日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定
日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定
日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定
日本国政府及び中華人民共和国政府は、
千九百七十二年九月二十九日に北京で発出された両国政府の共同声明に基づき、
黄海.東海の漁業資源を保存し及び合理的に利用するため並びに海上における正常な操業の秩序を維持するため、
友好的な協議を経て、
次のとおり協定した。
第一条 1 この協定が適用される水域(以下「協定水域」という。)は、次に規定する黄海・東海の水域(領海部分を除く。)とする。
(1) 次に掲げる各点を結ぶ直線以東
(i) 北緯三十九度四十五分、東経百二十四度九分十二秒の点
(ii) 北緯三十七度二十分、東経百二十三度三分の点
(2) 次に掲げる各点を順次に直線で結ぶ線以東
(i) 北緯三十七度二十分、東経百二十三度三分の点
(ii) 北緯三十六度四十八分十秒、東経百二十二度四十四分三十秒の点
(iii) 北緯三十五度十一分、東経百二十度三十八分の点
(iv) 北緯三十度四十四分、東経百二十三度二十五分の点
(v) 北緯二十九度、東経百二十二度四十五分の点
(vi) 北緯二十七度三十分、東経百二十一度三十分の点
(vii) 北緯二十七度、東経百二十一度十分の点
(3) 北緯二十七度の線以北
2 この協定のいかなる規定も、海洋に関する管轄権についての両締約国のそれぞれの立場を害するものとみなしてはならない。
第二条 両締約国は、漁業資源を保存し及び合理的に利用するため、協定水域における機船による漁業に関し、この協定の附属書Iに規定する措置をとる。
第三条 1 いずれの一方の締約国も、自国の機船がこの協定の附属書Iの規定を誠実に遵守することを確保するため及び違反事件の発生を防止するため、自国の機船に対して適切な指導及び監督を行い、並びに違反事件を処理する。
2 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し、当該他方の締約国の機船がこの協定の附属書Iの規定に違反した事実及び状況を通報することができる。当該他方の締約国は、当該一方の締約国に対し、違反事件の処理の結果を速やかに通報する。
3 協定水域において操業する両締約国の機船は、この協定の実施を確保するため、相互に協力するものとする。
第四条 両締約国は、それぞれ、自国の関係漁民及び機船に対し、航行及び操業の安全、正常な操業の秩序の維持並びに海上における事故の円滑かつ迅速な処理のため、指導その他の必要な措置をとる。
第五条 1 いずれか一方の締約国の漁船が他方の締約国の沿岸において海難その他の緊急事態に遭遇した場合には、当該他方の締約国は、当該漁船及びその乗組員に対し、できる限りの援助及び保護を与えるとともに、最も迅速な方法により、当該一方の締約国の関係当局にこれらに関する状況を通報する。
2 いずれの一方の締約国の漁船も、荒天その他の緊急事態のため避難する必要がある場合には、他方の締約国の関係当局に連絡した後、指定された港等に赴き避難することができる。当該漁船は、この協定の附属書IIの規定に従うとともに、当該他方の締約国の関係法規及び指示に従わなければならない。
第六条 1 両締約国は、この協定の目的を達成するため、日中漁業共同委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、両締約国の政府がそれぞれ三人ずつ任命する委員で構成する。
2 委員会のすべての決議、勧告その他の決定は、出席する双方の委員の合意によつてのみ行う。
3 委員会は、毎年一回東京又は北京で交互に会合する。委員 会は、また、必要に応じ、両締約国の間の合意により臨時に会合することができる。
4 委員会の任務は、次のとおりとする。
(1) この協定の実施状況につき検討する。
(2) 必要に応じ、この協定の附属書の修正に関し、両締約国に勧告する。
(3) 漁業に関する資料を交換し、及び協定水域における漁業資源の状態につき検討する。
