北西太平洋のつぶ漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の交換公文
北西太平洋のつぶ漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の交換公文
(北西太平洋のつぶ漁業に関する交換公文)
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本使は、千九百七十六年三月十五日から四月三十日までモスクワで行われた日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の代表者の間の北西太平洋におけるつぷ(プロソブランキア)漁業に関する協義に言及するとともに、この協議の結果到達した次の了解を日本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
1 日本国政府は、つぶ(プロソブランキア)が公海漁業資源であり、したがつて、日本の国民及び船舶は、北西太平洋でつぶ(プロソブランキア)漁業を行う権利を有するとの見解を有している。
2 ソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、つぶ(プロソブランキア)が沿岸国(この場合においては、ソヴィエト社会主義共和国連邦を意味する。)天然資源の探索及び開発のための主権的権利を行使する大陸棚の天然資源であるとの見解を有している。
3 しかしながら、両政府は、北西太平洋におけるつぶ(プロソブランキア)漁業の操業の実態にかんがみ、次のとおり合意した。
(1) 日本の国民及び船舶は、樺太東方水域及びオホーツク海北部水域においてつぶ(プロソブランキア)漁業に従事する。
ただし、日本国政府は、千九百七十六年においては、前記のつぶ(プロソブランキア)漁業について、次の措置をとる。
(a) 漁船の集数は、樺太東方水域においては、十五隻を超えず、オホーツク海北部水域においては、二十二隻を超えない。各漁船は、樺太東方水域においては、百総トンを超えず、オホーツク海北部水域においては、三百五十総トンを超えない。
(b) 商業的漁獲量は、樺太東方水域においては、殻付生重量で千五百メトリックトンを超えず、オホーツク海北部水域においては、むき身重量で千百二十五メトリックトンを超えない。ただし、この商業的漁獲量については、十パーセントの範囲内の増減があり得る。
(c) 漁撈の始期は、四月三十日とする。ただし、樺太東方水域においては、七月十五日から八月二十三日まで、オホーツク海北部水域においては、七月十五日から八月三十日までは、漁撈は行わない。
(d) 前記の水域において操業する漁船は、日本国政府の権限のある当局の発給する許可証を所持する。日本国政府の権限のある当局は、前記の許可証が発給された船舶の名簿を、五月十日までに、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府の関係当局に手交する。
ただし、ただし、名簿に変更がある場合には、日本国政府の関係当局は、変更のあつた日から十五日以内にソヴィエト社会主義共和国連邦政府の関係当局にその変更を通報する。
(2) 日本国政府は、北西太平洋においてつぶ(プロソブランキア)の漁獲を行う自国の国民及び船舶に対し、この書簡の附属書に掲げる措置を適用する。
(3) 日本国政府は、北西太平洋におけるつぷ(プロソブランキア)漁業についての漁獲統計資料を、千九百七十七年一月三十一日までにソヴィエト社会主義共和国連邦政府の関係当局に手交する。
(4) 両政府は、北西太平洋におけるつぶ(プロソブランキア)漁業についての生物学的統計資料を、千九百七十七年一月三十一日までに交換する。
(5) 日本国政府は、(1)のただし書及び(2)の規定に基づく措置を実施するため、適当かつ有効な措置をとるものとする。
(6) この取極は、一年間その効力を存続する。両政府の代表者は、この取極の実施状況を検討し、かつ、将来の取極について決定するため、千九百七十七年三月十五日までに会合する。
本使は、更に、この書簡及び前記の了解を貴国政府に代わつて確認される閣下の返簡が両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十六年六月七日にモスクワで
日本国特命全権大使重光晶
ソヴィエト社会主義共和国連邦 漁業大臣ア・ア・イシコフ閣下
附属書
1 この取極の適用上、「つぶ(プロソブランキア)」とは、腹足鋼(ガストロポーダ)の前鰓亜鋼(プロソブランキア)のうち、原始腹足鋼(アルケオガストロポーダ)、中腹足目(メソガストロポーダ)及び新腹足目(ネオガストロポーダ)に属する巻貝をいう。
2 つぶ(プロソブランキア)漁業を行う漁船は、開口部の直径十五センチメートル以下のつぶ(プロソブランキア)専用のかご(以下「つぶかご」という。)以外の漁具を使用してつぶ(プロソブランキア)を採捕してはならない。
