北西太平洋における千九百八十年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書に定められた漁業規則の違反により拿捕された漁船及び逮捕された乗組員の引渡手続に関する取極(口上書)
北西太平洋における千九百八十年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書に定められた漁業規則の違反により拿捕された漁船及び逮捕された乗組員の引渡手続に関する取極(口上書)
(口上書)
ソヴィエト連邦外務省は、在ソヴィエト連邦日本国大使館に敬意を表するとともに、千九百八十年四月十五日に署名された北西太平洋における千九百八十年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書によつて定められた漁業規則の違反に関連して、拿捕された漁船及び逮捕された乗組員の引渡手続に関し、ソヴィエト連邦政府及び日本国政府の代表者の間で到達した次の了解をソヴィエト連邦政府に代わつて確認する光栄を有する。
以下に規定する引渡手続は、千九百八十年において実施される。
1 拿捕された漁船又は逮捕された乗組員の所属する国の公務員が、拿捕又は逮捕の場所の近くにあるときは、漁船を拿捕し又は乗組員を逮捕した公務員は、これを拿捕の場所において他方の国の公務員に引き渡すものとする。(この口上書において「公務員」とは、ソ連側については、ソ連邦漁業監督機関の監督官をいい、日本側については、日本の漁業監督又は取締りの権限を有する者をいう。)
漁船を拿捕し又は乗組員を逮捕した公務員は、漁船又は乗組員による漁業規則の違反に関するロシア語及び日本語による調書を二通作成し、その一通を拿捕された漁船又は逮捕された乗組員を引き渡す際に他方の国の公務員に手交する。
この場合、拿捕された漁船又は逮捕された乗組員及び前記調書の引渡しの事実についてロシア語及び日本語による調書(書式別紙のとおり)を二通作成し、調書の各一通を双方の公務員が保持する。
2 港を根拠地とする漁船が拿捕された場合に、この口上書1の規定に基づいて拿捕の場所でその引渡しを行うことができないときは、次の手続を適用するものとする。
漁業規則に違反した漁船を拿捕した公務員は、漁船の網を封印し、その漁船の所属する国によりあらかじめ定められた港の一に赴くよう指示を与え、その指示を遵守する旨の船長又は操業責任者の署名した文書を徴する。その指示を受けた漁船は、指定された港に赴くものとする。
漁船を拿捕した公務員は、漁船拿捕の事実について無線により他方の国に通報する。この通報には漁船名、番号、船籍港、船長の姓名、拿捕の場所及び時並びに当該漁船が赴くよう指示された港を示すものとする。
漁業規則の違反に関する調書は、この口上書1に規定されている方式と同様の方式で作成される。このほか、調書にはその漁船が赴くよう指示された港及び同船の網の封印の有無が記載される。調書の一通は当該公務員が保持し、他の一通は漁船の船長又は操業責任者に手交される。調書は自国の公務員に提示されるものとする。
港に赴くよう指示を受け、かつ、網が封印された漁船は、その網の封印が解除されるまでは漁業を行ってはならい。その網の封印は、当該漁船の所属する国の公務員のみがこれを解除することができる。拿捕された漁船の所属する国は、当該漁船が指示された港に到着したことをその到着後十二時間以内に他方の国に対し通報する。
3 母船に属する漁船が拿捕され又はその漁船上にある乗組員が逮捕された場合において、この口上書1の規定に基づいて拿捕又は逮捕の場所でその引渡しを行うことかできないときは、次の手続の一を適用するものとする。
(A) 拿捕された漁船又は逮捕された乗組員は、当該漁船の属する母船にとう乗する他方の国の公務員に引き渡される。この場合、この口上書1に規定された手続が適用される。
(B) 拿捕された漁船に対し、当該漁船の属する母船にとう乗している他方の国の公務員のもとに赴くよう指示が与えられる。この場合、この口上書2に規定された手続が適用される。
