技術協力に関する日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の協定
技術協力に関する日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の協定
日本国政府及びアルゼンティン共和国政府は、
技術協力の促進により両国間に存在する友好関係を一層強化することを希望し、
また、両国の経済的及び社会的発展を促進することがもらす相互の利益を考虜して、
次のとおり協定した。
第一条 両政府は、それぞれの国の現行法令に従い、両国間の技術協力を促進するよう努力する。
第二条 両政府は、両政府間で合意する個別の技術協力計画(以下「協力計画」という。)の実施のため、相互協力を促進し、及び相互支援を行うものとし、この目的のため、外交経路を通じ別途の取極を文書によつて行う。
第三条 日本国政府は、日本国の現行法令に従い、かつ、第二条にいう取極により、次の形態による技術協力を行う。
(a) 日本国における技術訓練のためにアルゼンティン共和国の国民を受け入れること。
(b) 日本国の専門家をアルゼンティン共和国に派遣すること。(このような専門家を以下「専門家」という。)
(c) 設備、機械及び資材をアルゼンティン共和国政府に供与すること。
(d) アルゼンティン共和国の経済的及び社会的開発計画の調査を行うための調査団をアルゼンティン共和国に派遣すること。(このような調査団を以下「調査団」という。)
(e) 両政府間で合意することのあるその他の形態の技術協力
第四条 アルゼンティン共和国政府は、第三条に規定する日本国の技術協力の結果としてアルゼンティン共和国の国民が取得した技術及び知識がアルゼンティン共和国の経済的及び社会的発展に寄与することを確保する。
第五条 アルゼンティン共和国政府は、自己の負担で次の措置をとる。
(a) アルゼンティン共和国における協力計画の実施に当たつて専門家の任務遂行に必要な土地及び施設を提供すること。
(b) アルゼンティン共和国における協力計画を実施するために必要な(a)にいう土地及び施設の運営費及び維持費を負担すること。
(c) 専門家及びその家族に対し、現地の条件及びアルゼンティン共和国の受入れ機関の財政能力を考慮して家具付き住宅を提供し、かつ、これらの者に対し、職務又は現地の環境条件から生ずる事故又は疾病に対する無料の医療便宜を提供すること。
(d) 専門家の通勤費及び公用通信費並びにアルゼンティン共和国内の公用出張の場合にはそのための交通費及び必要雑費を負担すること。
(e) アルゼンティン共和国における協力計画の実施のために必要な補助要員及び必要な場合には通訳を提供すること。
(f) アルゼンティン共和国の専門家が適当な時期に専門家に代わつて適切に任務を遂行することを確保するために必要な措置をとること。
第六条 1 アルゼンティン共和国政府は、また、次の措置をとる。
(a) 専門家及びその家族に対し、査証料を免除し、かつ、いつでも自由にアルゼンティン共和国に入国し又は同国から出国することを許可すること。
(b) 専門家がこの協定及び第二条にいう取極の実施のために提供する役務につき日本国から送金される給与に対して課される所得税その他の課徴金を免除すること。
(c) 専門家に対し、この協定及び第二条にいう取極に従つて委託された任務を遂行するために必要な援助がアルゼンティン共和国政府の関係当局によつて与えられる旨を記した身分証明書を交付すること。また、専門家と同居するその家族に対してもその身分を記した身分証明書を交付すること。
(d) 専門家に対し、専門家及び専門家と同居するその家族の身回品(家具、家庭用品及び必要な取換部品を含む。)及び消費財の持込み及び持出しに関して、輸入許可証及び為替証明書の取得要件並びに領事手数料、輸出税、輸入税その他の税及び課徴金を免除すること。
(e) (i) 専門家に対し、一家族につき自動車一台の持込みに関して、輸入許可証及び為替証明書の取得要件並びに領事手数料、輸入税その他の税及び課徴金を免除すること。このようにして持ち込まれた自動車は、その持込みの後四年の期間を経過した後は、無税で売却し又は譲渡することができるものとし、また、その持込みの後二年の期間を経過した後は、アルゼンティン共和国の法令に定める税の支払を条件として売却し又は譲渡することができる。当該自動車は、再輸出される場合には、輸出許可証の取得要件及び輸出税その他の税及び課徴金を免除される。
(ii) (i)にいう自動車の持込みを行わない専門家に対し、アルゼンティン共和国において製造された自動車(以下「国産自動車」という。)一台を、アルゼンティン共和国の法令に基づいて課される税を支払うことなく購入することを許可すること。
このようにして購入された国産自動車は、その購入の後二年の期間を経過した後は無税で、その購入の後一年の期間を経過した後二年の期間を経過するまでは当該国産自動車を購入するときに課されたであろう税の五十パーセントを支払うことにより、また、その購入の後一年の期間を経過するまでは前記の税の全額を支払うことにより、売却し又は譲渡することができる。