3 つぶ(プロソブランキア)漁業を行う漁船は、その大きさが百総トン以上のものについては一隻当たり千五百個、百総トン未満のものについては千個以上のつぶかごを同時に使用してはならない。
4 海中に沈設されるつぶかごの各配の両端には、漁船名、許可番号及び設置漁区番号を記載した標識を付さなければならない。
5 つぶかごの沈設期間は、樺太東方水域においては、六昼夜以内とし、オホーツク海北部水域においては、四昼夜以内としなければならない。ただし、暴風雨その他のやむを得ない事情がある場合は、この限りではない。
6 つぶ(プロソブランキア)漁業を行う漁船は、つぶ(プロソブランキア)漁業に従事する間においては、つぶかご以外の漁具を所持してはならない。
(ソ連側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、次のとおりの千九百七十六年六月七日付けの閣下の書簡に言及する光栄を有します。
(日本側書簡)
本大臣は、両政府の代表者の間で到達した前記の了解がソヴィエト社会主義共和国連邦政府にとつて受諾することができるものであること並びに閣下の書簡及びこの返簡を両政府間の合意とみなすことを閣下に通報する光栄を有します。
本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十六年六月七日にモスクワで
ゾヴィエト社会主義共和国連邦 漁業大臣ア・ア・イシコフ
ソヴィエト社会主義共和国連邦駐在 日本国特命全権大使重光晶閣下
日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の代表者の間の千九百七十六年六月七日付けの北西太平洋における千九百七十六年のつぶ(プロソブランキア)漁業に関する交換公文にょる取極に関する合意された議事録
1 日本国政府の代表者は、日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の代表者の間の本日付けの北西太平洋におけるつぶ(プロソブランキア)漁業に関する交換公文3(1)のただし書に関連して、日本の国民及び船舶によるつぶ(プロソブランキア)漁業は、千九百七十六年においては、次に掲げる水域に関しては、それぞれ次の境界内において行われることを明確にした。
(1) 樺太東方水域
北緯五十二度の線以南、東経百四十六度十分の線以西、北緯四十五度四十分の線以北、東経百四十三度二十五分の線以東
ただし、北緯五十度の線以南、東経百四十五度十分の線以西、北緯四十八度五十七分の線以北の水域、北緯四十八度五十七分の線以南、東経百四十五度二十分の線以西、北緯四十八度の線以北、東経百四十四度の線以東の水域、北知床岬突端と北緯四十七度二十四分・東経百四十二度五十一分の点を結ぶ線以北の多来加湾水域及び北緯四十六度三十分の線以南、東経百四十三度四十五分の線以西の水域を除く。
(2) オホーツク海北部水域
北緯五十八度五十分の線以南、北緯五十七度三十分の線以北、東経百四十六度十分の線以東、東経百五十四度の線以西
2 日本国政府の代表者は、前記の交換公文3(1)(d)に関連し、つぶ(プロソブランキア)漁業に従事する日本の船舶のブリッジは黄色に着色し、かつ、そこに許可番号を表示することを明確にした。
千九百七十六年六月七日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 重光晶
ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために ア・ア・イシコフ
(日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の代表者の間の千九百七十六年六月七日付けの北西太平洋における千九百七十六年のつぶ(プロソブランキア)漁業に関する交換公文による取極の規定の実施の視察に関する書簡)
本官は、日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の代表者の間の千九百七十六年六月七日付けの北西太平洋におけるつぶ(プロソブランキア)漁業に関する交換公文3(5)に関連し、日本国政府は、前記取極の水域においてつぶ(プロソブランキア)漁業に従事する日本国の船舶にソヴィエト社会主義共和国連邦政府の公務員が取極の規定の実施を視察する目的で乗船することを保証するためのしかるべき効果的な措置をとることを申し述べる。
更に、また、前記の公務員が日本国の船舶による取極の違反について日本国の当局に通報した場合は、日本国の当局はしかるべき必要な措置をとることを申し述べる。
千九百七十六年六月七日にモスクワで
日本国政府のために つぶ漁業に関する 政府間交渉日本側首席代表 松浦 昭
つぶ漁業に関する 政府間交渉ソ連邦首席代表 ヴェ・ラフィッキー殿