母船にとう乗している公務員は、拿捕された漁船が母船に到着したことをその到着後十二時間以内に当該漁船を拿捕した公務員の所属する国に対し通報する。
4 拿捕された漁船の所属する国の公務員が、この口上書2及び3(B)に基づいて港又は母船に向かつている漁船に遭遇するときは、同公務員は遭遇した場所で当該漁船を引き取ることができる。この場合その公務員は、拿捕された漁船が引き取られたことをその引取り後十二時間以内に当該漁船を拿捕した公務員の所属する国に対し通報する。
5 この口上書の前各項の規定によらないで、漁船を拿捕し又は乗組員を逮捕した公務員の所属する国が、当該漁船又は乗組員が所属する国の要請に基づき、これを自国の領域内で監視の下に置くときは、拿捕された漁船の乗組員の代表者又は逮捕された乗組員は、当該漁船又は乗組員に必要な食料品、清水、燃料その他の需品の供給を要請することができる。拿捕された漁船又は逮捕された乗組員をその監視の下に置く国の官憲は、その要請を満たすために必要な措置をとる。
前記需品の受領が行われた場合には、漁船又は乗組員をその監視の下に置く国の官憲と需品の供給に対し支払の義務を負う拿捕された漁船の乗組員の代表者又は逮捕された乗組員は、需品の供給及び受領を確認するロシア語及び日本語による調書を二通作成し、その一通は需品を供給した国の官憲が保持し、他の一通は拿捕された漁船の乗組員の代表者又は逮捕された乗組員が保持する。
需品を供給した国はできる限り速やかに前記調書の写し及び関係書類を拿捕された漁船又は逮捕された乗組員が所属する国の政府に送付する。
調書の写し及び関係書類を受け取った国の政府は、供給された需品の代金の支払が確実に行われるように適当な措置をとるものとする。供給された需品の代金の支払は、これら文書の受領の日から四箇月以内に行われるものとする。
6 前各項に定められた拿捕された漁船又は逮捕された乗組員の引渡し及び引取りに関する相互の通信は、船舶無線局及び海岸無線局を通じて行われる。
ソ連側及び日本側は、あらかじめ無線により互いに自己の受信及び発信無線局を通報する。
いずれの国も無線連絡のため更に無線局を増設し、又は変更することができる。その際これをあらかじめ無線により他方に通報する。
両国は次の通信方法を採用する。
(A) 船舶無線局及び海岸無線局は、全日グリニッジ時間四時、八時、十二時、十六時、二十時、二十四時の始めの五分間は相互に相手側からの呼出しがあったとき直ちに応答ができるよう聴取を行うものとし、自国から送信すべき通報がない場合は、原則として呼出しを行わないものとする。
(B) ソヴィエト連邦及び日本国の船舶無線局及び海岸無線局の無線連絡は、あらかじめソ連側及び日本側が互いに通報した周波数により行うものとする。なお、いずれの国も無線連絡の周波数を変更することができる。その際これをあらかじめ無線により他方に通報する。
(C) 無線通信はロシア語又は日本語をもって行うものとし、必要に応じ英語を使用することができるものとする。
ロシア語又は日本語による電文は、ローマ字をもってし、国際電気通信条約附属電信規則に定められた国際モールス符号をもって送信するものとする。その他の通信方法は前記条約附属無線通信規則によるものとする。
ソヴィエト連邦外務省は、在ソヴィエト連邦日本国大使館がソヴィエト連邦政府及び日本国政府の代表者の間で到達した前記の了解を日本国政府に代わって確認されることを期待する。
千九百八十年六月十八日にモスクワで
(在ソ日本国大使館からソ連邦外務省あての口上書)
A-一〇-八〇
口上書
在ソヴィエト連邦日本国大使館は、ソヴィエト連邦外務省に敬意を表するとともに、次の千九百八十年六月十八日付け外務省口上書を受領したことを確認する光栄を有する。
(ソ連側口上書)
在ソヴィエト連邦日本国大使館は、この口上書をもって日本国政府及びソヴィエト連邦政府の代表者の間で到達し、前記ソヴィエト連邦外務省口上書に述べられた了解を日本国政府に代わって確認する光栄を有する。
千九百八十年六月十八日にモスクワで