(4) そのほか、必要に応じ、協定水域における漁業資源の保存その他の関連する問題につき検討し、及び両締約国に勧告することができる。
第七条 1 この協定の附属書(2の規定に従つて修正された後の附属書を含む。)は、この協定を構成する不可分の一部とする。
2 両締約国政府は、前条4(2)の規定に従つて委員会が行つた勧告を受諾する旨の公文の交換によりこの協定の附属書を修正することができる。
第八条 1 この協定は、その効力発生のために国内法上必要とされる手続がそれぞれの国において完了したことを確認する旨の通告が交換された日に効力を生ずる。この協定は、三年間効力を有するものとし、その後は、2の規定に定めるところによつて終了するまで効力を存続する。
2 いずれの一方の締約国も、三箇月前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより、最初の三年の期間の満了の際又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、この協定に署名した。
千九百七十五年八月十五日に東京で、ひとしく正文である日本語及び中国語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 宮澤喜一
中華人民共和国政府のために 陳 楚
附属書I
両締約国がこの協定の第二条の規定に従つてとるべき措置の内容は、次のとおりとする。
1 機船底びき網漁業(トロール漁業を含む。)について
(1) 一隻の推進機関の馬力数が六百馬力を超える機船は、次の各点を順次に直線で結ぶ線により囲まれる水域に入つて機船底びき網漁業に従事してはならない。
(i) 北緯三十八度、東経百二十三度二十二分の点
(ii) 北緯三十八度、東経百二十三度四十五分の点
(iii) 北緯三十七度、東経百二十三度四十五分の点
(iv) 北緯三十六度十五分、東経百二十三度十五分の点
(v) 北緯三十六度、東経百二十二度三十分の点
(vi) 北緯三十五度、東経百二十二度三十分の点
(vii) 北緯三十二度三十分、東経百二十四度の点
(viii) 北緯三十二度、東経百二十五度の点
(ix) 北緯二十九度、東経百二十五度の点
(x) 北緯二十八度、東経百二十四度三十分の点
(xi) 北緯二十七度、東経百二十三度の点
(xii) 北緯二十七度、東経百二十一度十分の点
(xiii) 北緯二十七度三十分、東経百二十一度三十分の点
(xiv) 北緯二十九度、東経百二十二度四十五分の点
(xv) 北緯三十度四十四分、東経百二十三度二十五分の点
(xvi) 北緯三十五度十一分、東経百二十度三十八分の点
(xvii) 北緯三十六度四十八分十秒、東経百二十二度四十四分三十秒の点
(xviii) 北緯三十七度二十分、東経百二十三度三分の点
(xix) 北緯三十八度、東経百二十三度二十二分の点
(2)機船は、次に掲げる各休漁区につきそれぞれ定める期間においては、当該休漁区に入つて機船底びき網漁業に従事してはならない。
(i) 第一休漁区
位置 次の各点を順次に直線で結ぶ線により囲まれる水域
(イ) 北緯三十八度、東経百二十三度二十二分の点
(ロ) 北緯三十八度、東経百二十三度三十分の点
(ハ) 北緯三十六度十五分、東経百二十三度三十分の点
(ニ) 北緯三十六度十五分、東経百二十二度一分の点
(ホ) 北緯三十六度四十八分十秒、東経百二十二度四十四分三十秒の点
(ヘ) 北緯三十七度二十分、東経百二十三度三分の点
(ト) 北緯三十八度、東経百二十三度二十二分の点
期間 二月十五日かに四月十五日まで
(ii) 第二休漁区
位置 次の各点を順次に直線で結ぶ線により囲まれる水域
(イ) 北緯三十六度十五分、東経百二十二度一分の点
(ロ) 北緯三十四度、東経百二十二度一分の点
(ハ) 北緯三十四度、東経百二十一度二十三分の点
(ニ) 北緯三十五度十一分、東経百二十度三十八分の点
(ホ) 北緯三十六度十五分、東経百二十二度一分の点
期間 九月一日から十一月三十日まで
(3) 次に掲げる各保護区につきそれぞれ定める期間においては、当該保護区に入つて機船底びき網漁業に従事する機船の隻数は、両締約国政府間で定める最高操業隻数を超えてはならない。
(i) 第一保護区
位置 次の各点を順次に直線で結ぶ線により囲まれる水域
