北西太平洋における千九百八十二年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書
北西太平洋における千九百八十二年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書
 日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、
 千九百七十八年四月二十一日にモスクワで署名された漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定に基づいて、
 次のとおり協定した。
1 この議定書は、千九百七十七年五月二日付けの日本国の漁業水域に関する暫定措置法及び千九百七十六年十二月十日付けのソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業の規制に関する暫定措置に関するソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令の諸規定を考慮し、また、ソヴィエト社会主義共和国連邦が千九百八十二年において北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域におけるさけ・ますの漁獲を行わないことを考慮して、北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域における日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件を定めることを目的とする。
2 北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域における日本.国のさけ・ますの漁獲に関する手続及び条件は、次のとおりとする。
(1) 東側は東経百七十度の線、南側は北緯四十四度の線並びに西側及び北側はソヴィエト社会主義共和国連邦及びアメリカ合衆国の距岸二百海里水域の線をもって囲まれる水域におけるさけ・ますの漁獲は、禁止される。
(2) 千九百八十二年における北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の距岸二百海里水域の外側の水域における日本国のさけ・ます年間総漁獲量四万二千五百トン(三千四百五十万尾)のうち、北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域における漁獲量は、二万三千五百トン(千六百二十万尾)を超えてはならない。
 このうち、しろざけの漁獲量は四百二十万尾を、べにざけの漁獲量は百十万尾を、ぎんざけの漁獲量は百二十万尾を超えないものとする。前記のそれぞれの魚種の漁獲量につき、十パーセントの範囲内の増減が許容される。
(3) (2)にいう漁獲量については、千九百八十二年五月一日から同年七月三十一日までの間において漁獲することができる。ただし、東側は東経百七十五度の線、南側は北緯四十四度の線、西側は東経百七十度の線及び北側はアメリカ合衆国の距岸二百海里水域の線をもつて囲まれる水域においては、千九百八十二年五月一日から同年六月十五日までの間において、漁獲が行われるものとする。
(4) 一隻の漁船が海中に浮設する流し網の長さは、十五キロメートルを超えてはならない。ただし、日本国の港を根拠地とする三十トン未満の小型漁船については、十キロメートルを超えてはならないものとする。
 一隻の漁船が浮設した流し網の網と網との間隔は、投網直後に計測される。一つの網と最も近い他の網との間隔は、すべての方向において次のとおりとする。
 母船に属する漁船については、八キロメートル以上
 日本国の港を根拠地とする中型漁船については、六キロメートル以上
 日本国の港を根拠地とする三十トン未満の小型漁船については、四キロメートル以上
(5) 流し網の網目の結節から結節までの長さは、次のとおりとする。
 母船に属する漁船については、六十ミリメートル以上
 ただし、浮設された流し網の各配列につき、その配列の長さの六十パーセント以上は、六十五ミリメートル以上とする。
 日本国の港を根拠地とする漁船については、五十五ミリメートル以上
(6) 各漁船は、日本国の権限のある当局が発給したさけ・ますの漁獲を行う権利に関する許可証文は証明書を船内に保持していなければならない。
(7) 日本国の権限のある当局は、その発給したさけ・ますの漁獲を行う権利に関する許可証文は証明書につきソヴィエト社会主義共和国連邦側に通報する。
(8) 日本国の港を根拠地とする中型漁船については、漁船ごとの漁獲量が定められ、その漁獲量は、(6)にいう許可証又は証明書に掲げられる。
 日本国の港を根拠地とする中型漁船につき定められかつソヴィエト社会主義共和国連邦側に通報された総漁獲量の範囲内で個々の漁船間において漁獲量の再配分が行われる場合には、日本国の権限のある当局は、当該漁船に対し再配分証明書を発給し、かつ、これにつき遅滞なくソヴィエト社会主義共和国連邦側に通報する。
3 両締約国の政府は、この議定書の規定が1にいう漁獲について遵守されることを確保するため、北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域において、次の規定に基づき措置をとる。
(1) この議定書の規定に従いさけ・ますの漁獲を行つている一方の締約国の漁船に、他方の締約国の正当に権限を有する公務員は、この議定書の規定を実施する目的をもつて、装備、航海日誌、書類、漁獲物その他の物件を検査し、及び乗組員に対して質問するため、乗船することができる。当該検査及び質問に当たつては、当該漁船の漁獲活動が被る妨げを最小のものにしなけれぱならない。また、前記の公務員は、その所属する締約国の権限のある機関が発行した身分証明書を提示しなければならない。
(2) 漁船又はその乗組員が、現にこの議定書の規定に違反して漁獲を行つているとき、又は前記の公務員がその漁船に乗船する前にそのような漁獲を現に行つていたと信ずるに足りる相当の理由があるときは、その公務員は、その漁船を拿捕し、又はその乗組員を逮捕することができる。
 前記の場合において、当該公務員の所属する締約国は、できる限り速やかに、前記の漁船又は乗組員の所属する他の締約国にその拿捕又は逮捕を通告し、かつ、できる限り速やかに、両締約国が別の場所について合意しない限りその場所でその漁船又は乗組員をその所属する締約国の権限を有する公務員に引き渡さなければならない。ただし、前記の通告を受領した締約国が直ちにその引渡しを受けることができずかつ他の締約国に要請をしたときは、その要請を受けた締約国は、前記の漁船又は乗組員を両締約国が相互に合意する条件によりその監視の下に置くことができる。
(3) 前記の漁船又は乗組員の所属する締約国の当局のみが、この3に関連して生ずる事件を裁判し、かつ、これらに対して刑を科する管轄権を有する。違反を証明する調書及び証拠は、違反を裁判する裁判管轄権を有する締約国にできる限り速やかに提供されなければならない。
(4) この議定書の規定に従いさけ・ますの漁獲を行つている漁船の所属する締約国の政府は、他の締約国の正当に権限を有する公務員が当該漁船に支障なく乗船する機会が与えられることとなるように、及び当該公務員が漁船にある間、当該漁船の乗組員が検査(検査の結果発見された違反を除去するための措置をとることを含む。)の実施について当該公務員に協力するように、適当な措置をとる。
4 この議定書は、それぞれの国の国内法上の手続に従つて承認されなければならない。この議定書は、その承認を通知する外交上の公文が交換された日に効力を生じ、千九百八十二年十二月三十一日まで効力を有する。
 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。
 千九百八十二年四月二十三日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために
小和田 恒
 ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために
V・カーメンツェフ