受領の日から四箇月以内に行われるものとする。
6 前各項に定められた拿捕された漁船又は逮捕された乗組員の引渡し及び引取りに関する相互の通信は、船舶無線局及び海岸無線局を通じて行われる。
ソ連側及び日本側は、あらかじめ無線により互いに自己の受信及び発信無線局を通報する。
いずれの国も、無線連絡のため更に無線局を増設し、又は他の無線局に変更することができる。その際、これをあらかじめ無線により他方に通報する。
両国は、次の通信方法を採用する。
(A) 船舶無線局及び海岸無線局は、全日グリニッジ時間四時、八時、十二時、十六時、二十時及び二十四時の始めの五分間は相互に相手側からの呼出しがあつたとき直ちに応答ができるよう聴取を行うものとし、自国から送信すべき通報がない場合は、原則として呼出しを行わないものとする。
(B) ソヴィエト連邦及び日本国の船舶無線局及び海岸無線局の無線連絡は、あらかじめソ連側及び日本側が互いに通報した周波数により行うものとする。なお、いずれの国も、無線連絡の周波数を変更することができる。その際、これをあらかじめ無線により他方に通報する。
(C) 無線通信は、ロシア語又は日本語をもつて行うものとし、必要に応じ英語を使用することができるものとする。
ロシア語又は日本語による電文は、ローマ字をもつて作成されるものとし、国際電気通信条約附属電信規則に定められた国際モールス符号をもつて送信するものとする。その他の通信方法は、前記の条約附属無線通信規則によるものとする。
ソヴィエト連邦外務省は、在ソヴィエト連邦日本国大使館がソヴィエト連邦政府及び日本国政府の代表者の間で到達した前記の了解を日本国政府に代わつて確認されることを期待する。
千九百八十四年六月十九日にモスクワで
A-二六-八四
(口上書)
在ソヴィエト連邦日本国大使館は、ソヴィエト連邦外務省に敬意を表するとともに、次の千九百八十四年六月十九日付け外務省□上書を受領したことを確認する光栄を有します。
(ソ連側口上書)
在ソヴィエト連邦日本国大使館は、この口上書をもつて、日本国政府及びソヴィエト連邦政府の代表者の間で到達し、前記ソヴィエト連邦外務省□上書に述べられた了解を日本国政府に代わつて確認する光栄を有する。
千九百八十四年六月十九日にモスクワで