(イ) 北緯三十四度、東経百二十三度十五分の点
(ロ) 北緯三十四度、東経百二十四度三十分の点
(ハ) 北緯三十三度、東経百二十四度三十分の点
(ニ) 北緯三十三度、東経百二十三度十五分の点
(ホ) 北緯三十四度、東経百二十三度十五分の点
期間 十二月一日から翌年の二月末日まで
(ii) 第二保護区
位置 次の各点を順次に直線で結ぶ線により囲まれる水域
(イ) 北緯三十一度三十分、東経百二十二度五十七分の点
(ロ) 北緯三十一度三十分、東経百二十三度三十分の点
(ハ) 北緯三十度四十四分、東経百二十三度四十五分の点
(ニ) 北緯三十度、東経百二十三度三十分の点
(ホ) 北緯三十度、東経百二十三度八分の点
(ヘ) 北緯三十度四十四分、東経百二十三度二十五分の点
(ト) 北緯三十一度三十分、東経百二十二度五十七分の点
期間 四月一日から五月三十一日まで
(iii) 第三保護区
位置 次の各点を順次に直線で結ぶ線により囲まれる水域
(イ) 北緯二十九度三十分、東経百二十二度五十六分三十秒の点
(ロ) 北緯二十九度三十分、東経百二十三度二十分の点
(ハ) 北緯二十九度、東経百二十三度十分の点
(ニ) 北緯二十八度、東経百二十二度三十分の点
(ホ) 北緯二十八度、東経百二十一度五十五分の点
(ヘ) 北緯二十九度、東経百二十二度四十五分の点
(ト) 北緯二十九度三十分、東経百二十二度五十六分三十秒の点
期間 三月一日から四月三十日まで
(4) 機船底びき網漁業に従事する機船は、幼魚の漁獲を行わないものとし、密集した幼魚に遭遇したときは、操業の場所を他に移するものとする。一航海ごとの漁獲量につき、幼魚の占める比率は、同一魚種の総漁獲量の二十パーセントを超えてはならない。
関係する幼魚についての規定は、次のとおりとする。
(i) きぐちについては、吻端から尾びれの末端までの長さが十九センチメートル以下のものをいう。
(ii) たちうおについては、吻端からこう門までの長さが二十三センチメートル以下のものをいう。
(5) 機船底びき網漁業に使用する底びき網の網目(水に浸し、収縮した後の内径による。以下同じ。)及び長さは、次の基準に適合するものでなければならない。
(i) 袋網及び返し網の網目は五十四ミリメートル以上、その他の部分の網目は六十五ミリメートル以上であること。
(ii) 袋網の長さは、二百目以下であること。
2 機船まき網漁業(集魚燈を使用するものに限る。)について
(1) 一隻の推進機関の馬力数が六百六十馬力を超える網船は、1(1)に規定する水域に入つて機船まき網漁業に従事してはならない。
(2) (1)にいう水域のうち北緯三十二度の線以北の部分(第一保護区と称する。)においては、両締約国政府間で定める措置がとられるものとする。
(3) (1)にいう水域のうち北緯三十二度の線以南の部分(第二保護区と称する。)においては、八月一日から十二月三十一日までの間は、機船まき網漁業に従事する機船の統数は、両締約国政府間で定める最高操業統数を超えてはならない。
(4) (1)にいう水域に入つて操業する機船まき網漁船の隻数は、一統につき、網船は一隻、灯船は二隻とする。灯船一隻の集魚燈の光度の合計は、一万カンデラを超えてはならない。
(5) 機船まき網漁業に従事する機船は、(1)にいう水域においては、幼魚の漁獲を行わないものとする。一網ごとの漁獲量中幼魚の占める比率は、十五パーセントを超えてはならないものとし、超えた場合には、速やかに海中に放し、かつ、操業の場所を他に移すものとする。
関係する幼魚についての規定は、次のとおりとする。
(i) まさばについては、尾叉長(吻端から尾叉までの長さをいう。以下同じ。)が二十二センチメートル未満のものをいう。
(ii) まあじついては、尾叉長が二十センチメートル未満のものをいう。
(iii) まるあじについては、尾叉長が十八センチメートル未満のものをいう。
(6) (1)にいう水域において機船まき網漁業に使用するまき網の網目は、三十五ミリメートル以上とする。
附属書II
この協定の第五条2の実施に関しては、次に定めるところによる。
1 避難港
(1) 中華人民共和国政府は、日本国の漁船が避難する港として、温州港、上海港呉淞口、連雲港及び青島港を指定する。
(2) 日本国政府は、中華人民共和国の漁船が避難する港として、厳原港、博多港、玉之浦港及び山川港を指定する。