2 専門家及びその家族に対して与えられる特権、免除及び便宜は、アルゼンティン共和国において同様の任務を遂行している第三国又は国際機関の専門家に与えられている特権、免除及び便宜より不利なものであつてはならない。
第七条 1 第三条(c)の規定に従つて供与される設備、機械及び資材は、荷卸しを行う港又は空港においてc・i・f建てでアルゼンティン共和国政府の関係当局に引き渡された時にアルゼンティン共和国政府の財産となる。これらの設備、機械及び資材は、供与された目的のために使用される。
2 1にいう設備、機械及び資材のアルゼンティン共和国の領域における輸送のための費用並びにそれらの維持及び修理のための費用は、アルゼンティン共和国政府が負担する。
3 アルゼンティン共和国政府は、1にいう設備、機械及び資材に関して、輸入許可証及び為替証明書の取得要件並びに領事手数料、輸入税その他の税及び課徴金を免除する。
4 専門家及び調査団がその任務を遂行するために携行する設備、機械及び資材は、別途の合意がある場合を除き日本国政府の財産である。
専門家及び調査団は、アルゼンティン共和国においてこれらの設備、機械及び資材に対して課される内国税その他の課徴金を免除され、かつ、これらの設備、機械及び資材の持込みに関して、輸入許可証及び為替証明書の取得要件並びに領事手数料、輸入税その他の税及び課徴金を免除される。
専門家及び調査団は、これらの設備、機械及び資材の再輸出に関して、輸出許可証の取得要件並びに輸出税その他の税及び課徴金を免除される。
5 4にいう設備、機械及び資材のアルゼンティン共和国の領域における輸送のための費用は、アルゼンティン共和国政府が負担する。
第八条 アルゼンティン共和国政府は、専門家の任務の遂行に起因し、その遂行中に発生し、又はその遂行に関連する請求が専門家に対して生じた場合には、その請求に関する責任を負う。ただし、両政府がその請求が専門家の重大な過失又は故意から生じたことに合意した場合は、この限りでない。
第九条 専門家は、アルゼンティン共和国政府が指定する機関を通じ、同政府と緊密に連絡を保つものとし、また、その任務の遂行のためにこれらの機関と協力する。
第十条 1 日本国政府は、同政府がこの協定に基づいて実施する技術協力の実施機関として国際協力事業団を指定し、アルゼンティン共和国政府は、アルゼンティン共和国の領域において、国際協力事業団に対しその具体的任務の遂行に必要な法的能力を認める。
2 国際協力事業団は、協力計画の実施のために調査及び関係機関との調整の任務を遂行する駐在員及び職員(以下「駐在員等」という。)をアルゼンティン共和国に派遺する。
これらの職員の数は、両政府の関係当局の合意により定められる。
3 駐在員等に対する特権、免除及び便宜については、第六条の規定を準用する。
4 駐在員等は、アルゼンティン共和国においてその任務を遂行するために持ち込む必要のある設備、機械及び資材に対して課される内国税その他の課徴金を免除され、かつ、これらの設備、機械及び資材の持込みに関して、輸入許可証及び為替証明書の取得要件並びに領事手数料、輸入税その他の税及び課徴金を免除される。
駐在員等は、前記の設備、機械及び資材の再輸出に関して、輸出許可証の取得要件並びに輸出税その他の税及び課徴金を免除される。
第十一条 両政府は、この協定から又はそれに関連して生ずることがあるいかなる事項についても相互に協議する。
第十二条 アルゼンティン共和国政府は、協力計画の実施のための国内調整機関を指定し、その機関名を外交経路を通じ日本国政府に通報する。
第十三条 この協定の第五条から第九条までの規定は、この協定が効力を生ずる前に両政府間で行われた取極に基づいて技術協力を行うためアルゼンティン共和国に派遺されたか又はその後派遣される日本国の専門家であつて、この協定が効力を生じた後任務を遂行するものに対しても適用される。
第十四条 1 この協定は、日本国政府がアルゼンティン共和国政府からアルゼンティン共和国の憲法上必要とされる手続を完了した旨の文書による通告を受けた日に効力を生ずる。
2 この協定は、一年間効力を有するものとし、いずれか一方の政府が他方の政府に対し少なくとも六箇月の予告をもつて協定を終了させる意思を書面により通報しない限り、毎年自動的に一年ずつ更新される。
3 この協定の終了は、第二条にいう取極に基づいて実施中の計画並びに同計画に関する任務を遂行するためにアルゼンティン共和国に滞在する専門家、その家族、調査団及び駐在員等の特権、免除及び便宜に関してこの協定が定める地位に影響を与えるものではない。
以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの協定に署名した。
千九百七十九年十月十一日に東京で、ひとしく正文である日本語及びスペイン語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 園田 直
アルゼンティン共和国政府のために カルロス・ワシントン・パストール