北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定
北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定
 北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定
 日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、
 北西太平洋の漁業資源の保存及び最適利用に関する共通の関心を考慮し、
 沿岸国の地先沖合における漁業に関する当該沿岸国の権利に関する諸問題についての第三次国際連合海洋法会議における審議を考慮し、
 千九百七十六年十二月十日付けのソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令に規定されている深査、開発及び保存のための生物資源に対するソヴィエト社会主義共和国連邦の主権的権利を認め、
 日本国の国民及び漁船が、北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合において伝統的に漁業に従事してきたことを考慮し、
 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の漁業の分野忙おける互恵的協力を発展させることを希望し、
 相互に関心を有し、かつ、ソヴィエト社会主義共和国連邦が主権的権利を行使する生物資源の利用の手続及び条件を定めることを希望して、次のとおり協定した。
第一条
 この協定は、千九百七十六年十二月十日付けのソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業の規制に関する暫定措置に関するソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の決定に従つて定められる北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域において日本国の国民及び漁船が漁獲を行う手続及び条件を定めることを目的とする。
第二条
 日本国の国民及び漁船が前条の漁獲を行う権利は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の国民及び漁船のために日本国の地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益の原則に立つて与えられる。
第三条
 この協定において、
1 「生物資源」とは、第一条にいう海域におけるすべての種類の魚類の資源、ソヴィエト社会主義共和国連邦の淡水水域において産卵し、外洋水域に回遊するすべての種類の溯河性魚類の資源及びソヴィエト社会主義共和国連邦の大陸棚の定着性の種族に属するすべての生物をいう。
2 「魚類」とは、ひれを有する魚類軟体動物、甲殻類その他のすべての海産動植物(ただし、鳥類を除く。)をいう。
3 「漁獲」とは、次の(A)から(D)までをいう。
(A) 魚類を採捕すること。
(B) 魚類を採捕しようと試みること。
(C) 魚類を採捕する結果になると合理的に予想し得るその他の活動
(D) (A)から(C)までに掲げる活動を直接に捕助し又は準備するための海上における作業
4 「漁船」とは、次の(A)又は(B)のために使用されているか又は使用されるよう設備がされている船舶その他の舟艇をいう。
(A) 漁獲
(B) 漁獲に関係する作業(漁獲の準備、船舶への補給、魚類の貯蔵、輸送及び加工並びに積卸し作業を含む。)
 この定義には、ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある当局が発給する特別許可証により漁獲に関連する科学的調査を行う日本国の漁船は含まれない。
第四条
1 第一条にいう海域の範囲について、ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある当局により定められる日本国に対する千九百七十七年の漁獲割当ての量及び魚種別組成並びに日本国の国民及び漁船が漁獲を行う具体的な区域及び条件は、この協定の署名の日に変換される日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある当局の間の書簡に掲げられる。
2 1にいう千九百七十七年の漁獲割当てには、第一条にいう海域において千九百七十七年三月中に日本国の漁船が漁獲した魚類が含まれる。
第五条
1 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は、第一条にいう海域において漁獲に従事することを希望する日本国の漁船に対し、当該漁獲を行うことに関する許可証を発給する。日本国の漁船は、この許可証を有していない場合には、同条にいう海域において漁獲に従事することができない。
2 1にいう許可証の申請及び発給の手続、日本国の漁獲に関する情報の提出の手続並びに日本国の漁船の操業日誌の記載の手続は、この協定の不可分の一部をなす附属書に定められる。
3 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は、1にいう許可証の発給に関し妥当な料金を徴収することができる。
第六条
 日本国政府は、日本国の国民及び漁船が、この協定の規定並びに第一条にいう海域における生物資源の保存及び漁業の規制のためにソヴィエト社会主義共和国連邦において定められている規則に従うことを確保する。これらの規定又は規則に従わない日本国の国民及び漁船は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の法律に従い責任を負う。
第七条
1 日本国政府は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関によつて任命された公務員が、第五条1にいう許可証を有し、かつ、この協定に従つて漁獲を行つているすべての日本国の漁船に支障なく乗船する機会が与えられることとなること並びに当該公務員が漁船にある間、当該漁船の船長及び船員が検査(検査の結果発見された違反を除去するための措置をとることを含む。)の実施について当該公務員に協力することを確保する。
2 日本国政府は、1にいうソヴィエト社会主義共和国連邦の公務員の日本国の漁船における滞在に関連する経費がソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に償還されることを確保する。
3 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関によつて日本国の漁船が拿捕されたときは、日本国政府に対し、その旨が外交上の経路を通じて遅滞なく通報される。拿捕された漁船及びその乗組員は、適当な担保又はその他の保証が提供された後に遅滞なく釈放される。
第八条
 この協定のいかなる規定も、第三次国際連合海洋法会議において検討されている海洋法の諸問題についても、相互の関係における諸問題についても、いずれの政府の立場又は見解を害するものとみなしてはならない。
第九条
1 この協定は、それぞれの国の国内法上の手続に従つて承認されなければならない。
2 この協定は、その承認を通知する外交上の公文が交換された日に効力を生じ、千九百七十七年十二月三十一日まで効力を有する。
 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
 千九百七十七年五月二十七日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために
 鈴木善幸
 重光 晶
 ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために
 A・イシコフ
附属書
 ソヴィエト社会主義共和国連邦が主権的権利を行使する生物資源の漁獲を日本国の漁船が千九百七十七年に行うことができるための許可証の申請及び発給、当該漁獲に関する情報の提出並びに操業日誌の記載は、次の手続及び条件に従つて行われる。
1 日本国の権限のある機関は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に対し、この協定に基づいて漁獲に従事することを希望する日本国の漁船に対する許可証の発給のために申請を行う。この申請は、両国の権限のある機関の間で合意される様式によつて行わなければならない。申請書の記入及び提出の手続は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関が定める。
2 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は、申請書を検討し、この協定の第一条にいう海域において漁獲を行うための日本国の漁船に対する許可証の発給について、この協定の条件に従つて決定する。許可証の発給手続は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関が定める。
3 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は、許可証の発給を拒否する場合には、日本国の権限のある機関に対しその旨を通知する。必要がある場合には、両国の権限のある機関は、これにつき協議を行うことができる。日本国の権限のある機関は、この協議の後、改めて申請を行うことができる。
4 ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関の公務員は、日本国の漁船がこの協定の条件に違反した場合には、当該漁船に対して発給された許可証の効力を停止することができる。ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関は、日本国の漁船がこの協定の条件に違反した場合には、当該漁船に対して発給された許可証の効力を失わせることができる。
5 すべての日本国の漁船は、この協定の第一条にいう海域において漁獲に従事するときは、当該漁船に対して発給された許可証を船内に常時保持していなければならない。
6 日本国の権限のある機関は、船長が交代し又は乗組員の数に変更がある場合には、十日以内に、許可証を発給したソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に通報する。
7 日本国側は、「極東漁業総局」(ソヴィエト社会主義共和国連邦ウラジオストック市)に対し、無線又は電報によりこの協定の第一条にいう海域における漁獲に関する旬ごとの情報(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)を通報し、並びに日本語及びロシア語によるこの海域における漁獲に関する月ごとの資料(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)を郵送する。これらの旬ごとの情報及び月ごとの資料は、その句及び月の末日の後それぞれ五日及び十日以内に、ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある機関に提出する。
8 許可証の発給を受けた日本国の漁船は、この協定の第一条にいう海域において漁獲を行う場合には、操業日誌(両国の権限のある機関の間で合意される様式による。)に記載しておかなければならない。