(3) いずれの一方の締約国の漁船も、特別な事情により(1)又は(2)で指定された港に赴くことができない場合には、他方の締約国の関係当局に連絡してその理由を明らかにした後、指定される港等に赴き避難することができる。
2 連絡先
(1) 中華人民共和国の漁船は、日本国海上保安庁の第七管区海上保安本部又は第十管区海上保安本部に連絡するものとする。
(2) 日本国の漁船は、中華人民共和国の温州港、上海港、連雲港又は青島港の港務監督機関に連絡するものとする。
3 連絡の内容
連絡すべき内容は、船名、呼出符号、現在位置、船籍港、総トン数、船長の氏名、乗組員数、避難の目的地、到着予定時刻及び避難の理由とする。
4 連絡の方法
(1) 中華人民共和国の漁船が日本国の関係当局に連絡する場合には、次のいずれかの方法によるものとする。
(i) 第七管区海上保安本部若しくは第十管区海上保安本部の無線局又は長崎無線電報局を通じて連絡する。これらの無線局の呼出符号は、次のとおりである。
第七管区海上保安本部の無線局 JNR
第十管区海上保安本部の無線局 JNJ
長崎無線電報局 JOS
(ii) 日本語又は英語の平文の国際電報により連絡する。関係当局のあて名略号は、次のとおりである。
第七管区海上保安本部 SEVENTHRMSH KITAKYUSHU
第十管区海上保安本部 TENTHRMSH KAGOSHIMA
(2) 日本国の漁船が中華人民共和国の関係当局に連絡する場合には、次のいずれかの方法によるものとする。
(i) 温州、上海又は青島の海岸無線局を通じて連絡する。これらの無線局の呼出符号は、次のとおりである。
温州海岸無線局 XSO
上海海岸無線局 XSG
青島海岸無線局 XST
(ii) 中国語又は英誌の平文の国際電報により連絡する。関係当局のあて名略号は、次のとおりである。
温州港港務監督機関 温州港八九六九
上海港港務監督機関 上海港三九六六
連雲港港務監督機関 連雲港三一八九
青島港港務監督機関 青島港三二六三
(附属書Iの2(2)に関する交換公文)
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定の附属書Iの2(2)に関し、日本国政府に代わつて、両政府間で到達した次の了解を確認する光栄を有します。
第一保護区においては、同保護区内の浮魚資源の衰退にかんがみ、同保護区における機船まき網漁業に対する従来の保存措置が引き続きとられるものとし、日本国の機船まき網漁船は、年間を通じて同保護区に入つて操業しないものとする。
本大臣は、更に、閣下が前記の了解を貴国政府に代わつて確認されることを要請する光栄を有します。
本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十五年八月十五日に東京で
日本国外務大臣 宮澤喜一
中華人民共和国特命全権大使 陳 楚 閣下
(中国側書簡)
書簡をもつ啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
本大臣は、本日署名された日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定の附属書Iの2(2)に関し、日本国政府に代わつて、両政府間で到達した次の了解を確認する光栄を有します。
第一保護区においては、同保護区内の浮魚資源の衰退にかんがみ、同保護区における機船まき網漁業に対する従来の保存措置が引き続きとられるものとし、日本国の機船まき網漁船は、年間を通じて同保護区に入つて操業しないものとする。
本大臣は、更に、閣下が前記の了解を貴国政府に代わつて確認されることを要請する光栄を有します。
本使は、中華人民共和国政府に代わつて、閣下の書簡に述べられた了解を確認する光栄を有します。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十五年八月十五日に東京で
日本国駐在中華人民共和国特命全権大使 陳 楚
日本国外務大臣 宮澤喜一閣下
合意された議事録
日本国政府代表及び中華人民共和国政府代表は、本日署名された日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定(以下「協定」という。)の関係条項に関連して、次の事項を記録することに合意した。
1 各保護区における両締約国の操業隻数又は統数に関し、
(1) 協定の附属書Iの1(3)の規定に基づき、各保護区における最高操業隻数を、次のとおり定める。
第一保護区 日本側 百二十隻
中国側 百二十隻
第二保護区 日本側 八十隻
中国側 百四十隻
第三保護区 日本側 九十隻
中国側 百五十隻
(2) 協定の附属書Iの2(3)の規定に基づき、第二保護区における最高操業統数を、次のとおり定める。
日本側 二十五統
中国側 七十統
2 網目の大きさについての規定の実施に関し、
両締約国の機船底びき網漁又は機船まき網漁に使用される漁網で、協定の附属書Iの1(5)又は2(6)の規定に適合しないものは、協定の発効の日から六箇月以内に全部取替えを完了するものとする。
3 両締約国の沿岸漁業に関し、
協定の附属書Iに定める措置は、自国の沿岸水域において操業する漁船には適用しない。
4 安全操業に関し、
両締約国の関係当局は、協定第四条の規定を実施するため、両国の民間関係団体がてきる限り速やかに次に掲げる事項についての合意に達するように、それぞれ自国の民間関係団体を指導するものとする。
(1) 標識及び信号
(2) 操業に当たつて遵守すべき事項
(3) 避航に当たつて遵守すべき事項
(4) 錨泊に当たつて遵守すべき事項
(5) 安全操業のための慣習上の予防措置
(6) 海上における事故の処理に関する事項
千九百七十五年八月十五日に東京で
宮澤
陳
(協定第一条1に関する書簡)
(中国側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日署名された中華人民共和国と日本国との間の漁業に関する協定に言及するとともに、同協定第一条1の規定に関連して、次のとおり申し述べる光栄を有します。
1 中華人民共和国政府は、同協定第一条1の規定にる定める線以西の水域を国防上の安全のため軍事警戒区として定めている。同区域内の漁業資源に対しては、既に必要な保証措置がとられている。日本国の漁船は、中華人民共和国政府の関係当局の許可なしに入域してはならない。
2 中華人民共和国政府は、同協定第一条1(2)に定める線以西の水域を漁業の保護のため機船底びき網漁業禁漁区として定めている。中国の機船は、同水域において操業してはならず、日本国の漁船も同水域に入つて操業してはならない。
3 中華人民共和国政府は、同協定第一条1(3)に定める線以南で、かつ、中国沿岸以東の、台湾周辺を含む水域がなお軍事作戦状態にあることにかんがみ、日本国の漁船が同水域に入つて操業しないよう勧告する。入つて操業するならば、それから生ずる結果については当該漁船自らが責任を負う。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十五年八月十五日に東京で
日本国駐在中華人民共和国特命全権大使 陳 楚
日本国外務大臣 宮澤喜一 閣下
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日著名された日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定第一条1に関する本日付けの閣下の書簡を受領したことを確認するとともに、この書簡に関連して、次のとおり申し述べる光栄を有します。
1 日本国政府は、協定第一条1(1)及び(2)に定める線以西の水域に関する中華人民共和国政府の立場を認めることはできないとの日本国政府の立場を留保する。
ただし、日本国政府は、協定第一条(1)及び(2)に定める線以西の水域において漁業資源の保護の必要性が存在することを考慮して、日本国の漁船がこれらの水域に入つて操業することを差し控えることとする。
2 日本国政府は、協定第一条1(3)に定める線以南の水域に関して中華人民共和国政府が表明した勧告に留意するとともに、同水域に関する中華人民共和国政府の立場を認めることはできないとの日本国政府の立場を留保する。
本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十五年八月十五日に東京で
日本国外務大臣 宮澤喜一
中華人民共和国特命全権大使 陳 楚 閣下